チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

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第二章 ドラゴンボートチーム結成

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 歩きの子よりも自転車の子の方が多く、みんなそれぞれの家に向かって走る。殆どが伊佐市内から通学してるけど、中には霧島市から通学してる子もいて、車でも1時間以上かかるらしい。その子は、親に迎えに来てもらうとのことで、それまで海くんの家で待っていることになった。

「美和子ん家は、忠元公園の近くね?」
「うん、そう」
「あっこは、桜の名所で有名がよ。毎年さくら祭りも開かれるけー」
「へぇ、そうなんだぁ」
「それでぇ……」

 郁美が話を続けようとすると、勇気くんがそれを遮る。

「郁美ぃ、夜道はぁ危ねーで送ってくー話だったろが」
「あ、そうだった。忠元公園ゆうたら、つい桜のこと思い出してしまって。うん、あたしたちがぁ、送って行くけー」
「えっ、いいよぉ! 大丈夫、自転車だし!」

 手を振ると、郁美に背中を押された。

「遠慮せんでいいけ! ほら行こ!」

 高校を出てさっき行ったコンビニの前を通り過ぎて警察署のある通りを左折する。ガソリンスタンドや薬局を通り過ぎ、遠くに教会の十字架を見ながら真っ直ぐ進んで行く。伊佐市役所の立派な建物のひとつ手前の道を右折し、次の大きな信号を目指す。そこを左に曲がると国道268号線の下を潜る。忠元ハイツのある通りに入ると、樹々が鬱蒼と広がっている。この先には諏訪神社があり、その向こうには大口明光学園高校がある。距離としては1番近いのだけど、ここは私立の中高一貫のミッション系の女子校であったため、伊佐高校に通うことになったのだった。

 この辺りになると国道からも外れるせいか、外灯がほとんどなく心細くなる。自転車を漕ぎながら見上げると、樹々の隙間にはたくさんの星が瞬いていた。

「うわー、綺麗!!」

 歓声をあげると、郁美に笑われた。

「こんぐらいの星、普通がよ。菱刈の方に行けばもっと凄いの見られるけ、美和子さ見せてあげたいがよ」
「おぉ、楠本渓流自然公園が。あっこは、日本一の星空に選ばれたぐらいだでな。俺ら毎年キャンプ行くけ、美和子も今年は一緒に行くが!」
「行きたい!」

 文化祭にドラゴンボート大会にキャンプ……伊佐での夏が、どんどん楽しみになってきた。
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