66 / 91
仲違い
2
しおりを挟む
それから2週間が経ったけど、私と多恵ちゃんの仲は相変わらずで、もうクラスの子達にもさすがにバレてて、あまり関わりのない女の子までもが喋りかけてくれたりして、気を遣われてるのが余計に辛い。
うちの中学はお昼ご飯は席に座って前を向いたまま食べるという規則があるので、グループでかたまって食べたりすることがないから気楽でいいけど、ランチ後の長い昼休みが一番キツイ。最近では、図書室に行くのが日課になっていた。
今日もお昼休みに図書室へと向かおうとすると、前川くんが私の隣を歩いてきた。
「お前、野中と喧嘩したのかよ」
男子が女子の喧嘩に口出しするなんて思ってもみなかった私は、驚いて前川くんを見上げた。
「ど、どうしてそんなこと……聞くの?」
前川くんはチラッと私を見てから視線を逸らしながらも、はっきりと告げる。
「んなこと、好きなやつがボッチでいたら気になるからに決まってんだろ!」
火をつけられたみたいに、一瞬で顔が熱くなる。
す、好きなやつって……そ、そうだった。私、前川くんから告白されてたんだった。てゆうか、こんなにサラッと言っちゃうとか信じられない。
あまりの恥ずかしさに足を速めたけど、前川くんを振り切ることが出来ない。
でも、そこで気づいた。私はいつも逃げてばかりだと。
ちゃんと言わないと何も伝わらないんだ。勇気を出して、自分の気持ちを話さないと。
図書室を通り過ぎて人気のない技術室の前まで来ると、前川くんに深くお辞儀した。
「ご、ごめんなさい。私、好きな人がいて……」
前川くんは、私の言葉に動じることはなかった。髪の毛を掻き上げると、いつもの軽い調子で返す。
「んなもん、最初っから知ってる。でもさ、お前ら全然教室でも喋ってねーし、この前一緒に帰った時だってひとっことも会話なかったし、付き合ってる感じしねーじゃん。そのうち別れるかもしんねーし、そしたら俺にだってチャンスはあるってことだろ?」
「ぇ……」
えぇぇぇぇぇぇぇっっ!! 私と、前川くんが!?
「な、ないないなないない!!」
両手をブンブン振って否定すると、前川くんにブスッとした顔をされた。
「りんごぉ、お前ぇ……」
前川くんに睨まれ、「ご、ごめんなさい……」と、もはや条件反射で謝る私に、ハァーッと大きく前川くんが溜息を吐いた。
「……って、またダメだ。好きな子には意地悪しねーって、決めたのに。
おい、いつまでも俺のことイジメッ子って目で見んなよ。俺さ、後悔してんだ。お前に素直になれなかったこと」
「前川、くん……」
真っ直ぐ見つめる眼差しは真剣で、変わろうとしている彼の覚悟が伝わってきた。
「あーあ。もし俺が最初から素直にお前に好意を示してたら、今頃は俺とりんごが付き合ってたかもしれねぇよな」
「そ、れは……ないと、思うけど」
素直な気持ちが思わずポロッと零れてしまい、前川くんがクッと喉を鳴らした。
「お前って、そういう奴だよな、昔っから! 弱気で大人しそうに見えて、ほんとは頑固。でも、俺もぜってぇー諦めねーから!」
一人分のスペースを空けていた前川くんとの距離が詰められ、壁際に追い込まれていく。
「覚悟、しとけ」
無駄に整った顔が近づき、前川くんを両手でドンッと突き飛ばした。
「む、無理っっ!!」
そう叫ぶと、図書室へと駆け出した。
うちの中学はお昼ご飯は席に座って前を向いたまま食べるという規則があるので、グループでかたまって食べたりすることがないから気楽でいいけど、ランチ後の長い昼休みが一番キツイ。最近では、図書室に行くのが日課になっていた。
今日もお昼休みに図書室へと向かおうとすると、前川くんが私の隣を歩いてきた。
「お前、野中と喧嘩したのかよ」
男子が女子の喧嘩に口出しするなんて思ってもみなかった私は、驚いて前川くんを見上げた。
「ど、どうしてそんなこと……聞くの?」
前川くんはチラッと私を見てから視線を逸らしながらも、はっきりと告げる。
「んなこと、好きなやつがボッチでいたら気になるからに決まってんだろ!」
火をつけられたみたいに、一瞬で顔が熱くなる。
す、好きなやつって……そ、そうだった。私、前川くんから告白されてたんだった。てゆうか、こんなにサラッと言っちゃうとか信じられない。
あまりの恥ずかしさに足を速めたけど、前川くんを振り切ることが出来ない。
でも、そこで気づいた。私はいつも逃げてばかりだと。
ちゃんと言わないと何も伝わらないんだ。勇気を出して、自分の気持ちを話さないと。
図書室を通り過ぎて人気のない技術室の前まで来ると、前川くんに深くお辞儀した。
「ご、ごめんなさい。私、好きな人がいて……」
前川くんは、私の言葉に動じることはなかった。髪の毛を掻き上げると、いつもの軽い調子で返す。
「んなもん、最初っから知ってる。でもさ、お前ら全然教室でも喋ってねーし、この前一緒に帰った時だってひとっことも会話なかったし、付き合ってる感じしねーじゃん。そのうち別れるかもしんねーし、そしたら俺にだってチャンスはあるってことだろ?」
「ぇ……」
えぇぇぇぇぇぇぇっっ!! 私と、前川くんが!?
「な、ないないなないない!!」
両手をブンブン振って否定すると、前川くんにブスッとした顔をされた。
「りんごぉ、お前ぇ……」
前川くんに睨まれ、「ご、ごめんなさい……」と、もはや条件反射で謝る私に、ハァーッと大きく前川くんが溜息を吐いた。
「……って、またダメだ。好きな子には意地悪しねーって、決めたのに。
おい、いつまでも俺のことイジメッ子って目で見んなよ。俺さ、後悔してんだ。お前に素直になれなかったこと」
「前川、くん……」
真っ直ぐ見つめる眼差しは真剣で、変わろうとしている彼の覚悟が伝わってきた。
「あーあ。もし俺が最初から素直にお前に好意を示してたら、今頃は俺とりんごが付き合ってたかもしれねぇよな」
「そ、れは……ないと、思うけど」
素直な気持ちが思わずポロッと零れてしまい、前川くんがクッと喉を鳴らした。
「お前って、そういう奴だよな、昔っから! 弱気で大人しそうに見えて、ほんとは頑固。でも、俺もぜってぇー諦めねーから!」
一人分のスペースを空けていた前川くんとの距離が詰められ、壁際に追い込まれていく。
「覚悟、しとけ」
無駄に整った顔が近づき、前川くんを両手でドンッと突き飛ばした。
「む、無理っっ!!」
そう叫ぶと、図書室へと駆け出した。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。
天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――?
そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た!
っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!!
っていうか、ここどこ?!
※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました
※他サイトにも掲載中
『愛が切なくて』- すれ違うほど哀しくて -❧【タイトル変更しました】各話、タイトルただいま変更中~
設樂理沙
恋愛
砂央里と斎藤、こじれてしまった糸(すれ違い)がほどけていく様子を描いています。
元々の題名は『SHE&HE』でした。大幅加筆修正版を『恋に落ちて-Fall in love-』と
ドキドキしそうな表題にてup。(*^^)v
初回連載期間 2020.10.31~2020.12.13頃
◆都合上、[言う、云う]混合しています。うっかりミスではありません。
ご了承ください。
❧イラストはAI生成画像自作
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる