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ワンコと残業
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「えーっと、設計図の型番は……A00032a1って。
これ、相当古そうだなぁ……」
データ化されてから資料室はあまり使われることがなく、なんとなく埃っぽい臭いが漂っていた。薄暗い灯りを頼りに整然と見積書、発注書、依頼書、送付状等の書類が並ぶ棚を片っ端から確認する。
設計図の書類がある棚ってどこだろ……
「あっ、設計図あった! この辺りじゃないですか?」
柚木くんの弾んだ声が資料室に響いた。
「あ、そうそう! 柚木くん、ありがと~っ。助かった!
えぇっと……A00032でしょ……
……あっ、あった、あった!」
私は「A00001a1~A00049d2」と書かれたファイルを見つけ、ビッシリと隙間なく並べられたファイルの間から抜き出そうとした。
んっ、結構キツイかも……
ファイルを指でしっかりと掴んで更に力を込める。少しずつではあるけれど、確実にファイルは前に移動してきている。
「原田先輩、大丈夫ですか?」
柚木くんが心配そうに私に近づいてきた。
「だい、じょうぶっ……少しっ、ずつ…移動、してきてるからっ……ック……あと、少し……」
柚木くんは後ろで私の様子を心配そうに見守っていた。
きたっ!!
確実な手応えを感じた瞬間……
「きゃっ!」
ファイルを棚から引き抜いた勢いで私はそのまま後ろに倒れた。
「わっ、原田、先輩っ!!」
いや、実際倒れてなくて、私の身体を柚木くんが後ろからしっかりと抱き止めていた。
私が正面からムギュ~ッて抱き締めることはあっても、後ろから抱き締められるなんて初めてで、突然の事態に鼓動が急速に速まっていく。
柚木くんの胸板……意外と筋肉質、なのかもしれない……
少し斜めに倒れ込んだ私は、ちょうど肩のラインが同じになるような感じで後ろから抱き締められていた。スーツ越しに伝わる柚木くんの感触と温もりに、身体が熱くなる。
柚木くんの吐息がうなじにかかり、
「ん……」
声が出てしまった。
ハッ、私なに声出してんの!!
つい、感じちゃった……
「原田先輩、いい匂い……」
柚木くんが私の髪に顔を埋める。
えっ……これ、は……ワンコだから、なの? そぉなの?
それとも……それ以上の意味があるの??
「ちょっ、柚木……くん……」
柚木くんの吐息がかかる度に私の中心が熱を持って疼きに変わっていく。
あ、感じてきちゃった……だ、め……声、出そう……もう少しこのままで、いたいかも……
け、ど……
ひ、膝に負担がぁ~。ガクガクガクガク……限界、でっす。チーン
「あ、りがと柚木くんっ!!
……もう、大丈夫だからっ///」
私は目線を少し上向き加減にあげると、柚木くんに声をかけた。
わっ、声が上擦っちゃった……
「あっっ! は、はいっ……///」
柚木くんは身体をビクンと揺らし、大きな声で返事をした。
『…………』
柚木くんの手を借りて身体を起こすと、お互い気恥ずかしさを感じて……一言も口にしないまま資料室を後にした。
ハァーーー、焦ったぁ……柚木くんにあんな一面があったなんて。
不意打ちでドキドキさせられて……ズルい。
これ、相当古そうだなぁ……」
データ化されてから資料室はあまり使われることがなく、なんとなく埃っぽい臭いが漂っていた。薄暗い灯りを頼りに整然と見積書、発注書、依頼書、送付状等の書類が並ぶ棚を片っ端から確認する。
設計図の書類がある棚ってどこだろ……
「あっ、設計図あった! この辺りじゃないですか?」
柚木くんの弾んだ声が資料室に響いた。
「あ、そうそう! 柚木くん、ありがと~っ。助かった!
えぇっと……A00032でしょ……
……あっ、あった、あった!」
私は「A00001a1~A00049d2」と書かれたファイルを見つけ、ビッシリと隙間なく並べられたファイルの間から抜き出そうとした。
んっ、結構キツイかも……
ファイルを指でしっかりと掴んで更に力を込める。少しずつではあるけれど、確実にファイルは前に移動してきている。
「原田先輩、大丈夫ですか?」
柚木くんが心配そうに私に近づいてきた。
「だい、じょうぶっ……少しっ、ずつ…移動、してきてるからっ……ック……あと、少し……」
柚木くんは後ろで私の様子を心配そうに見守っていた。
きたっ!!
確実な手応えを感じた瞬間……
「きゃっ!」
ファイルを棚から引き抜いた勢いで私はそのまま後ろに倒れた。
「わっ、原田、先輩っ!!」
いや、実際倒れてなくて、私の身体を柚木くんが後ろからしっかりと抱き止めていた。
私が正面からムギュ~ッて抱き締めることはあっても、後ろから抱き締められるなんて初めてで、突然の事態に鼓動が急速に速まっていく。
柚木くんの胸板……意外と筋肉質、なのかもしれない……
少し斜めに倒れ込んだ私は、ちょうど肩のラインが同じになるような感じで後ろから抱き締められていた。スーツ越しに伝わる柚木くんの感触と温もりに、身体が熱くなる。
柚木くんの吐息がうなじにかかり、
「ん……」
声が出てしまった。
ハッ、私なに声出してんの!!
つい、感じちゃった……
「原田先輩、いい匂い……」
柚木くんが私の髪に顔を埋める。
えっ……これ、は……ワンコだから、なの? そぉなの?
それとも……それ以上の意味があるの??
「ちょっ、柚木……くん……」
柚木くんの吐息がかかる度に私の中心が熱を持って疼きに変わっていく。
あ、感じてきちゃった……だ、め……声、出そう……もう少しこのままで、いたいかも……
け、ど……
ひ、膝に負担がぁ~。ガクガクガクガク……限界、でっす。チーン
「あ、りがと柚木くんっ!!
……もう、大丈夫だからっ///」
私は目線を少し上向き加減にあげると、柚木くんに声をかけた。
わっ、声が上擦っちゃった……
「あっっ! は、はいっ……///」
柚木くんは身体をビクンと揺らし、大きな声で返事をした。
『…………』
柚木くんの手を借りて身体を起こすと、お互い気恥ずかしさを感じて……一言も口にしないまま資料室を後にした。
ハァーーー、焦ったぁ……柚木くんにあんな一面があったなんて。
不意打ちでドキドキさせられて……ズルい。
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