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ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります
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私が思い悩んでいる間にも時は過ぎてゆき、いつの間にか夏季休暇に入りました。
長い夏季休暇では、私の家族はいつもライアン様のご家族と揃って田舎のマナーハウスに滞在し、バケーションを共に過ごします。
けれど、おじ様からご連絡があり、今年の夏季休暇はルナ嬢を連れていくことになったから、私達とは一緒に過ごさないとのことでした。
ライアン様……会いたい。
お会いしたくて堪りません……
ライアン様への想いを募らせた私は、彼の滞在するマナーハウスを訪ねることにいたしました。正面玄関から入るとお断りされそうなので、裏門からそっと入ります。
すると、ガーデンで話し声が聞こえてきました。そっと柱の影に隠れます。
「まったく、バケーションにまでついてくるなんて、いったいどういうつもりだ!?」
ライアン様のお声ですわ……
懐かしいそのお声に涙が出そうになります。ライアン様の声音は普段と違い、怒りと苛立ちが含まれていました。
「ちょっとぉ、冷たいこと言わないでよ! せっかく一緒にいられるんだから、もっと楽しくしてよね」
「楽しい気分でなどいられるか! 私は、もう……2ヶ月もアンジェリカの顔を見ていないのだぞ! なぜ、なぜなんだ……教室に行こうとしても辿り着かず、ランチタイムや帰りに彼女の教室を覗いてもいない。どうしてるんだ、アンジェリカ……」
では、ライアン様も私と同じように会いに行き、互いに会えずにいたのですのね……あぁ、ライアン様……
柱から覗いてみますと、ライアン様が憔悴しきった表情で頭を抱えていました。
「夏季休暇に入れば、ようやくアンジェリカとバケーションを過ごせると、それだけを楽しみにしていたのに!! まさか、父上が裏切るとは……なぜ、心変わりされたのだっっ」
「今頃アンジェリカだって、別の男見つけて楽しくやってるわよ。ねぇ、この近くに湖があるって聞いたんだけど、一緒に行かない?」
ルナ嬢がライアン様のお手を取ろうとしましたが、彼はそれを振り解きました。
「アンジェリカが別の男となど……ありえない! 彼女は、そんな女性ではない!」
「ねぇ、そろそろ諦めなさいよ。私が課金し続ける限り、ライアンはアンジェリカには会えないし、どんどん周囲が私とライアンを結ぼうと固めてくるの! もう私とハッピーエンディング迎えようよ!!」
また、ルナ嬢が『カキン』の話をしていますわ。
『カキン』っていったいなんですの!? 強力な魔法か呪いのことですの!?
ライアン様が大きく息を吐き出しました。
「何を言ってるのか、意味が分からない。
以前に言ったはずだ。私のアンジェリカへの気持ちはずっと変わることはないと……もう私のことは、諦めてくれ」
「そんなわけにいかないわよ!! ライアンにいくらお金注ぎ込んだと思ってんのよ!! 私はね、あんたとハッピーエンディングを迎えて、特別限定スチルをぜーったいにゲットするって決めてんだから!!」
「意味が分からないが、何かの商品目当てなら、それは真実の愛とは言えない」
ルナ嬢が声を詰まらせました。
「わ、分かったわよ。だったら……キスしてくれたら、ライアンのこと諦めてあげる」
それを聞き、思わず声を上げそうになり、手を口に当てました。
ルナ嬢が、ライアン様と口づけを……
ライアン様は即座に首を振りました。
「それは……出来ない。私は、初めての口付けは婚姻の際にアンジェリカと交わすと誓ったのだ」
ライアン様……
胸が甘く疼きます。
「んもぉ、特別限定スチルの代わりに、キススチルで手を打ってやろうってしてるのに、なんなのよ!! だったら、あんたはもう一生アンジェリカと会うことはできないんだから!!」
そう言ってそっぽを向けたルナ嬢の手首を、ライアン様がグッと掴みました。
「ま、待ってくれ!!
……わ、かった。キスをすれば、またアンジェリカに会えるようになるのだな?」
ラ、ライアン様!? 本気、ですの……!?
「えぇ、そうよ。ただし、唇同士じゃないと意味ないからね」
ルナ嬢がニヤッと笑いました。
「分かった……」
ライアン様がルナ嬢の両肩を掴みます。
そ、んな……お待ちになって、ライアン様! 私だって、婚姻の契りを交わす際にライアン様との口付けを夢見ておりましたのに。
こんなところで、ライアン様とルナ嬢のキスを見ることになるだなんて……!
長い夏季休暇では、私の家族はいつもライアン様のご家族と揃って田舎のマナーハウスに滞在し、バケーションを共に過ごします。
けれど、おじ様からご連絡があり、今年の夏季休暇はルナ嬢を連れていくことになったから、私達とは一緒に過ごさないとのことでした。
ライアン様……会いたい。
お会いしたくて堪りません……
ライアン様への想いを募らせた私は、彼の滞在するマナーハウスを訪ねることにいたしました。正面玄関から入るとお断りされそうなので、裏門からそっと入ります。
すると、ガーデンで話し声が聞こえてきました。そっと柱の影に隠れます。
「まったく、バケーションにまでついてくるなんて、いったいどういうつもりだ!?」
ライアン様のお声ですわ……
懐かしいそのお声に涙が出そうになります。ライアン様の声音は普段と違い、怒りと苛立ちが含まれていました。
「ちょっとぉ、冷たいこと言わないでよ! せっかく一緒にいられるんだから、もっと楽しくしてよね」
「楽しい気分でなどいられるか! 私は、もう……2ヶ月もアンジェリカの顔を見ていないのだぞ! なぜ、なぜなんだ……教室に行こうとしても辿り着かず、ランチタイムや帰りに彼女の教室を覗いてもいない。どうしてるんだ、アンジェリカ……」
では、ライアン様も私と同じように会いに行き、互いに会えずにいたのですのね……あぁ、ライアン様……
柱から覗いてみますと、ライアン様が憔悴しきった表情で頭を抱えていました。
「夏季休暇に入れば、ようやくアンジェリカとバケーションを過ごせると、それだけを楽しみにしていたのに!! まさか、父上が裏切るとは……なぜ、心変わりされたのだっっ」
「今頃アンジェリカだって、別の男見つけて楽しくやってるわよ。ねぇ、この近くに湖があるって聞いたんだけど、一緒に行かない?」
ルナ嬢がライアン様のお手を取ろうとしましたが、彼はそれを振り解きました。
「アンジェリカが別の男となど……ありえない! 彼女は、そんな女性ではない!」
「ねぇ、そろそろ諦めなさいよ。私が課金し続ける限り、ライアンはアンジェリカには会えないし、どんどん周囲が私とライアンを結ぼうと固めてくるの! もう私とハッピーエンディング迎えようよ!!」
また、ルナ嬢が『カキン』の話をしていますわ。
『カキン』っていったいなんですの!? 強力な魔法か呪いのことですの!?
ライアン様が大きく息を吐き出しました。
「何を言ってるのか、意味が分からない。
以前に言ったはずだ。私のアンジェリカへの気持ちはずっと変わることはないと……もう私のことは、諦めてくれ」
「そんなわけにいかないわよ!! ライアンにいくらお金注ぎ込んだと思ってんのよ!! 私はね、あんたとハッピーエンディングを迎えて、特別限定スチルをぜーったいにゲットするって決めてんだから!!」
「意味が分からないが、何かの商品目当てなら、それは真実の愛とは言えない」
ルナ嬢が声を詰まらせました。
「わ、分かったわよ。だったら……キスしてくれたら、ライアンのこと諦めてあげる」
それを聞き、思わず声を上げそうになり、手を口に当てました。
ルナ嬢が、ライアン様と口づけを……
ライアン様は即座に首を振りました。
「それは……出来ない。私は、初めての口付けは婚姻の際にアンジェリカと交わすと誓ったのだ」
ライアン様……
胸が甘く疼きます。
「んもぉ、特別限定スチルの代わりに、キススチルで手を打ってやろうってしてるのに、なんなのよ!! だったら、あんたはもう一生アンジェリカと会うことはできないんだから!!」
そう言ってそっぽを向けたルナ嬢の手首を、ライアン様がグッと掴みました。
「ま、待ってくれ!!
……わ、かった。キスをすれば、またアンジェリカに会えるようになるのだな?」
ラ、ライアン様!? 本気、ですの……!?
「えぇ、そうよ。ただし、唇同士じゃないと意味ないからね」
ルナ嬢がニヤッと笑いました。
「分かった……」
ライアン様がルナ嬢の両肩を掴みます。
そ、んな……お待ちになって、ライアン様! 私だって、婚姻の契りを交わす際にライアン様との口付けを夢見ておりましたのに。
こんなところで、ライアン様とルナ嬢のキスを見ることになるだなんて……!
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