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45.双子の姉弟
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生まれた時から赤ん坊とは思えないぐらい目鼻立ちがくっきりし、整った容姿をしていた美羽と類。ひとりだけでも十分注目されるが、男女でありながらもそっくりな双子である彼らは、一際周りの目を引き付けた。誰からも可愛いと賞賛され、羨ましがられてきた我が子たちは、華江の自慢であった。
若い時には美しいと褒めそやされ、多くの男性から言い寄られていた華江も、年を重ねるにつれてそんな機会はなくなってしまった。どんなに若作りをしても、メイクや服装に気合いを入れても、男性たちの視線はもう自分には向けられず、若く美しい女性だけがちやほやされる……自分がまるで女性でなくなったような気持ちに陥り、敗北感を味わった。
夫の宏典は自分を愛してくれてはいるが、仕事が忙しくなかなか相手をしてもらえないし、華江は宏典ひとりだけではなく、大勢の男性から羨望の眼差しで見つめられたいのだ。
そんな華江にとって、ふたりが褒められるのは、まるで自分も美しいと言われているような気分になり、彼女の自尊心を甚くくすぐった。
美羽と類が普通よりも仲の良い姉弟であることは、もちろん感じてはいた。
類はいつでも母親である自分よりも美羽と一緒に過ごす事を何よりも大切にしていたし、甘えてくる事もなかった。けれどそれは、元々子供が好きではなかった華江にとって好都合だったし、子供相手に遊ばなくて済むとホッとしたし、姉弟喧嘩の仲裁に入るようなこともなく楽だった。それに、まるで鏡のようにそっくりな可愛いふたりがじゃれ合う様は微笑ましく、子供好きではない華江ですら笑みが浮かび、心が和んだ。
中学生、高校生になっても二人の仲の良さは相変わらずだったが、そこにまさか性的な情動があるなど、思いもしなかった。
華江にも2つ下の弟がいるが、弟は弟以外の何者でもなく、もし目の前で裸で立っていてもなんの感情も起こらない。ましてや、弟とのセックスなんて考えただけで寒気がする。
姉弟が愛し合うなど、華江がこれまで生きてきた常識の世界ではありえないことで、それを自分の子供たちも当然そう受け止めているものと思っていた……
中学に入ってから、美羽と類は自分の部屋は自分たちで掃除するようになっていた。二人共自分の部屋にいる時には鍵を閉めていたが、華江は干渉の強い母親に育てられ、それを思春期の頃に鬱陶しく思っていたので、自分の子供たちには理解ある母親であろうと、口出しすることはなかった。
たまにゴミの回収をする際には類の部屋のゴミ箱から独特な性的な臭いを感じることもあったが、それは年頃の男にとって自然な行為だと受け止めていた。
華江がそうであったように美しい容姿のふたりは当然学校でもモテるだろうと思っていたし、恋人がひとりやふたりいてもおかしくないと思っていた。男女交際は浅く広く付き合えばいいし、どれだけ親が口を酸っぱくして注意しようとも、性への好奇心は止められないと考えていた。もう既に性の経験があるとしても、避妊だけはちゃんとしてくれれば問題ないと。
けれど、ふたりが恋人を家に連れてくることはなく、幼い頃からのスキンシップは相変わらず続いていた。
類が美羽に甘えるのはもう長年見慣れた光景だったし、肩や腰に手を回すのは確かに普通よりはスキンシップが多いかもしれないが、夫の出張に伴ってアメリカに行くことが多い華江にとっては家族間でキスやハグをしているのを間近に見ているので、感覚が麻痺している部分もあった。
具体的に何か決定的なことがあったわけではない。生活していく中で日々感じていた違和感が少しずつ積み重なっていき、それが疑惑となって芽生えたのだった。
けれど、それが真実となった途端、受け入れられない自分がいた。
どうして、どうしてこうなったの!? 私の育て方に問題があったの!? 何が間違ってたの!?
若い時には美しいと褒めそやされ、多くの男性から言い寄られていた華江も、年を重ねるにつれてそんな機会はなくなってしまった。どんなに若作りをしても、メイクや服装に気合いを入れても、男性たちの視線はもう自分には向けられず、若く美しい女性だけがちやほやされる……自分がまるで女性でなくなったような気持ちに陥り、敗北感を味わった。
夫の宏典は自分を愛してくれてはいるが、仕事が忙しくなかなか相手をしてもらえないし、華江は宏典ひとりだけではなく、大勢の男性から羨望の眼差しで見つめられたいのだ。
そんな華江にとって、ふたりが褒められるのは、まるで自分も美しいと言われているような気分になり、彼女の自尊心を甚くくすぐった。
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類はいつでも母親である自分よりも美羽と一緒に過ごす事を何よりも大切にしていたし、甘えてくる事もなかった。けれどそれは、元々子供が好きではなかった華江にとって好都合だったし、子供相手に遊ばなくて済むとホッとしたし、姉弟喧嘩の仲裁に入るようなこともなく楽だった。それに、まるで鏡のようにそっくりな可愛いふたりがじゃれ合う様は微笑ましく、子供好きではない華江ですら笑みが浮かび、心が和んだ。
中学生、高校生になっても二人の仲の良さは相変わらずだったが、そこにまさか性的な情動があるなど、思いもしなかった。
華江にも2つ下の弟がいるが、弟は弟以外の何者でもなく、もし目の前で裸で立っていてもなんの感情も起こらない。ましてや、弟とのセックスなんて考えただけで寒気がする。
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中学に入ってから、美羽と類は自分の部屋は自分たちで掃除するようになっていた。二人共自分の部屋にいる時には鍵を閉めていたが、華江は干渉の強い母親に育てられ、それを思春期の頃に鬱陶しく思っていたので、自分の子供たちには理解ある母親であろうと、口出しすることはなかった。
たまにゴミの回収をする際には類の部屋のゴミ箱から独特な性的な臭いを感じることもあったが、それは年頃の男にとって自然な行為だと受け止めていた。
華江がそうであったように美しい容姿のふたりは当然学校でもモテるだろうと思っていたし、恋人がひとりやふたりいてもおかしくないと思っていた。男女交際は浅く広く付き合えばいいし、どれだけ親が口を酸っぱくして注意しようとも、性への好奇心は止められないと考えていた。もう既に性の経験があるとしても、避妊だけはちゃんとしてくれれば問題ないと。
けれど、ふたりが恋人を家に連れてくることはなく、幼い頃からのスキンシップは相変わらず続いていた。
類が美羽に甘えるのはもう長年見慣れた光景だったし、肩や腰に手を回すのは確かに普通よりはスキンシップが多いかもしれないが、夫の出張に伴ってアメリカに行くことが多い華江にとっては家族間でキスやハグをしているのを間近に見ているので、感覚が麻痺している部分もあった。
具体的に何か決定的なことがあったわけではない。生活していく中で日々感じていた違和感が少しずつ積み重なっていき、それが疑惑となって芽生えたのだった。
けれど、それが真実となった途端、受け入れられない自分がいた。
どうして、どうしてこうなったの!? 私の育て方に問題があったの!? 何が間違ってたの!?
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