9 / 72
第二章 ドラゴンボートチーム結成
5
しおりを挟む
歩きの子よりも自転車の子の方が多く、みんなそれぞれの家に向かって走る。殆どが伊佐市内から通学してるけど、中には霧島市から通学してる子もいて、車でも1時間以上かかるらしい。その子は、親に迎えに来てもらうとのことで、それまで海くんの家で待っていることになった。
「美和子ん家は、忠元公園の近くね?」
「うん、そう」
「あっこは、桜の名所で有名がよ。毎年さくら祭りも開かれるけー」
「へぇ、そうなんだぁ」
「それでぇ……」
郁美が話を続けようとすると、勇気くんがそれを遮る。
「郁美ぃ、夜道はぁ危ねーで送ってくー話だったろが」
「あ、そうだった。忠元公園ゆうたら、つい桜のこと思い出してしまって。うん、あたしたちがぁ、送って行くけー」
「えっ、いいよぉ! 大丈夫、自転車だし!」
手を振ると、郁美に背中を押された。
「遠慮せんでいいけ! ほら行こ!」
高校を出てさっき行ったコンビニの前を通り過ぎて警察署のある通りを左折する。ガソリンスタンドや薬局を通り過ぎ、遠くに教会の十字架を見ながら真っ直ぐ進んで行く。伊佐市役所の立派な建物のひとつ手前の道を右折し、次の大きな信号を目指す。そこを左に曲がると国道268号線の下を潜る。忠元ハイツのある通りに入ると、樹々が鬱蒼と広がっている。この先には諏訪神社があり、その向こうには大口明光学園高校がある。距離としては1番近いのだけど、ここは私立の中高一貫のミッション系の女子校であったため、伊佐高校に通うことになったのだった。
この辺りになると国道からも外れるせいか、外灯がほとんどなく心細くなる。自転車を漕ぎながら見上げると、樹々の隙間にはたくさんの星が瞬いていた。
「うわー、綺麗!!」
歓声をあげると、郁美に笑われた。
「こんぐらいの星、普通がよ。菱刈の方に行けばもっと凄いの見られるけ、美和子さ見せてあげたいがよ」
「おぉ、楠本渓流自然公園が。あっこは、日本一の星空に選ばれたぐらいだでな。俺ら毎年キャンプ行くけ、美和子も今年は一緒に行くが!」
「行きたい!」
文化祭にドラゴンボート大会にキャンプ……伊佐での夏が、どんどん楽しみになってきた。
「美和子ん家は、忠元公園の近くね?」
「うん、そう」
「あっこは、桜の名所で有名がよ。毎年さくら祭りも開かれるけー」
「へぇ、そうなんだぁ」
「それでぇ……」
郁美が話を続けようとすると、勇気くんがそれを遮る。
「郁美ぃ、夜道はぁ危ねーで送ってくー話だったろが」
「あ、そうだった。忠元公園ゆうたら、つい桜のこと思い出してしまって。うん、あたしたちがぁ、送って行くけー」
「えっ、いいよぉ! 大丈夫、自転車だし!」
手を振ると、郁美に背中を押された。
「遠慮せんでいいけ! ほら行こ!」
高校を出てさっき行ったコンビニの前を通り過ぎて警察署のある通りを左折する。ガソリンスタンドや薬局を通り過ぎ、遠くに教会の十字架を見ながら真っ直ぐ進んで行く。伊佐市役所の立派な建物のひとつ手前の道を右折し、次の大きな信号を目指す。そこを左に曲がると国道268号線の下を潜る。忠元ハイツのある通りに入ると、樹々が鬱蒼と広がっている。この先には諏訪神社があり、その向こうには大口明光学園高校がある。距離としては1番近いのだけど、ここは私立の中高一貫のミッション系の女子校であったため、伊佐高校に通うことになったのだった。
この辺りになると国道からも外れるせいか、外灯がほとんどなく心細くなる。自転車を漕ぎながら見上げると、樹々の隙間にはたくさんの星が瞬いていた。
「うわー、綺麗!!」
歓声をあげると、郁美に笑われた。
「こんぐらいの星、普通がよ。菱刈の方に行けばもっと凄いの見られるけ、美和子さ見せてあげたいがよ」
「おぉ、楠本渓流自然公園が。あっこは、日本一の星空に選ばれたぐらいだでな。俺ら毎年キャンプ行くけ、美和子も今年は一緒に行くが!」
「行きたい!」
文化祭にドラゴンボート大会にキャンプ……伊佐での夏が、どんどん楽しみになってきた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件
石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」
隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。
紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。
「ねえ、もっと凄いことしようよ」
そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。
表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。


クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる