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49.ケダモノ
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宏典は苦虫を噛み潰したような顔で答えた。
「性、的……関係を持ってからだ」
「4年ぐらいかな」
サラッと答えた類に、美羽は血が出るほどにきつく唇を噛み締めた。顔に血が上っているのに氷水のように冷たく感じる。今すぐにでも、この場から消えてしまいたい。
あの時、まだふたりは中学生にもなっていなかった。
それまでもキスをしたり、抱き合ったりはしていたし、互いの裸を見せ合ったり、触り合っこはしていたけれど、じゃれ合いの延長のように感じていた。
それが、類が精通を、美羽が初潮を迎えたことをきっかけに急速に性的関係を意識するようになったのだった。学校でも性教育として、男女別に集められて体の仕組みについて説明を受けたりして、クラスメート達も性に関しての興味が高まっていたし、話題に上がっていたこともきっかけのひとつだった。
そんな中、類が両親の寝室から怪しげなビデオを持ち出してきて、一緒に見ようと言われた。美羽は少し躊躇いつつも、恐いもの見たさの方が勝ち、それによってなんとなく想像していた男女の交わりという薄雲が取り去られ、リアルなビジョンとして目に飛び込んできたのだった。
正直、気持ち悪いと思った。吐き気がして、眩暈を覚えたし、恐かった。
けれど、類に『さっきのDVDと同じこと、ミューとやってみたい……』と囁かれた時、不思議と不快感を感じなかったのだった。
類となら……恐くない。気持ち悪くないし、触れてみたい。
こんな気持ちになれるのは、類だけ……
ふたりがそんな関係を小学生からもっていたという事実を両親に知られるのは、とてつもない背徳感に襲われた。
宏典に主導権を任せていた華江も隣で目玉が落ちそうなぐらいに目を大きくひん剥き、驚愕した。
ふたりが小学生の頃からこんな関係が続いてただなんて……
華江は宏典と共に働いていた会社を寿退社してからは、ずっと専業主婦をしている。
普通の主婦と比べたら、少しでも若さを保つためにジムに通ったり、メイクやネイル講座を受けたり、学校のPTAや子供会を通じて仲良くなったママ友とランチをしたり、高校や大学時代の女友達と夜出かけたりと外出をすることが多かったが、それでも家にいる時間は仕事をしている母親よりは長かったはずだ。
それなのに、華江はふたりの関係にこれまで気づかなかった。
自分に隠れて子供たちが4年もの間、淫らな交わりをしていたのかと思うと、嫌悪と怖気が湧き出し、愛着のあったこの家さえも穢れたものに感じてくる。
そしてまた、想像する。
もしふたりの関係が明らかになった時、母親である自分がどんな社会的制裁を受けるのかと。仕事もせず、専業主婦をしていた癖に、どうして子供たちのそんな関係に気付けなかったのか、母親失格だと責められ、罵られるに違いない、と。
嫌だ……嫌だ……そんな……なんで私がそんな目に遭わなければいけないの……
華江はグッと喉を押し潰し、平然としている類と怯えて目を伏せている美羽を恨みたくなった。
類は蔑みすら籠った妖艶な視線で両親に問いかけた。
「じゃあさ、セックスしなければ僕たちの関係は認められるってこと? 僕たちは幼い頃から惹かれ合っていて、その触れ合いが成長するに従って変化していっただけで、僕たちの互いを思い合う気持ちは変わらないのに、セックスしたかしてないだけで、それがいいとか悪いとか判断できるわけ?」
「類、いい加減にしなさい!! 姉弟で交わるってことがどれだけ異常なことなのか分からないの!?
あなたたちは狂ってる……そんなの、ケダモノのやることよ!!」
華江の言葉に美羽は打ちのめされた。目の前が真っ暗になり、瞳からボロボロと涙が溢れ出る。
私、たちは……ケダモノ。
姉と弟で交わるという行為に堕ちた私と類は、人間としてすら認めてもらえないんだ……
類となら、どんな闇に落ちようとも平気だと思っていたけれど、現実に降りかかってきた時に、それがどれだけ自分を痛めつけることになるのか、美羽は今になって思い知らされた。
母親に蔑まれている。娘としてどころか、人間としての価値さえも認められていない。それは美羽にとって、大きな衝撃だった。
「性、的……関係を持ってからだ」
「4年ぐらいかな」
サラッと答えた類に、美羽は血が出るほどにきつく唇を噛み締めた。顔に血が上っているのに氷水のように冷たく感じる。今すぐにでも、この場から消えてしまいたい。
あの時、まだふたりは中学生にもなっていなかった。
それまでもキスをしたり、抱き合ったりはしていたし、互いの裸を見せ合ったり、触り合っこはしていたけれど、じゃれ合いの延長のように感じていた。
それが、類が精通を、美羽が初潮を迎えたことをきっかけに急速に性的関係を意識するようになったのだった。学校でも性教育として、男女別に集められて体の仕組みについて説明を受けたりして、クラスメート達も性に関しての興味が高まっていたし、話題に上がっていたこともきっかけのひとつだった。
そんな中、類が両親の寝室から怪しげなビデオを持ち出してきて、一緒に見ようと言われた。美羽は少し躊躇いつつも、恐いもの見たさの方が勝ち、それによってなんとなく想像していた男女の交わりという薄雲が取り去られ、リアルなビジョンとして目に飛び込んできたのだった。
正直、気持ち悪いと思った。吐き気がして、眩暈を覚えたし、恐かった。
けれど、類に『さっきのDVDと同じこと、ミューとやってみたい……』と囁かれた時、不思議と不快感を感じなかったのだった。
類となら……恐くない。気持ち悪くないし、触れてみたい。
こんな気持ちになれるのは、類だけ……
ふたりがそんな関係を小学生からもっていたという事実を両親に知られるのは、とてつもない背徳感に襲われた。
宏典に主導権を任せていた華江も隣で目玉が落ちそうなぐらいに目を大きくひん剥き、驚愕した。
ふたりが小学生の頃からこんな関係が続いてただなんて……
華江は宏典と共に働いていた会社を寿退社してからは、ずっと専業主婦をしている。
普通の主婦と比べたら、少しでも若さを保つためにジムに通ったり、メイクやネイル講座を受けたり、学校のPTAや子供会を通じて仲良くなったママ友とランチをしたり、高校や大学時代の女友達と夜出かけたりと外出をすることが多かったが、それでも家にいる時間は仕事をしている母親よりは長かったはずだ。
それなのに、華江はふたりの関係にこれまで気づかなかった。
自分に隠れて子供たちが4年もの間、淫らな交わりをしていたのかと思うと、嫌悪と怖気が湧き出し、愛着のあったこの家さえも穢れたものに感じてくる。
そしてまた、想像する。
もしふたりの関係が明らかになった時、母親である自分がどんな社会的制裁を受けるのかと。仕事もせず、専業主婦をしていた癖に、どうして子供たちのそんな関係に気付けなかったのか、母親失格だと責められ、罵られるに違いない、と。
嫌だ……嫌だ……そんな……なんで私がそんな目に遭わなければいけないの……
華江はグッと喉を押し潰し、平然としている類と怯えて目を伏せている美羽を恨みたくなった。
類は蔑みすら籠った妖艶な視線で両親に問いかけた。
「じゃあさ、セックスしなければ僕たちの関係は認められるってこと? 僕たちは幼い頃から惹かれ合っていて、その触れ合いが成長するに従って変化していっただけで、僕たちの互いを思い合う気持ちは変わらないのに、セックスしたかしてないだけで、それがいいとか悪いとか判断できるわけ?」
「類、いい加減にしなさい!! 姉弟で交わるってことがどれだけ異常なことなのか分からないの!?
あなたたちは狂ってる……そんなの、ケダモノのやることよ!!」
華江の言葉に美羽は打ちのめされた。目の前が真っ暗になり、瞳からボロボロと涙が溢れ出る。
私、たちは……ケダモノ。
姉と弟で交わるという行為に堕ちた私と類は、人間としてすら認めてもらえないんだ……
類となら、どんな闇に落ちようとも平気だと思っていたけれど、現実に降りかかってきた時に、それがどれだけ自分を痛めつけることになるのか、美羽は今になって思い知らされた。
母親に蔑まれている。娘としてどころか、人間としての価値さえも認められていない。それは美羽にとって、大きな衝撃だった。
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