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ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります
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「あぁ、あのおふたり、素敵ですわね」
「えぇ。まさに、理想の恋人ですわ」
そんな周囲の声が聞こえてきて、思わず私たちは顔を見合わせ、微笑みました。
ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私の婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私は婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。
「私はアンジェリカの婚約者になれて、幸せだ。美しい婚約者がいて羨ましいと、皆が私のことを言っている」
「まぁ、そんな……」
そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。
それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。
「皆様、転入生のルナさんです。ルナさんは、ライアンさんの席の隣が空いていますので、そこに座るように。ライアンさんはクラス委員をしておりますので、授業後、学園の案内をお願いしますわね」
「はい、分かりました」
ライアン様が、転入生をご案内される……
それは、クラス委員として責任ある役割であると理解しておりますが、私以外の女性がライアン様のお隣を歩き、会話を交わし、笑顔で見つめ合うのだと考えますと、胸が痛みます。
「ライアン、どうぞよろしくね」
ルナ嬢が笑顔で手を振り、ライアン様の隣の席に座ります。
「あぁ、よろしく」
「ライアンってイケメンで頭良くて、性格もめちゃめちゃ良さそうだし、かなりポイント高いよね! 隣になれてラッキー♪ 私、この学園に入って誰も知り合いいなくて不安だから、友達になってくれる?」
「ハハッ……ルナって、変わった人だね。君ならきっと、友達もすぐにできると思うよ」
ライアン様はルナ嬢からのアプローチをスマートに躱しましたが、不安は募るばかりです。こんな積極的なルナ嬢とふたりきりだなんて……大丈夫なのでしょうか。
授業が終わると、早速ルナ嬢がライアン様に話しかけました。
「じゃあ、ライアン。学園の案内してくれる?」
それを受け、ライアン様が立ち上がりました。
あぁ。おふたりが行かれてしまいますわ。いつも休憩時間は、ライアン様は真っ先に私の元へと来て下さいますのに。
ライアン様が振り向かれます。
「アンジェリカ、君もルナの学園案内に付き合ってくれないか?」
「ぇ……えぇ、もちろんですわ。喜んで」
にっこりとルナ嬢に微笑みますと、ライアン様の背後で彼女が私に向けて嫌悪の表情を浮かべました。ライアン様は気付かず、ルナ嬢に私をご紹介くださいます。
「ルナ、こちらはクラスメートのアンジェリカだ。彼女は私の許嫁でもあるんだ。アンジェリカは優秀だし、同性だから悩みも打ち明けやすいだろう。仲良くしてやってくれ」
ルナ嬢は、フッと笑みを浮かべました。
「許嫁って、親同士が勝手に決めたものでしょう? 本人の意思に関係なく結婚させるなんて、時代錯誤もいいところだわ。私なら……結婚相手は、自分で選びたいもの」
彼女の視線の先には、ライアン様がおりました。ライバル宣言、といったところでしょうか。
ライアン様は爽やかに笑いました。
「ハハッ、本来なら親に決められた許嫁など、反発したくなるものだが……私は果報者だな。アンジェリカを婚約者にできるなんて」
「ラ、ライアン様……」
恥じらっておりますと、ルナ嬢が憤然としてライアン様の手を取り、歩き出しました。
「学園の案内をしてくれる約束でしょ? 行きましょ!」
教室を案内しながら気になるのは、ルナ嬢とライアン様の距離が異様に近いことです。そして、そんなルナ嬢と距離を取るようにライアン様が私に寄ってくるので……私は、廊下ぎりぎりに追い詰められて歩くことになっていました。
「あぁアンジェリカ、すまない。歩きにくいよね? ルナ、もっと左側に寄ってくれないか?」
「じゃあ、ライアンも左に寄って!」
ルナ嬢はライアン様の腕に自らの腕を回して引き寄せると、自らの胸をムギュッとライアン様に押し付けました。あまりにも大胆な行動に、呆れて声も出ません。
ライアン様は、そっとルナ嬢の腕を外しました。
「私の腕は、アンジェリカをエスコートするためにあるんだ。気安く触らないでくれるかな?」
笑みを浮かべているものの、空恐ろしい空気を纏ったライアン様に、さすがのルナ嬢もビクッとしました。
「ちょ、ノリでやったんじゃない! もうっ、怒んないでよ!」
「えぇ。まさに、理想の恋人ですわ」
そんな周囲の声が聞こえてきて、思わず私たちは顔を見合わせ、微笑みました。
ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私の婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私は婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。
「私はアンジェリカの婚約者になれて、幸せだ。美しい婚約者がいて羨ましいと、皆が私のことを言っている」
「まぁ、そんな……」
そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。
それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。
「皆様、転入生のルナさんです。ルナさんは、ライアンさんの席の隣が空いていますので、そこに座るように。ライアンさんはクラス委員をしておりますので、授業後、学園の案内をお願いしますわね」
「はい、分かりました」
ライアン様が、転入生をご案内される……
それは、クラス委員として責任ある役割であると理解しておりますが、私以外の女性がライアン様のお隣を歩き、会話を交わし、笑顔で見つめ合うのだと考えますと、胸が痛みます。
「ライアン、どうぞよろしくね」
ルナ嬢が笑顔で手を振り、ライアン様の隣の席に座ります。
「あぁ、よろしく」
「ライアンってイケメンで頭良くて、性格もめちゃめちゃ良さそうだし、かなりポイント高いよね! 隣になれてラッキー♪ 私、この学園に入って誰も知り合いいなくて不安だから、友達になってくれる?」
「ハハッ……ルナって、変わった人だね。君ならきっと、友達もすぐにできると思うよ」
ライアン様はルナ嬢からのアプローチをスマートに躱しましたが、不安は募るばかりです。こんな積極的なルナ嬢とふたりきりだなんて……大丈夫なのでしょうか。
授業が終わると、早速ルナ嬢がライアン様に話しかけました。
「じゃあ、ライアン。学園の案内してくれる?」
それを受け、ライアン様が立ち上がりました。
あぁ。おふたりが行かれてしまいますわ。いつも休憩時間は、ライアン様は真っ先に私の元へと来て下さいますのに。
ライアン様が振り向かれます。
「アンジェリカ、君もルナの学園案内に付き合ってくれないか?」
「ぇ……えぇ、もちろんですわ。喜んで」
にっこりとルナ嬢に微笑みますと、ライアン様の背後で彼女が私に向けて嫌悪の表情を浮かべました。ライアン様は気付かず、ルナ嬢に私をご紹介くださいます。
「ルナ、こちらはクラスメートのアンジェリカだ。彼女は私の許嫁でもあるんだ。アンジェリカは優秀だし、同性だから悩みも打ち明けやすいだろう。仲良くしてやってくれ」
ルナ嬢は、フッと笑みを浮かべました。
「許嫁って、親同士が勝手に決めたものでしょう? 本人の意思に関係なく結婚させるなんて、時代錯誤もいいところだわ。私なら……結婚相手は、自分で選びたいもの」
彼女の視線の先には、ライアン様がおりました。ライバル宣言、といったところでしょうか。
ライアン様は爽やかに笑いました。
「ハハッ、本来なら親に決められた許嫁など、反発したくなるものだが……私は果報者だな。アンジェリカを婚約者にできるなんて」
「ラ、ライアン様……」
恥じらっておりますと、ルナ嬢が憤然としてライアン様の手を取り、歩き出しました。
「学園の案内をしてくれる約束でしょ? 行きましょ!」
教室を案内しながら気になるのは、ルナ嬢とライアン様の距離が異様に近いことです。そして、そんなルナ嬢と距離を取るようにライアン様が私に寄ってくるので……私は、廊下ぎりぎりに追い詰められて歩くことになっていました。
「あぁアンジェリカ、すまない。歩きにくいよね? ルナ、もっと左側に寄ってくれないか?」
「じゃあ、ライアンも左に寄って!」
ルナ嬢はライアン様の腕に自らの腕を回して引き寄せると、自らの胸をムギュッとライアン様に押し付けました。あまりにも大胆な行動に、呆れて声も出ません。
ライアン様は、そっとルナ嬢の腕を外しました。
「私の腕は、アンジェリカをエスコートするためにあるんだ。気安く触らないでくれるかな?」
笑みを浮かべているものの、空恐ろしい空気を纏ったライアン様に、さすがのルナ嬢もビクッとしました。
「ちょ、ノリでやったんじゃない! もうっ、怒んないでよ!」
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