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目醒めたら
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お母さんが説明してくれた。
加害者の男性は私を軽トラに乗せ、病院まで運んでくれたんだけど、私が検査を受けている間に保険会社に連絡し、担当者が着いた途端名刺だけを置いて帰ってしまったそうだ。
それから、私の制服の胸ポケットに入っていた生徒手帳に記入されていた緊急連絡先を見て、保険会社の人がお母さんの職場に連絡してくれたのだった。
「保険会社の人には加害者と被害者が直接会ってやりとりをするとトラブルになり兼ねないからって説明されたけど、ちゃんと無事を見届けてから帰ったっていいのにねぇ。
何もなかったから良かったものの、もし障害でも残ったらどうしてくれるつもりかしら」
その時のことを思い出したのか、お母さんは自分のことのようにひどく腹を立てていた。
X線とCT検査で打ち付けた頭、痣や擦り傷の出来ていた右腕、左太腿、両足首を検査したけど異常はなく、ヒビや骨折も見られなかった。意外と自分が頑丈にできていたことにびっくり。もっと、ひ弱だと思ってたんだけど。
でも、安心するのは早いみたい。お医者さんの話では、頭から血が出るよりも血が出ない方が内出血の恐れがあるため、後遺症が出たりすることもあって危険らしい。
「何かおかしい症状とかない? ねぇ、ちゃんと記憶ある?」
和紗に聞かれ、一瞬喉を詰まらせてから小さく笑った。
「どこもおかしくないよ。大丈夫」
私が大人になって、中学生の自分を見ている夢を見ただなんて……
言っても、それは単なる夢だと笑われるだけだよね。予知夢、にしても変な夢だ。
あれは、なんだったんだろう。
現実では、中学生なのが私の方なのに……
夢に出てきた矢野くんがボンッと頭の中で膨らみ、一気に顔が赤くなった。
「お姉ちゃん? なに変な顔してんの?」
和紗に顔を覗き込まれ、「なんでもない……」と小さく頭を振った。
もう、突然思い出しちゃうんだもん、焦っちゃう。
カチャッと音がして病室の扉が開き、白衣を着て眼鏡を掛けたお医者さんが看護師さんと共に入ってきた。二人が入ってきた途端、和やかだった雰囲気が一変し、ここが病院だったことを改めて実感する。
田中とネームプレートを付けたお医者さんは、外科医で私の担当だということを説明した。歳はお母さんより少し若くて、落ち着いた感じの人だった。
「美紗子ちゃんの意識が戻ったから、ちょっと見させてもらってもいいかな」
「はい」
看護師さんが窓のカーテンを閉めて外との世界を遮断し、次に4人部屋の病室に、私のベッドを囲むようにしてカーブを描くレールに沿ってカーテンをシャーッと引いてくれた。その途端、そこは小さな自分だけの世界となる。
それは、小さい頃にダイニングテーブルにベッドシーツを垂らして、その中でお人形さんごっこをしていたことを思い出させて胸をくすぐられた。
「じゃ、前のボタン外してくれるかな」
その言葉に現実に引き戻されて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
小柄で華奢な体型に似合わない大きな胸は、私にとってコンプレックスでしかない。
男女で半分に分かれてプールの授業があった日、同じクラスの赤井くんに、
『水嶋さんってさぁ、痩せてるのにおっぱいでかいんだな!』
なんて言われて、全身の血液が沸騰しそうなほどに熱くなって、『穴があったら入りたい』って、このことを言うんだって思った。
たとえお医者さんとはいえ、男の人の目の前で裸になるのは正直抵抗があるけど、我慢しなきゃ。
赤と茶色のチェックの前開きのパジャマのボタンを一つずつ外し終わると聴診器が胸に当たり、その金属の冷たさにビクッとなった。
検診を受けながら、自分の覚えている限りで事故の状況を説明し終えると、お医者さんはカルテにサラサラと何か書き込み、顔を上げた。
「レントゲン検査やCTでも異常は見られませんでしたし、今は意識もしっかりしているようですね。念のため今日は入院してもらいますが、問題ないようでしたら明日には退院できますので」
「はい、ありがとうございます……」
加害者の男性は私を軽トラに乗せ、病院まで運んでくれたんだけど、私が検査を受けている間に保険会社に連絡し、担当者が着いた途端名刺だけを置いて帰ってしまったそうだ。
それから、私の制服の胸ポケットに入っていた生徒手帳に記入されていた緊急連絡先を見て、保険会社の人がお母さんの職場に連絡してくれたのだった。
「保険会社の人には加害者と被害者が直接会ってやりとりをするとトラブルになり兼ねないからって説明されたけど、ちゃんと無事を見届けてから帰ったっていいのにねぇ。
何もなかったから良かったものの、もし障害でも残ったらどうしてくれるつもりかしら」
その時のことを思い出したのか、お母さんは自分のことのようにひどく腹を立てていた。
X線とCT検査で打ち付けた頭、痣や擦り傷の出来ていた右腕、左太腿、両足首を検査したけど異常はなく、ヒビや骨折も見られなかった。意外と自分が頑丈にできていたことにびっくり。もっと、ひ弱だと思ってたんだけど。
でも、安心するのは早いみたい。お医者さんの話では、頭から血が出るよりも血が出ない方が内出血の恐れがあるため、後遺症が出たりすることもあって危険らしい。
「何かおかしい症状とかない? ねぇ、ちゃんと記憶ある?」
和紗に聞かれ、一瞬喉を詰まらせてから小さく笑った。
「どこもおかしくないよ。大丈夫」
私が大人になって、中学生の自分を見ている夢を見ただなんて……
言っても、それは単なる夢だと笑われるだけだよね。予知夢、にしても変な夢だ。
あれは、なんだったんだろう。
現実では、中学生なのが私の方なのに……
夢に出てきた矢野くんがボンッと頭の中で膨らみ、一気に顔が赤くなった。
「お姉ちゃん? なに変な顔してんの?」
和紗に顔を覗き込まれ、「なんでもない……」と小さく頭を振った。
もう、突然思い出しちゃうんだもん、焦っちゃう。
カチャッと音がして病室の扉が開き、白衣を着て眼鏡を掛けたお医者さんが看護師さんと共に入ってきた。二人が入ってきた途端、和やかだった雰囲気が一変し、ここが病院だったことを改めて実感する。
田中とネームプレートを付けたお医者さんは、外科医で私の担当だということを説明した。歳はお母さんより少し若くて、落ち着いた感じの人だった。
「美紗子ちゃんの意識が戻ったから、ちょっと見させてもらってもいいかな」
「はい」
看護師さんが窓のカーテンを閉めて外との世界を遮断し、次に4人部屋の病室に、私のベッドを囲むようにしてカーブを描くレールに沿ってカーテンをシャーッと引いてくれた。その途端、そこは小さな自分だけの世界となる。
それは、小さい頃にダイニングテーブルにベッドシーツを垂らして、その中でお人形さんごっこをしていたことを思い出させて胸をくすぐられた。
「じゃ、前のボタン外してくれるかな」
その言葉に現実に引き戻されて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
小柄で華奢な体型に似合わない大きな胸は、私にとってコンプレックスでしかない。
男女で半分に分かれてプールの授業があった日、同じクラスの赤井くんに、
『水嶋さんってさぁ、痩せてるのにおっぱいでかいんだな!』
なんて言われて、全身の血液が沸騰しそうなほどに熱くなって、『穴があったら入りたい』って、このことを言うんだって思った。
たとえお医者さんとはいえ、男の人の目の前で裸になるのは正直抵抗があるけど、我慢しなきゃ。
赤と茶色のチェックの前開きのパジャマのボタンを一つずつ外し終わると聴診器が胸に当たり、その金属の冷たさにビクッとなった。
検診を受けながら、自分の覚えている限りで事故の状況を説明し終えると、お医者さんはカルテにサラサラと何か書き込み、顔を上げた。
「レントゲン検査やCTでも異常は見られませんでしたし、今は意識もしっかりしているようですね。念のため今日は入院してもらいますが、問題ないようでしたら明日には退院できますので」
「はい、ありがとうございます……」
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