チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

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第十章 同じ空の下

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「美和子ぉ! 風呂入ってきたんけ?」

 ずぶ濡れになった勇気くんが、遠くから声を掛けてきた。

「今、女子みんな入ってるよ!」
「マジか!? 見に行くがよ!!」

 息急き切って海くんが川から上がると、ちょうどそこへ由美子と真紀と涼子が歩いてきた。

「なんじゃー、つまらん! 郁美の裸ぁなんて興味ないだがよ」
「え、郁美はもうお風呂出て、今は田中くんが入っとるがよ」
「余計、興味ないが!」

 海くんは川に再び飛び込むと、遊び出した。

 結局男子たちは五右衛門風呂には入らず、シャワーを浴びに浴場施設へと向かった。その間、私たちは薪を囲み、お喋りに興じた。

 男子が帰ってきたところで、小枝を探し、その先にマシュマロをつけて焼いた。これはコツがあって、あまり近づけすぎると黒焦げになってしまうし、遠すぎてもマシュマロが溶けなくて美味しくない。ほんのり茶色くなった状態のマシュマロが一番美味しい。

「マシュマロ、うめぇーが!」

 勇気くんは小枝の先にいくつものマシュマロをつけて焼いていて、それはふれあいセンターで見た、餅を小枝に刺したメの餅みたいになっていた。

 みんながマシュマロを食べきらないうちに、グラハムクラッカー2枚とチョコレートを全員に配った。

「これはスモアって言って、グラハムクラッカーの間にチョコとマシュマロを挟んで食べるデザートで、北米ではキャンプファイヤーの時に作るのが定番なの」
「へぇー、なんかオシャレね」

 郁美が感心しながら小枝の先から慎重にマシュマロを外し、クラッカーの間に挟んで食べた。

「んーっっ!! わっぜ、んまぁっ!!」

 大興奮しながら叫んだ郁美に、みんながどれどれとスモアを作り始めた。

「焼きマシュマロでチョコが溶けて、わっぜ美味しい!」
「なんこれ、最高だが!」
「うん、美味しい」

 みんなの反応を聞いて、嬉しくなる。勇気くんがチョコとマシュマロを口の周りにつけながら、ニヤッと笑った。

「これから、このスモウが俺らのキャンプファイヤーの定番がよ!」
「勇気くん……スモウじゃなくて、スモアだよ」
「プッ、ププッ……スモウって……」
「なっ……!? いきなり海がぁ笑い出したがよ!」
「おま、知らんのけ? 海はぁ実は笑い上戸なんがよ」
「プッ……ククッ……」
「おい、海ん笑い方気持ち悪いでぇ、誰か止めてくれ!!」

 私たちの周りにテントを張っている人たちはおらず、今日は多少のことは無礼講と思っているのか、松元先生と赤井先生はテントの中でリラックスしてるみたいだった。

 ふと見上げると、空一面にたくさんの星がキラキラと輝いていた。私の仕草に横に座っていた郁美と由美子も顔を上げ、それに倣うようにみんなが顔を空へと向ける。

「うわー、すげー!!」
「わっぜ、綺麗!!」
「ほんと……凄い」

 勇気くんが立ち上がった。

「もっと良く見えるとこまで行ってみるけ?」
『うん!!』
『おぉ!!』

 勇気くんを先頭に、全員で連れ立って歩いて行く。着いたのは、今日郁美が案内してくれた草そり場だった。その斜面をゆっくりと登って行き、勇気くんがゴロンと寝転がった。

「ほれ、見てみぃ! 星が視界いっぱいに広がるがよ」

 男子たちは言われた通りすぐゴロンと寝転がり、郁美も躊躇いなく横たわったけど、それ以外の私含む女子はそこにお尻をついて上半身を起こしたまま、どうしようか迷っていた。綺麗な星空を見たい気持ちはやまやまだけど、せっかくお風呂に入って綺麗になった髪が汚れてしまう。

 とりあえず、もう少し上の方に上がってみよう。

 みんが寝転んでる間を掻い潜って上へと歩いて行くと、足首に何かが当たり、躓いた。

「ッッ……」
「美和子ぉ、大丈夫かぁ?」

 勇気くんの足が伸びてるのに気がつかず、転んでしまったみたいだ。
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