【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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8.再会

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 落ちついたグリーンと白の配色の『Funeral Home(葬儀場)』と書かれた看板を横目にタクシーが通り過ぎ、建物の前で停車する。降りた先には邸宅のような構えの葬儀場があった。看板と同じ落ちついたグリーンの屋根に白い壁で、穏やかでありながらも明るい空気に満ちていて、日本の葬儀場とは随分雰囲気が違っていた。

「さぁ、入ろう」

 躊躇っている美羽の背中を促すようにして、義昭が中へと入っていく。

 扉を開いた先には、大きなシャンデリアに照らされた赤い絨毯が敷かれた空間が広がっていた。ゆったりした高級そうなカウチが3つ置かれ、書棚には暖かみのあるランプと胡蝶蘭が飾られていて、ホテルのロビーのような雰囲気だ。

 美羽が戸惑っている間に、義昭が受付で父の名前と彼の遺族であることを係の者に告げていた。

「遺族の控室に案内してくれるそうだ」

 義昭の言葉に頷き、美羽は粛々と案内の係の後をついていった。

 自分ひとりでここに来ていたらどうなっていたかと想像すると、恐くなる。けれど、この経験を既に類は16歳の時に味わったのだ。父以外知り合いのいない外国での生活。どれだけ不安で、寂しかっただろう。

 控室の扉を前に、美羽の緊張が高まる。

 ここに、類がいるかもしれないんだ……

 控室の扉をノックし、静かに開ける。広い室内にはロビーに置かれていたのと同じカウチが点在し、軽食や飲み物が置かれた白い猫足のテーブルがあり、穏やかで落ち着いた雰囲気が漂っていた。

 ただひとつの違和感は、真ん中に不自然に椅子がひとつだけポツリと置かれていることだ。

 若い男性が、こちらに背を向けて椅子に座っている。少し撫で肩の曲線、細くて長い腕と脚、美羽と同じ濡れ羽色の青みを帯びた漆黒の細くて柔らかい髪……

「る、い……」

 確信を持っているけれど、信じたくないという気持ちもあった。もう決してこの唇が紡ぐことはないと思っていた、その名前。

 声を掛けられた主が立ち上がって、振り返る。

 アーモンド型をした大きな猫目が細くなり、涙が湛えられていた目尻からスッと流れ落ちる。それは、この状況下でなければ溜息が出るほどに美しい瞬間だった。整った鼻筋の下には、赤味を帯びたぽってりとした唇。陶器のような白い肌は、美羽の記憶にあるものよりもさらに透明感を帯び、あまりの色味のなさは人工的にさえ思えてしまう。



 ーーそれはまるで、鏡の中の自分を見ているようだった。



 あぁ、本当に、類だ。類、生きていてくれた。
 私の半身、類。愛しい、愛しい私の片割れ……

「ミュー……ミューッ!!」

 類の表情が崩れたかと思うと駆け出し、美羽に抱きついた。

「ミュー……父、さん……父さん、がっっ……ッグ」
「類……」

 肩を震わせながら美羽にしがみつくかのように抱き締めてくる類を、思わず抱き締め返した。

 美羽の知らない10年の間、父と息子にはきっとかけがえのない時間が流れていて、それが突然奪われたのだと思うと悲しみがドッと押し寄せてきた。それと同時に父との幼い頃の記憶も走馬灯のように駆け巡り、気づけば美羽も肩を震わせ、嗚咽を漏らしていた。
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