27 / 72
第五章 初の実践練習
2
しおりを挟む
終業式を20日に終え、いよいよ夏休み! これからは、もっとドラゴンボートの練習も出来るはず……そう思っていたのに、なぜか私たちは学校に毎日来ていた。それというのも、課外授業があるからだ。課外授業は前半と後半に分かれて開催され、前半は23日から30日、後半は8月20日から27日まであり、9月3日の始業式を前に30日から既に授業日となっていて実力考査がある。
どうしてお母さんは東京の高校に入れずに鹿児島の高校に私を入れたのか不思議だったけど、おばあちゃんに面倒を見させるのと鹿児島の高校が勉強に力を入れてるせいもあったのだと気がついた。これじゃ、全然夏休みに入った気がしない。相変わらず部活組も練習が忙しく、なかなか揃っての練習が出来ずにいた。
24日からは、夏休みにも関わらず三者面談が始まった。
「あーっ、あたし初日に当たったがよ。わっぜ、めんどくさー!」
「あたしは26日!」
「えっ、あたしも!」
「あたしなんて、最終日の3日よ。はよ、終わらせたいが」
郁美と由美子、真紀、涼子はそれぞれの日程について話し合っていた。特別短期入学生である私にはもちろん三者面談なんてないけど、周りがそういう話題になっていると、なんだか私まで落ち着かない。それに、今日は鹿児島大学の学校説明会も開催されるし、いよいよ受験が近づいているのだとひしひしと感じさせられずにはいられない。
みんなは、もう進路は決めてるのかな……
「ねぇ、みんなは将来なんになるとか決めてるの?」
尋ねると、郁美が即答した。
「こうむいーん!」
それに続いて、由美子と真紀も声を合わせる。
『あたしもこうむいーん!!』
「えっ、そうなんだ……みんな、意外と手堅いとこ狙ってるんだね……」
驚きながらもそう答えると、みんなが爆笑する。
えっ、えっ、なんで!?
郁美が目尻の涙を拭いながら、説明する。
「ごめんごめん、専門学校のCMでそういうのがあってさ、『将来の夢は?』聞かれたら、『こうむいーん』答えるのがお約束なんよ。ほんとはあたし、児童教育学科のある短大に行こう思っちょるのよ」
すると由美子が手を挙げた。
「あたしは、ほんとに公務員狙い。役場か農協で働こう思っとるんよ」
「由美子ぉ、フフッ農協て! ばぁちゃんみたいがよ! JAじゃろがー!
あたしは東京か、せめて福岡の大学で都会の生活したいがよ」
由美子にツッコミ入れつつ、おしゃれに人一倍敏感な真紀が答える。
「あたしは鹿児島大学の共同獣医学部」
涼子が答えると、私以外のみんなが「涼子、わっぜすげー!!」と驚いていた。どうやら、かなりレベルが高いとこみたいだ。
「美和子は、考えてるね?」
郁美に聞かれて、答えることが出来なかった。
高校を卒業する頃には、お父さんの単身赴任期間を終えてこっちに帰ってくることになる。その為に、日本の教育に遅れないように補習校に通ったり、こうして夏休みを利用して高校に通ってるわけだけど、お父さんからはカナダの大学に留学してもいいと言われてるので、正直迷ってる。
「まだ……考え中かな」
曖昧な笑みを浮かべて答えながらも、頭の中でグルグル考えが巡る。
大学に行ったとして、卒業したら私は何がしたいんだろう。
どんな仕事に、就きたいんだろう……
どうしてお母さんは東京の高校に入れずに鹿児島の高校に私を入れたのか不思議だったけど、おばあちゃんに面倒を見させるのと鹿児島の高校が勉強に力を入れてるせいもあったのだと気がついた。これじゃ、全然夏休みに入った気がしない。相変わらず部活組も練習が忙しく、なかなか揃っての練習が出来ずにいた。
24日からは、夏休みにも関わらず三者面談が始まった。
「あーっ、あたし初日に当たったがよ。わっぜ、めんどくさー!」
「あたしは26日!」
「えっ、あたしも!」
「あたしなんて、最終日の3日よ。はよ、終わらせたいが」
郁美と由美子、真紀、涼子はそれぞれの日程について話し合っていた。特別短期入学生である私にはもちろん三者面談なんてないけど、周りがそういう話題になっていると、なんだか私まで落ち着かない。それに、今日は鹿児島大学の学校説明会も開催されるし、いよいよ受験が近づいているのだとひしひしと感じさせられずにはいられない。
みんなは、もう進路は決めてるのかな……
「ねぇ、みんなは将来なんになるとか決めてるの?」
尋ねると、郁美が即答した。
「こうむいーん!」
それに続いて、由美子と真紀も声を合わせる。
『あたしもこうむいーん!!』
「えっ、そうなんだ……みんな、意外と手堅いとこ狙ってるんだね……」
驚きながらもそう答えると、みんなが爆笑する。
えっ、えっ、なんで!?
郁美が目尻の涙を拭いながら、説明する。
「ごめんごめん、専門学校のCMでそういうのがあってさ、『将来の夢は?』聞かれたら、『こうむいーん』答えるのがお約束なんよ。ほんとはあたし、児童教育学科のある短大に行こう思っちょるのよ」
すると由美子が手を挙げた。
「あたしは、ほんとに公務員狙い。役場か農協で働こう思っとるんよ」
「由美子ぉ、フフッ農協て! ばぁちゃんみたいがよ! JAじゃろがー!
あたしは東京か、せめて福岡の大学で都会の生活したいがよ」
由美子にツッコミ入れつつ、おしゃれに人一倍敏感な真紀が答える。
「あたしは鹿児島大学の共同獣医学部」
涼子が答えると、私以外のみんなが「涼子、わっぜすげー!!」と驚いていた。どうやら、かなりレベルが高いとこみたいだ。
「美和子は、考えてるね?」
郁美に聞かれて、答えることが出来なかった。
高校を卒業する頃には、お父さんの単身赴任期間を終えてこっちに帰ってくることになる。その為に、日本の教育に遅れないように補習校に通ったり、こうして夏休みを利用して高校に通ってるわけだけど、お父さんからはカナダの大学に留学してもいいと言われてるので、正直迷ってる。
「まだ……考え中かな」
曖昧な笑みを浮かべて答えながらも、頭の中でグルグル考えが巡る。
大学に行ったとして、卒業したら私は何がしたいんだろう。
どんな仕事に、就きたいんだろう……
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件
石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」
隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。
紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。
「ねえ、もっと凄いことしようよ」
そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。
表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる