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健気なプリンセスは嫉妬した秘密の恋人である教育係にお仕置きされて、愛を知る
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アルフレッドはフリンツ王国の騎士団を率いる団長で、彼の父もまた騎士団長だったこともあり、ずっと城内で育った。
そのため、幼い頃は兄妹のように仲が良かったし、大人になってプリンセスと騎士団長という立場になってからも、エレノアはアルフレッドに絶大な信頼を寄せていた。ジェルヴェと恋人であることは誰にも秘密だったが、アルフレッドにだけはふたりの関係を明かしたぐらいだ。
最近公務で忙しくしているジェルヴェを労いたいと思い、エレノアはマカロンを作って渡そうとしたが、なかなかうまく作れなかった。そこでふたりの関係を知っていて料理が得意なアルフレッドに密かに頼んで、教えてもらうことにしたのだった。
だが、アルフレッドと一緒に作るときには成功するものの、いざ一人で作ろうとするとうまくいかない。エレノアはアルフレッドと時間が合う限り何度も練習を重ね、マカロン作りに励んだ。
そして昨日。
「まっ、これなら合格だな」
アルフレッドがマカロンを一口頬張り、頷く。
「ほんと!? 嬉しいっ」
これでようやく、ジェルに渡せる……
アルフレッドが、嬉しそうに微笑むエレノアの頭をポンポンと撫でる。
「最初はどうなるかと思ったけど、よくここまで頑張ったな。あいつに……渡すんだろ?」
アルフレッドは少し眉を寄せ、苦しげに微笑んだ。
騎士団長である自分が、プリンセスとの恋など叶うはずないと恋心をずっと秘めてきたアルフレッドは、エレノアから教育係であるジェルヴェと恋人だと打ち明けられ、激しく動揺した。そこで、国王に密告してジェルヴェを失脚させようと策略した。
だが、その策略をジェルヴェに気づかれ、更にアルフレッドがエレノアに気持ちがあることを指摘され、決闘を申し込まれた。騎士団長である自分が負けるはずがない。自分こそがエレノアに相応しいと信じて疑わなかったアルフレッドだったが、激しい決闘の末、ジェルヴェに剣を奪われ、敗北した。
アルフレッドは完全に自分の負けだと認め、エレノアの幸せを思い、身を引くことを決意したのだった……エレノアに、自分の想いを打ち明けることなく。
アルフレッドの表情に気づかず、エレノアはジェルヴェを想って頬を染めた。
「うん。ありがとう、アル」
それから、エレノアは出来たばかりのマカロンを持って騎士宿舎のキッチンを後にしたのだった。
あの後、部屋に戻ってマカロンのラッピングをして、見つからないようにクローゼットに隠したあと、ジェルの帰りを待ってたんだっけ……
深夜になってジェルが部屋に戻ってきたものの、どことなく様子がおかしかった。
「ジェル、どうしたんですか?」
「何が、ですか?」
「……うまく言えないんですが、いつもと雰囲気が違う気がして」
激務で疲れてるせいなのかな。執務と教育係をこなしてるんだから、大変だよね……
すると、ジェルヴェがエレノアに鼻先まで触れる距離まで近づく。
「プリンセス。私に何か……隠し事をしていませんか?」
途端に、エレノアの鼓動がドキッとはね、冷や汗が伝う。
もしかして、マカロンのこと気づかれちゃったのかな。せっかく驚かそうと思ってたのに……
「ぁ、あの……ジェル、黙っていてごめんなさい。実は、私……」
「聞きたくありません!」
突然、ジェルヴェの細いけれど逞しい腕がグッと後ろから回り、エレノアの口に布をあてがった。
「んんっ!」
エレノアが息を吸った途端、意識を手放し、躰から力が抜ける。その華奢な躰を、しっかりとジェルヴェが支えながら呟く。
「貴女がいけないのですよ……」
それから、気づいたら私、ここにいたんだ……
そのため、幼い頃は兄妹のように仲が良かったし、大人になってプリンセスと騎士団長という立場になってからも、エレノアはアルフレッドに絶大な信頼を寄せていた。ジェルヴェと恋人であることは誰にも秘密だったが、アルフレッドにだけはふたりの関係を明かしたぐらいだ。
最近公務で忙しくしているジェルヴェを労いたいと思い、エレノアはマカロンを作って渡そうとしたが、なかなかうまく作れなかった。そこでふたりの関係を知っていて料理が得意なアルフレッドに密かに頼んで、教えてもらうことにしたのだった。
だが、アルフレッドと一緒に作るときには成功するものの、いざ一人で作ろうとするとうまくいかない。エレノアはアルフレッドと時間が合う限り何度も練習を重ね、マカロン作りに励んだ。
そして昨日。
「まっ、これなら合格だな」
アルフレッドがマカロンを一口頬張り、頷く。
「ほんと!? 嬉しいっ」
これでようやく、ジェルに渡せる……
アルフレッドが、嬉しそうに微笑むエレノアの頭をポンポンと撫でる。
「最初はどうなるかと思ったけど、よくここまで頑張ったな。あいつに……渡すんだろ?」
アルフレッドは少し眉を寄せ、苦しげに微笑んだ。
騎士団長である自分が、プリンセスとの恋など叶うはずないと恋心をずっと秘めてきたアルフレッドは、エレノアから教育係であるジェルヴェと恋人だと打ち明けられ、激しく動揺した。そこで、国王に密告してジェルヴェを失脚させようと策略した。
だが、その策略をジェルヴェに気づかれ、更にアルフレッドがエレノアに気持ちがあることを指摘され、決闘を申し込まれた。騎士団長である自分が負けるはずがない。自分こそがエレノアに相応しいと信じて疑わなかったアルフレッドだったが、激しい決闘の末、ジェルヴェに剣を奪われ、敗北した。
アルフレッドは完全に自分の負けだと認め、エレノアの幸せを思い、身を引くことを決意したのだった……エレノアに、自分の想いを打ち明けることなく。
アルフレッドの表情に気づかず、エレノアはジェルヴェを想って頬を染めた。
「うん。ありがとう、アル」
それから、エレノアは出来たばかりのマカロンを持って騎士宿舎のキッチンを後にしたのだった。
あの後、部屋に戻ってマカロンのラッピングをして、見つからないようにクローゼットに隠したあと、ジェルの帰りを待ってたんだっけ……
深夜になってジェルが部屋に戻ってきたものの、どことなく様子がおかしかった。
「ジェル、どうしたんですか?」
「何が、ですか?」
「……うまく言えないんですが、いつもと雰囲気が違う気がして」
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すると、ジェルヴェがエレノアに鼻先まで触れる距離まで近づく。
「プリンセス。私に何か……隠し事をしていませんか?」
途端に、エレノアの鼓動がドキッとはね、冷や汗が伝う。
もしかして、マカロンのこと気づかれちゃったのかな。せっかく驚かそうと思ってたのに……
「ぁ、あの……ジェル、黙っていてごめんなさい。実は、私……」
「聞きたくありません!」
突然、ジェルヴェの細いけれど逞しい腕がグッと後ろから回り、エレノアの口に布をあてがった。
「んんっ!」
エレノアが息を吸った途端、意識を手放し、躰から力が抜ける。その華奢な躰を、しっかりとジェルヴェが支えながら呟く。
「貴女がいけないのですよ……」
それから、気づいたら私、ここにいたんだ……
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