40 / 72
第七章 大会前夜
4
しおりを挟む
「ほれ、チームリーダー! 今日はいさドラゴンカップの前夜祭やけ、一言言わんね!」
勇気くんに急き立てられ、海くんはのろのろと立ち上がった。花火が上がり、海くんの照れた横顔が花火の赤に染められる。
「え、っと……いよいよ明日は大会だ。みんな、頼りないリーダーである俺についてきてくれて、本当にありがとう。俺は、このチームに出会えて良かったと思ってる。明日は悔いのない、いいレースにしよう」
勇気くんがすっくと立ち上がり、ペットボトルを高々と掲げる。
「ほいじゃ、『チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!』大会優勝を願って、かんぱーい!!」
『かんぱーい!!』
乾杯した後、海くんがムッとした表情を勇気くんに向ける。
「乾杯コールはチームリーダーの俺だろ」
「挨拶で花もたせたで、乾杯はペーサーの俺やろが!!」
言い合いする二人をよそに、郁美が手際よく箸と皿を人数分配り、声を掛けた。
「はい、そいじゃみんな食わんね! 早いもの勝ちやで、花火見惚れとったらなくなるがよ。あたしたちはぁ、色気より食い気ね」
「あぁっ、郁美! 俺ん分食うなよ!」
郁美の声を聞いて、慌てて海くんが声を掛けた。
「そんなん、知らんね!」
みんなの賑やかな笑い声に包まれるなか、色とりどりの花火が次々に打ち上がっていき、その大きさに、迫力に、息を呑む。
「綺麗……」
川を挟んで堤防の向こう側から打ち上げられた花火が川内川に映り込み、幻想的な美しさを魅せていた。
郁美が箸を動かす手を止めることなく、答えた。
「今年は7000発、花火打ち上げるってぇ話よ」
それから、私に皿を渡す。
「はい。ボーッとしてると食いっぱぐれるがよ」
皿の上にはたこ焼きや焼きそば、焼き鳥なんかが載せられていた。
「ありがとう、郁美。郁美って絶対いいお母さんになると思う」
「えぇー、それを言うならお嫁さんね!」
「フフッ……そうだね、ごめん」
突然勇気くんが立ち上がり、叫んだ。
「たーまやー!!」
花火の爆音よりも大きいその声にみんなが耳を塞ぐ。
「勇気ぃ、やぜらしかー!」
「花火といえば、これやろが。あ! じゃー、みんなで『チェストー!』ゆうが?」
それを聞いてみんなが「いいねー」「やろーやろー」と盛り上がる。
「海ぃ、お前もやるがよ!」
「俺はいい」
こういう時でも、やっぱり海くんはノリが悪い。私たちは花火が上がるたびに『チェストー!』と大声を上げ、盛り上がった。
「こぉら、あんたたちゃなんね、やぜろしかー! みんなの迷惑になるの分からんね!!」
そういえば、花火大会の合同補導あるって聞いてたっけ……
「うわっ、松元先生来たが! 逃げろー!!」
勇気くんが叫び、海くん除く男子全員が一斉に逃げ出した。シートに残った私たちは、それを見て大笑いした。
「せんせぇ、もっと早く走らんと追いつけんね!」
「男衆もきばれー!」
明日のドラゴンカップが、楽しみになってきた。
勇気くんに急き立てられ、海くんはのろのろと立ち上がった。花火が上がり、海くんの照れた横顔が花火の赤に染められる。
「え、っと……いよいよ明日は大会だ。みんな、頼りないリーダーである俺についてきてくれて、本当にありがとう。俺は、このチームに出会えて良かったと思ってる。明日は悔いのない、いいレースにしよう」
勇気くんがすっくと立ち上がり、ペットボトルを高々と掲げる。
「ほいじゃ、『チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!』大会優勝を願って、かんぱーい!!」
『かんぱーい!!』
乾杯した後、海くんがムッとした表情を勇気くんに向ける。
「乾杯コールはチームリーダーの俺だろ」
「挨拶で花もたせたで、乾杯はペーサーの俺やろが!!」
言い合いする二人をよそに、郁美が手際よく箸と皿を人数分配り、声を掛けた。
「はい、そいじゃみんな食わんね! 早いもの勝ちやで、花火見惚れとったらなくなるがよ。あたしたちはぁ、色気より食い気ね」
「あぁっ、郁美! 俺ん分食うなよ!」
郁美の声を聞いて、慌てて海くんが声を掛けた。
「そんなん、知らんね!」
みんなの賑やかな笑い声に包まれるなか、色とりどりの花火が次々に打ち上がっていき、その大きさに、迫力に、息を呑む。
「綺麗……」
川を挟んで堤防の向こう側から打ち上げられた花火が川内川に映り込み、幻想的な美しさを魅せていた。
郁美が箸を動かす手を止めることなく、答えた。
「今年は7000発、花火打ち上げるってぇ話よ」
それから、私に皿を渡す。
「はい。ボーッとしてると食いっぱぐれるがよ」
皿の上にはたこ焼きや焼きそば、焼き鳥なんかが載せられていた。
「ありがとう、郁美。郁美って絶対いいお母さんになると思う」
「えぇー、それを言うならお嫁さんね!」
「フフッ……そうだね、ごめん」
突然勇気くんが立ち上がり、叫んだ。
「たーまやー!!」
花火の爆音よりも大きいその声にみんなが耳を塞ぐ。
「勇気ぃ、やぜらしかー!」
「花火といえば、これやろが。あ! じゃー、みんなで『チェストー!』ゆうが?」
それを聞いてみんなが「いいねー」「やろーやろー」と盛り上がる。
「海ぃ、お前もやるがよ!」
「俺はいい」
こういう時でも、やっぱり海くんはノリが悪い。私たちは花火が上がるたびに『チェストー!』と大声を上げ、盛り上がった。
「こぉら、あんたたちゃなんね、やぜろしかー! みんなの迷惑になるの分からんね!!」
そういえば、花火大会の合同補導あるって聞いてたっけ……
「うわっ、松元先生来たが! 逃げろー!!」
勇気くんが叫び、海くん除く男子全員が一斉に逃げ出した。シートに残った私たちは、それを見て大笑いした。
「せんせぇ、もっと早く走らんと追いつけんね!」
「男衆もきばれー!」
明日のドラゴンカップが、楽しみになってきた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
ライト文芸
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる