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仲違い
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「あ、あのね。多恵ちゃんがフードコートであの時言ったことは、間違ってないよ。ほんと、私は自分で何も行動しなくて、ただ待ってるだけで……そんなんじゃ、矢野くんの心が離れてくのは当然だよね」
「美紗ちゃ……」
「でも、変わりたいって思ったの。私、矢野くんが好きだから別れたくない」
今までの私じゃ考えられないくらい力強くそう言うと、多恵ちゃんが力強く頷いてくれた。
「そうだよ。美紗ちゃんがさ、その夢を見た時点であれが未来を提示してるっていうんなら、そこから変えていけばいいだけのことだよ。美紗ちゃんが自分で動き出せば、未来はきっと変えられるよ!」
「ありがとう、多恵ちゃん……良かったぁ…ウッ……ウグッ……ウゥッ」
泣かないと決めたのに、安心したら涙が込み上がってきて……それと共に感情が溢れ出て、涙が止まらなくなってしまった。
ようやく嗚咽がおさまり、顔をあげると多恵ちゃんに笑われた。
「酷い顔」
渡されたティッシュを手に取って鼻をかみ、もう1枚受け取ると、今度は涙を拭いた。
「鼻、真っ赤」
「だって、鼻水が凄い出るんだもん」
そう言いながら、鼻を真っ赤にしてる自分がおかしくて笑えてきた。多恵ちゃんも笑ってて、あぁこれからも私たちは友達でいられるんだと感じて、嬉しくなった。
「こんな感じで、矢野にも感情ぶつけてみればいいじゃん」
「む、無理だよ。矢野くんに鼻水出てるとこなんて見られたら、軽く死ねる……」
「じゃ、私なんて何回も死んでんじゃん! 矢野の鼻水出てるとこも見たことあるし」
「……ずるい。多恵ちゃんは幼馴染で、いっぱい私の知らない矢野くん知ってて」
「知りたくないっつーの! ハァーッ……それにしても、なんで矢野なわけ? よっぽど前川の方がイケメンじゃん」
なんでそこに前川くんが出てくるの!?
「前川くんは私の中では苦手って意識しかなかったから、今更そんな風に思えないよ。
……今日、前川くんにも伝えたし」
「えっ! 美紗ちゃん、前川の告白断ったんだ!! それで、何て言ってたあいつ?」
「『諦めねーから、覚悟しとけ』とか言われた……」
「うっわー、何その自分に自信ありますってイケメンなセリフ! てか、ヘタレで何も出来ない矢野なんかやめて、この際前川に乗り換えたら? イケメンだし、頭いいし、前川の方が将来有望だよ」
「わ、私は矢野くんがいいの!!」
「あーあ、美紗ちゃんは男見る目ないなぁ」
「し、知らない! もう、前川くんの話はしないでよ」
「でもこのままいくとさ、前川ルートありだと思う。強引に持ってかれそうじゃない? やっぱあれって正夢でさ、矢野との恋が終わって前川との新たな恋が始まるフラグかもよ」
ニタニタと多恵ちゃんが笑ってる。
ま、前川ルートって何? もう、人の恋愛をゲームかなんかと一緒にしないで欲しい。
「そ、そんなことには絶対ならないから!」
「ふふっ、どうだろうねぇ」
意地悪く微笑む多恵ちゃんを軽く睨みつけると、二人でプッと吹き出して笑い合った。今までよりももっと多恵ちゃんとの距離が縮まった気がして、嬉しい。
多恵ちゃんはバウムクーヘンの包みを開けて一口で放り込むと、ニコッと笑った。
「正夢になんないように、がんばんなよ! 応援してるからさっ」
「うん……頑張る」
急に現実が迫ってきて、体がキュッと硬くなった。
立ち上がって多恵ちゃんの部屋の窓を覗くと、そこには矢野くんの家が建っていた。
まだ、望みはある……諦めたくない。
今日、矢野くんから渡されたハンカチを思い出して、拳をギュッと握り締めた。
でも、本当にこのままじゃ矢野くんの心が離れていくのは確実で、私が行動しなければ終わってしまう気がした。
バレンタインまであと1週間。なんとか矢野くんに、私の気持ちを伝えたい……
「美紗ちゃ……」
「でも、変わりたいって思ったの。私、矢野くんが好きだから別れたくない」
今までの私じゃ考えられないくらい力強くそう言うと、多恵ちゃんが力強く頷いてくれた。
「そうだよ。美紗ちゃんがさ、その夢を見た時点であれが未来を提示してるっていうんなら、そこから変えていけばいいだけのことだよ。美紗ちゃんが自分で動き出せば、未来はきっと変えられるよ!」
「ありがとう、多恵ちゃん……良かったぁ…ウッ……ウグッ……ウゥッ」
泣かないと決めたのに、安心したら涙が込み上がってきて……それと共に感情が溢れ出て、涙が止まらなくなってしまった。
ようやく嗚咽がおさまり、顔をあげると多恵ちゃんに笑われた。
「酷い顔」
渡されたティッシュを手に取って鼻をかみ、もう1枚受け取ると、今度は涙を拭いた。
「鼻、真っ赤」
「だって、鼻水が凄い出るんだもん」
そう言いながら、鼻を真っ赤にしてる自分がおかしくて笑えてきた。多恵ちゃんも笑ってて、あぁこれからも私たちは友達でいられるんだと感じて、嬉しくなった。
「こんな感じで、矢野にも感情ぶつけてみればいいじゃん」
「む、無理だよ。矢野くんに鼻水出てるとこなんて見られたら、軽く死ねる……」
「じゃ、私なんて何回も死んでんじゃん! 矢野の鼻水出てるとこも見たことあるし」
「……ずるい。多恵ちゃんは幼馴染で、いっぱい私の知らない矢野くん知ってて」
「知りたくないっつーの! ハァーッ……それにしても、なんで矢野なわけ? よっぽど前川の方がイケメンじゃん」
なんでそこに前川くんが出てくるの!?
「前川くんは私の中では苦手って意識しかなかったから、今更そんな風に思えないよ。
……今日、前川くんにも伝えたし」
「えっ! 美紗ちゃん、前川の告白断ったんだ!! それで、何て言ってたあいつ?」
「『諦めねーから、覚悟しとけ』とか言われた……」
「うっわー、何その自分に自信ありますってイケメンなセリフ! てか、ヘタレで何も出来ない矢野なんかやめて、この際前川に乗り換えたら? イケメンだし、頭いいし、前川の方が将来有望だよ」
「わ、私は矢野くんがいいの!!」
「あーあ、美紗ちゃんは男見る目ないなぁ」
「し、知らない! もう、前川くんの話はしないでよ」
「でもこのままいくとさ、前川ルートありだと思う。強引に持ってかれそうじゃない? やっぱあれって正夢でさ、矢野との恋が終わって前川との新たな恋が始まるフラグかもよ」
ニタニタと多恵ちゃんが笑ってる。
ま、前川ルートって何? もう、人の恋愛をゲームかなんかと一緒にしないで欲しい。
「そ、そんなことには絶対ならないから!」
「ふふっ、どうだろうねぇ」
意地悪く微笑む多恵ちゃんを軽く睨みつけると、二人でプッと吹き出して笑い合った。今までよりももっと多恵ちゃんとの距離が縮まった気がして、嬉しい。
多恵ちゃんはバウムクーヘンの包みを開けて一口で放り込むと、ニコッと笑った。
「正夢になんないように、がんばんなよ! 応援してるからさっ」
「うん……頑張る」
急に現実が迫ってきて、体がキュッと硬くなった。
立ち上がって多恵ちゃんの部屋の窓を覗くと、そこには矢野くんの家が建っていた。
まだ、望みはある……諦めたくない。
今日、矢野くんから渡されたハンカチを思い出して、拳をギュッと握り締めた。
でも、本当にこのままじゃ矢野くんの心が離れていくのは確実で、私が行動しなければ終わってしまう気がした。
バレンタインまであと1週間。なんとか矢野くんに、私の気持ちを伝えたい……
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