ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります

奏音 美都

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ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります

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 その後も、ルナ嬢のライアン様へのアプローチは止まることはありませんでした。

 休憩時間の度に、ライアン様の元へと駆け寄ります。

「ライアーン、どこ行くの?」
「もちろん、可愛いアンジェリカの顔を見に行くんだよ」

 ランチタイムの際には、手作りのお弁当を持ってきました。

「ライアン、これ貴方のために早起きして作ったの! 食べて!」
「悪いけど、毎日アンジェリカが僕のためにお弁当を作ってきてくれてるんだ。彼女の料理の腕は最高なんだ。ルナ、君もアンジェリカから習ったらどうだい?」

 剣術の試合では一番前に陣取って声援し、試合後にタオルを渡そうと待ち構えていました。

「ライアン、はいタオル! 試合、お疲れ様ー。すごくカッコ良かったよ!」
「声援ありがとう。だが、試合で相手がミスをした時に歓声を上げるのは感心しないな。
 タオルは、アンジェリカが持っていてくれるから、それを使うよ」

 ルナ嬢に対して1ミリも好意を見せないライアン様に対し、ルナ嬢は諦める気配を見せません。お手洗いにまでついて行こうとする始末です。

「まいったな……」

 ライアン様が悩ましげに吐息を吐きました。

 今、私たちはライアン様のご自宅におります。普段は寮生活なのですが、イースターホリデーに入ったため、自宅へと帰ったのです。

 ルナ嬢からの猛烈なアプローチに、困っていらっしゃるのね。

 そう考えていると、再びライアン様が溜息を吐きました。

「男女別々の寮で、終業後に離れるのすら辛く思っていたのに、学園にいる間でさえも、アンジェリカとふたりきりになれない。アンジェリカが不足して……死にそうだ」

 ライアン様のお言葉に、胸がキュンと締め付けられます。

「ライアン様……私も、寂しく思っておりました」

 彼の大きな手が私の頬を包み込みます。

「婚姻するまでは、アンジェリカに指一本触れないと心に誓っていたが……こんな状況、耐えられないんだ。君の唇を、奪っても構わないか?」

 ライアン様のお言葉に、顔が熱を持ちます。

「えぇ……」

 結婚式でのファーストキスに憧れていましたが、これほどにライアン様に求められて拒めるはずがありませんわ。私だって……ずっと、夢見ていたんですもの。

 ライアン様の端正なお顔が近付き、唇が寄せられます。そっと瞳を閉じたところで、扉がノックされました。メイドの声が、扉の奥から聞こえます。

「坊っちゃま、失礼いたします。坊っちゃまのご友人だという方が、お見えになられております」

 まさか……

 私たちは、顔を見合わせました。

 その、まさかでした。ルナ嬢がライアン様を訪ねていらしたのです。

「イースターホリデーをライアンと過ごしたくて、来ちゃった」

 これには、さすがのライアン様も怒りを隠しきれません。

「君は……自宅にまで押し掛けるとは、なんのつもりだ。この際、はっきり言おう。私が愛するのは生涯アンジェリカひとりだけだ」
「人の気持ちなんて、いつ変わるか分からないじゃない!」
「幼い頃、初めてアンジェリカに出逢ってからこの想いは変わらない。この先も、変わることなどない」

 ライアン様のお声は、確信に満ちていました。ルナ嬢が唇を震わせました。

「こ、こうなったら……課金してやるーっっ!!」

 え、『カキン』って……なんですの?

 目を瞬かせておりますと、ライアン様のご両親が現れました。

「おぉ、ルナ嬢ではないか。ぜひ、イースターのディナーを一緒にしよう!」

 どうして、おじさまとおばさまがルナ嬢をご存知なの!?
 それよりも、ディナーにご招待するだなんて、いったいどういうことですの!?

 動揺していますと、おじ様が私に告げました。

「アンジェリカ、君はもう家へ帰りたまえ。ご両親が心配しているよ。馬車で送ってあげよう。あぁ、ルナ嬢は泊まっていくといい。ご両親には、私から連絡しておくから」

 私だけでなく、ライアン様も唖然としておられます。けれど、ルナ嬢だけはしたり顔でおられました。

「えぇ、ぜひ。楽しみですわ。
 ではアンジェリカ嬢、ご機嫌よう」
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