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エピローグ 私と伊佐を繋ぐ未来
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「……は?」
唖然として勇気くんを見上げると、ニヤニヤと笑みを浮かべてから私の耳に顔を寄せ、小声で話す。
「海ぃがはっきりせんで、背中押したろ思ってぇ、郁美と作戦考えたがよ。美和子にも本気にしてもらわんとかんでぇ、こっちもきばったがよ」
「う、嘘……」
間抜けな顔をした私に、勇気くんがしたり顔で笑う。
「ワハハーッ! 俺の演技力も大したもんじゃろが! 将来はラガーマンやのぉて、俳優目指すが!」
「アホぉ、あたしの演出が良かったからだがよ!」
郁美がすかさずツッコミを入れ、そんなやりとりに安堵と嬉しさで笑いが込み上がってきた。
「フフッ……もぉ、なんなのぉ。ほんっと、ビックリしたよぉ……」
「フフッ……美和子ぉ、びっくりさせてごめぇんて!」
事情がわかってない周りのみんなは、そんな私たちをポカンと見つめていた。
最後に、海くんが私の前に立った。
「海くんとは、たくさん深い話が出来て……良かった」
「あぁ」
たった一言返されただけなのに、溢れてしまう。胸がかき乱され、感情が波のように高まっていき、身体が震える。海くんのダークブラウンの瞳が揺れた。
「まだ、これからだから」
「ぇ?」
なんの話か分からず戸惑っていると、海くんが喉仏を上下させ、まっすぐに見据えた。
「鈴木さんが伊佐に戻ってくるまでに、俺も自分の将来に向けて頑張るから。ここ、伊佐で再会したら……今度は、諦めない」
え。え……それって……
曖昧な言葉の真意を探るように、海くんの瞳を見つめ返したけど、海くんはそれ以上何も言わず、フッと目を細めて微笑むと、手を差し出した。
「美和子、伊佐で待ってるから」
その言葉に、私よりも女子たちから黄色い歓声が上がり、男子たちからも「海がぁ、『美和子』呼んだぞぉ!」「悔しいけど、わっぜかっこいいのぉ!」とどよめきが起こった。
私は零れ落ちる涙と共に、大きく頷いた。
唖然として勇気くんを見上げると、ニヤニヤと笑みを浮かべてから私の耳に顔を寄せ、小声で話す。
「海ぃがはっきりせんで、背中押したろ思ってぇ、郁美と作戦考えたがよ。美和子にも本気にしてもらわんとかんでぇ、こっちもきばったがよ」
「う、嘘……」
間抜けな顔をした私に、勇気くんがしたり顔で笑う。
「ワハハーッ! 俺の演技力も大したもんじゃろが! 将来はラガーマンやのぉて、俳優目指すが!」
「アホぉ、あたしの演出が良かったからだがよ!」
郁美がすかさずツッコミを入れ、そんなやりとりに安堵と嬉しさで笑いが込み上がってきた。
「フフッ……もぉ、なんなのぉ。ほんっと、ビックリしたよぉ……」
「フフッ……美和子ぉ、びっくりさせてごめぇんて!」
事情がわかってない周りのみんなは、そんな私たちをポカンと見つめていた。
最後に、海くんが私の前に立った。
「海くんとは、たくさん深い話が出来て……良かった」
「あぁ」
たった一言返されただけなのに、溢れてしまう。胸がかき乱され、感情が波のように高まっていき、身体が震える。海くんのダークブラウンの瞳が揺れた。
「まだ、これからだから」
「ぇ?」
なんの話か分からず戸惑っていると、海くんが喉仏を上下させ、まっすぐに見据えた。
「鈴木さんが伊佐に戻ってくるまでに、俺も自分の将来に向けて頑張るから。ここ、伊佐で再会したら……今度は、諦めない」
え。え……それって……
曖昧な言葉の真意を探るように、海くんの瞳を見つめ返したけど、海くんはそれ以上何も言わず、フッと目を細めて微笑むと、手を差し出した。
「美和子、伊佐で待ってるから」
その言葉に、私よりも女子たちから黄色い歓声が上がり、男子たちからも「海がぁ、『美和子』呼んだぞぉ!」「悔しいけど、わっぜかっこいいのぉ!」とどよめきが起こった。
私は零れ落ちる涙と共に、大きく頷いた。
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