45 / 72
第八章 いさドラゴンカップ
5
しおりを挟む
時間になり、いよいよ決勝戦を迎える。
『みんなぁ、きばるがよー!!』
横断幕を手に叫んだ由美子と真紀に、皆が手を振って応える。招集場へと向かう途中、「美和子ちゃぁん!」と呼びかける声に後ろを振り向くと、おばあちゃんが手を振っていた。
「おばあちゃん!! 応援来てくれたんだ!!」
今朝、見送られた時は、年寄りには賑やかな場所に長時間いるのは辛いから応援には行けないって話してたのに。
「やっぱり美和子ちゃんがぁ舟漕ぐとこぉ見たくてよ。ここまで連れてきてもらったがよ」
みんなに先に行ってもらうようにしておばあちゃんに駆け寄り、手を握る。
「ありがとう、おばあちゃん。すっごいやる気出た! 私、がんばるから」
「おぉ、美和子ちゃぁん、きばれー!!」
おばあちゃんの力強い応援に微笑むと、手を振って招集場へと駆け出した。力が漲ってくるのを感じた。チームのメンバーだけじゃない。応援してくれてる人たちからも、私たちはパワーをもらってるんだ。
さぁ、きばってくぞ!!
今回の決勝戦でのレースは4艇で争い、私たちの艇は4レーンで予選1位と4位のチームに挟まれている。予選1位のチームが、艇に乗り込む。私たちが予選で使用した青い龍艇だ。その中には、郁美と同じボート部のメンバーも何人か含まれていた。鼓手は男性で、力強い印象の人だった。
まだ結果も出てないうちから怖気付いてちゃいけない。私は鼓手、チームのムードメーカーなんだから、引っ張っていかなくちゃ。
拳にギュッと力を入れる。
暫くしてからスタッフに合図され、私たちも艇に乗り込んだ。赤の龍艇だ。赤は勝負の色。うん、いい予感がする。
艇に乗り込むと、太鼓を挟み、バチを握ると次々に乗り込むメンバーを見つめる。皆、多少の緊張はしているものの、いい表情をしてる。
「はい、行くよー!!」
ボートがレース開始位置に向かって漕ぎ進む。
みんなの持ってる力を最大限に発揮できるよう、サポートしたい。どうか、いいレースが出来ますように……
レース開始位置につき、もう1チームが着くまで待つ。
「チェストォォーー!!」
なんの前触れもなく声を上げた私に、みんなから一斉に声が上がる。
『伊佐高龍舟チーーーム!!』
みんなが好き。このチームが好き。だから、後悔したくない。頑張ろう。
ひとりひとりと目を合わせ、頷く。最後に海くんが、力強く頷いた。
最後の艇がレース開始位置に着いた。耳を澄ましてスターターの声に集中する。トクトクと心臓が鳴る音が聞こえて、身体全体に振動する。
もっと、神経を研ぎ澄ませるんだ……他の音が、何も聞こえなくなるぐらいに。
「パドルを上げー」
「構えてー!!」
惚れ惚れするぐらい皆の動きが揃って、鳥肌が立った。みんなの心が、ひとつになってる。
『みんなぁ、きばるがよー!!』
横断幕を手に叫んだ由美子と真紀に、皆が手を振って応える。招集場へと向かう途中、「美和子ちゃぁん!」と呼びかける声に後ろを振り向くと、おばあちゃんが手を振っていた。
「おばあちゃん!! 応援来てくれたんだ!!」
今朝、見送られた時は、年寄りには賑やかな場所に長時間いるのは辛いから応援には行けないって話してたのに。
「やっぱり美和子ちゃんがぁ舟漕ぐとこぉ見たくてよ。ここまで連れてきてもらったがよ」
みんなに先に行ってもらうようにしておばあちゃんに駆け寄り、手を握る。
「ありがとう、おばあちゃん。すっごいやる気出た! 私、がんばるから」
「おぉ、美和子ちゃぁん、きばれー!!」
おばあちゃんの力強い応援に微笑むと、手を振って招集場へと駆け出した。力が漲ってくるのを感じた。チームのメンバーだけじゃない。応援してくれてる人たちからも、私たちはパワーをもらってるんだ。
さぁ、きばってくぞ!!
今回の決勝戦でのレースは4艇で争い、私たちの艇は4レーンで予選1位と4位のチームに挟まれている。予選1位のチームが、艇に乗り込む。私たちが予選で使用した青い龍艇だ。その中には、郁美と同じボート部のメンバーも何人か含まれていた。鼓手は男性で、力強い印象の人だった。
まだ結果も出てないうちから怖気付いてちゃいけない。私は鼓手、チームのムードメーカーなんだから、引っ張っていかなくちゃ。
拳にギュッと力を入れる。
暫くしてからスタッフに合図され、私たちも艇に乗り込んだ。赤の龍艇だ。赤は勝負の色。うん、いい予感がする。
艇に乗り込むと、太鼓を挟み、バチを握ると次々に乗り込むメンバーを見つめる。皆、多少の緊張はしているものの、いい表情をしてる。
「はい、行くよー!!」
ボートがレース開始位置に向かって漕ぎ進む。
みんなの持ってる力を最大限に発揮できるよう、サポートしたい。どうか、いいレースが出来ますように……
レース開始位置につき、もう1チームが着くまで待つ。
「チェストォォーー!!」
なんの前触れもなく声を上げた私に、みんなから一斉に声が上がる。
『伊佐高龍舟チーーーム!!』
みんなが好き。このチームが好き。だから、後悔したくない。頑張ろう。
ひとりひとりと目を合わせ、頷く。最後に海くんが、力強く頷いた。
最後の艇がレース開始位置に着いた。耳を澄ましてスターターの声に集中する。トクトクと心臓が鳴る音が聞こえて、身体全体に振動する。
もっと、神経を研ぎ澄ませるんだ……他の音が、何も聞こえなくなるぐらいに。
「パドルを上げー」
「構えてー!!」
惚れ惚れするぐらい皆の動きが揃って、鳥肌が立った。みんなの心が、ひとつになってる。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件
石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」
隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。
紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。
「ねえ、もっと凄いことしようよ」
そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。
表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる