チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

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第十章 同じ空の下

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 ようやくトレッキングを終えると、女子は休憩モードに入り、テントの中でお菓子を食べながらお喋りしてたけど、男子たちは持ってきたボールでチームに分かれてサッカーをやったり、フリスビーをやったりしていた。

男衆おとこんしは元気よねぇ」
「だからよー!」
「こんあとはお盆が来て、そいが終わったらもう課外後半始まるがよー」
「そいは言わん約束がよ!!」
「そっかぁ、大変だね……」

 そう言った私に、みんなが『ぁっ……』と、小さく呟いた。私はその前に、カナダに帰ってしまう。もう、みんなと授業を受けることはないんだ。思わず睫毛を伏せると、郁美が私の肩をポンと叩いた。

「伊佐で楽しい思い出、いっぱい作るがよ」
「うん」
「そ、そうがよ! まだすぐ帰るわけじゃないけぇ」
「一緒にいっぱい遊ぶがよ!!」

 郁美が立ち上がると、テントの隅に置かれていたバドミントンセットを手にした。

「ほんじゃ、思い出作りするがよ!」
「わっぜ、きばるがよー!」
「あたしも、負けんから!」

 みんなに続き、私もテントの外へと飛び出した。

 バドミントンをしてる途中、松元先生と赤井先生がそれぞれ大きなダンボール箱を手に帰ってきた。

「荷物係頼もう思っちょったら、誰もおらんかったが。先生たちゃ、大変だったがよ。年寄り働かせんな」
「先生、腹減ったがよー」
「西郷、お前は川の魚でも取って焼いてこんね」
「ハハハッ……西郷どん、手掴みじゃ、手掴み!!」
「んで、そのまま頭から食うね!」
「アホぉ! 俺ぁゴラムじゃないが!!」
『ワハハ……』

 買い物袋を受け取ると仕分けしていく。

「あっ、花火が入っとるが!」
「俺も持ってきたがよ」
「田中ぁ、お前は気がきくのぉ」
「わっぜ、楽しみー!!」

 お昼はホットドックにし、先生たちは食事を終えると疲れたからとテントの中へ入っていった。女子たちで後片付けをし、炊事棟で食器を洗っていると、本田くんと中村くんが呼びに来た。

「管理棟で草スキー借りてきたから、みんなでやらんけ?」
『やりたい!!』

 ダンボール箱を解体して手作りのそりも4つ作り、それを持って草そり場へと向かうと、もう既に勇気くんと海くんがヘルメットを被り、スキーをしていた。海くんが足をピタッと揃えて膝を曲げ、美しいフォームで滑り降りてくる。

「海くん、わっぜかっこいいー!」
「上手いがよー」

 その横で勇気くんもフォームは綺麗ではないものの、運動神経の良さを生かしてぎりぎりでバランスをとりながら滑っていた。と、バランスを崩し、まるで漫画のように大回転してこけた。

「アハハー、勇気! わっぜ、ダサいがよー!!」
「やぜらしかー、郁美ぃ!!」

 短パンから出ている膝を押さえた勇気くんに、声をかける。

「勇気くん、大丈夫!?」
「あぁ、体は丈夫じゃけぇ、大丈夫がよ」
「そいを言うなら、体だけ・・は丈夫じゃけぇ、ね」
「郁美ぃ、覚えとれぇ」
「知らん!」

 二人の言い合いに、女子たちがクスクス笑い合う。

「まぁた始まったが、夫婦漫才!」
「わっぜ、仲良しね」

 ほんと、お似合いの二人だと思うんだけど……

 勇気くんを見上げると、こちらに向かって手を振ってきた。

 下までおりてきた勇気くんの膝を見ると皮膚が抉れ、血が出ていた。肘も擦りむいてる。

「うわっ、結構血が出てる! ちょっと待ってて、私消毒薬と絆創膏持ってくるから!」

 慌ててキャンプサイトに戻ろうとすると、勇気くんが「ほいじゃ、俺も一緒に行くがよ」と言って、ついてくることになった。予測してなかったふたりきりの状況に戸惑いを隠せないけど、なんともない顔をしてみんなに手を振った。
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