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第三章 文化祭
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翌日は文化祭が迫っているということで、3限が文化祭会場設営、午後は文化祭準備に充てられた。看板やメニュー、広告が着々と仕上がっていく中、進まないのが衣裳だった。
執事の衣裳については、結婚式用のジャケットを使うということで、父親や祖父から借りたり、親戚に尋ねたりして、なんとか人数分用意することが出来たんだけど、メイド服は必要な人数分を購入するには予算が足りないということで、家庭科部や縫製の得意な子に衣裳をお願いしていたんだけど、はかどっていなかった。
そこで、今日は女子全員がそれぞれに担当を割り振られ、メインのメイド服、エプロン、小物担当に分かれて針仕事をすることになった。
エプロンを左手に持ち、右手で針を持ちながらチクチク縫っていく。ミシンはメイド服の方で使われているから、手縫いしていかないといけない。
「わっぜ、てそいわー」
隣で縫い物してる郁美も肩を鳴らしながら、溜息を吐いた。私同様、縫い物は得意じゃないらしい。由美子が笑顔で郁美の肩を叩いた。
「あともう少し、きばりやんせ。ほら、歌でも歌うがよ。そいっ!」
すると、一斉に女子が歌い出した。
『うーんだもーこら いーけなもんな あーたいげんどん ちゃーわんなんだ
ひにひにさんどもあるもんせーば きれいなもんごわさー♪』
えっ……みんなこの歌、知ってるんだ。なんの歌だろ?
すると、男子も一緒に歌い出す。
『ちゃわんにつーいた むしじゃろかい めごなどけあるく むしじゃろかい
まこてげんねこっじゃ わっはっはー まこてげんねこっじゃ わっはっはー♪』
軽快なリズムで、聞いていて楽しくなってくるような歌だった。
歌い終わると、郁美が説明してくれた。
「こん歌は『茶碗蒸しの歌』いって、鹿児島県民なら誰でも知っとるちゅーぐらい有名な歌よ。これが歌えたら、美和子も鹿児島人よ!」
そうなんだ。そう言われたら、歌えるようになりたいかも……
歌の効果か分からないけど、それからは雰囲気が良くなって、みんなの針仕事が進んだ。
「出来たー!!」
なんとかその日中に、メイド服を作り終えることが出来た。明日は土曜日だけど、45分授業が4限まであり、そのうちの2時間が通常授業、残りが準備とリハーサルになる。
伊佐高でびっくりしたのは、進学校であるためか、毎週ではないけど土曜にも授業があるし、今は短縮授業だけど通常は50分授業で7限めまであって、しかも朝の課外授業まであることだ。しかも、『文武両道』をモットーとしていて、ラグビー部が花園に出場経験があったりと部活動も盛んだ。
カナダではプレゼンの準備が大変だったり、宿題が多かったりすることはあっても課外授業なんてないし、土日は必ず休みだし、祝日の他にもPAデーといって、先生たちが会議や事務をこなすための休みがしょっちゅうあるから、友達にそのことを話したら「えーっ、信じれられない! どれだけ勉強してるの!」と、予想通り驚かれた。
まだ伊佐高校に来てから5日めと思えないほど、濃厚で充実した時間を過ごせている気がする。
勇気くんが拳を突き上げて叫んだ。
「文化祭、成功させっぞー!」
『おぉー!!』
みんなと一緒に拳を突き上げ、それに応えた。
執事の衣裳については、結婚式用のジャケットを使うということで、父親や祖父から借りたり、親戚に尋ねたりして、なんとか人数分用意することが出来たんだけど、メイド服は必要な人数分を購入するには予算が足りないということで、家庭科部や縫製の得意な子に衣裳をお願いしていたんだけど、はかどっていなかった。
そこで、今日は女子全員がそれぞれに担当を割り振られ、メインのメイド服、エプロン、小物担当に分かれて針仕事をすることになった。
エプロンを左手に持ち、右手で針を持ちながらチクチク縫っていく。ミシンはメイド服の方で使われているから、手縫いしていかないといけない。
「わっぜ、てそいわー」
隣で縫い物してる郁美も肩を鳴らしながら、溜息を吐いた。私同様、縫い物は得意じゃないらしい。由美子が笑顔で郁美の肩を叩いた。
「あともう少し、きばりやんせ。ほら、歌でも歌うがよ。そいっ!」
すると、一斉に女子が歌い出した。
『うーんだもーこら いーけなもんな あーたいげんどん ちゃーわんなんだ
ひにひにさんどもあるもんせーば きれいなもんごわさー♪』
えっ……みんなこの歌、知ってるんだ。なんの歌だろ?
すると、男子も一緒に歌い出す。
『ちゃわんにつーいた むしじゃろかい めごなどけあるく むしじゃろかい
まこてげんねこっじゃ わっはっはー まこてげんねこっじゃ わっはっはー♪』
軽快なリズムで、聞いていて楽しくなってくるような歌だった。
歌い終わると、郁美が説明してくれた。
「こん歌は『茶碗蒸しの歌』いって、鹿児島県民なら誰でも知っとるちゅーぐらい有名な歌よ。これが歌えたら、美和子も鹿児島人よ!」
そうなんだ。そう言われたら、歌えるようになりたいかも……
歌の効果か分からないけど、それからは雰囲気が良くなって、みんなの針仕事が進んだ。
「出来たー!!」
なんとかその日中に、メイド服を作り終えることが出来た。明日は土曜日だけど、45分授業が4限まであり、そのうちの2時間が通常授業、残りが準備とリハーサルになる。
伊佐高でびっくりしたのは、進学校であるためか、毎週ではないけど土曜にも授業があるし、今は短縮授業だけど通常は50分授業で7限めまであって、しかも朝の課外授業まであることだ。しかも、『文武両道』をモットーとしていて、ラグビー部が花園に出場経験があったりと部活動も盛んだ。
カナダではプレゼンの準備が大変だったり、宿題が多かったりすることはあっても課外授業なんてないし、土日は必ず休みだし、祝日の他にもPAデーといって、先生たちが会議や事務をこなすための休みがしょっちゅうあるから、友達にそのことを話したら「えーっ、信じれられない! どれだけ勉強してるの!」と、予想通り驚かれた。
まだ伊佐高校に来てから5日めと思えないほど、濃厚で充実した時間を過ごせている気がする。
勇気くんが拳を突き上げて叫んだ。
「文化祭、成功させっぞー!」
『おぉー!!』
みんなと一緒に拳を突き上げ、それに応えた。
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