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健気なプリンセスは嫉妬した秘密の恋人である教育係にお仕置きされて、愛を知る
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「んっ……」
肌に直接触れるマットレスの冷たさと手首と足首に感じる違和感で、エレノアは意識を醒した。
ここ、は……?
まだぼぉーっとする頭でぼんやりと周りを見渡す。
剥き出しの石壁には飾りカーテンや絵画など何もなく無機質で、置かれているのはベッドのみ。明かりをとるために必要なはずの窓すらなく、簡易なベッドの側には燭台が置かれ、蝋燭が僅かなオレンジの光で小さな部屋を灯していた。
ここが城内であるのか、フリンツ王国内であるかすら分からない。
どうして、私はこんなところに寝かせられているの?
起き上がろうとして、エレノアは呆然とした。
「な、に、これ……」
一糸纏わぬ姿でベッドに寝かされ、両手首、更に両足首も紐でベッドに固定されている。頭が混乱し、叫び出しそうになる中、それでもなんとか逃げ出さなくてはと冷静に頭を働かせ、力を込めて紐を引っ張っるものの、びくともしない。
その時、扉がギギーッと開く音がして、心臓がバクンと飛び跳ねる。
「だ、れ?」
震える声で尋ねるものの、掠れて音にならない。
自分は恐ろしい目に遭わされるのだろうか。無理やり躰を奪われるのだろうかと思うと、恐怖で喉が張り付き、焼けついた。
扉が開いて、姿を現したのは……エレノアのよく知る人物だった。
肩まで伸ばされた紫がかった美しい黒髪を揺らし、『ウルフアイズ』とも呼ばれる魅惑的な深い琥珀色の瞳が細められた。一部の隙も見せることのない真っ黒なスタンドカラーのかっちりとしたフロックコートという出立とは対照的な溢れ出る色香を漂わせ、細く長い指がエレノアの顎を捕らえる。
「お目覚めのようですね、プリンセス」
「ジェル!!」
ジェルヴェはエレノアの父である国王の側近であり、エレノアの教育係でもある。
そして……ようやく想いが通じ合った恋人、でもあった。ただ、この恋は秘められた禁断のものだったが。プリンセスと教育係の恋など、絶対に認められない。
恋人を目の前にして安堵の気持ちが広がるものの、すぐに疑問が浮かび上がった。
ジェルが私を助けに来てくれたの? それならなぜ、ジェルはこんなに普段と変わらない優美な物腰でいられるの?
「ジェ、ル……これは一体……?」
エレノアは当惑しきった表情を見せた。
「ここは時計台の頂上階にある、篭城のための部屋です。ここなら、貴女を誰の目にも触れさせずに思う存分、躾けて差し上げることが出来ますからね」
そう言ってジェルヴェは、妖艶な笑みを浮かべた。
「し、つけ?」
「私が何も知らないとでも?
……最近プリンセスは、騎士団長であるアルフレッド殿と親しいようですね」
そう言って顔を逸らすと、一瞬苦痛の表情を浮かべた。だが、すぐにエレノアの方を振り返り、余裕の笑みを浮かべる。
「プリンセスには再教育が必要かと思いまして……
貴女が誰のものか、はっきりと分からせて差し上げますよ」
エレノアの顔が蒼白になる。
「そ、んな……」
誤解、なのに……
肌に直接触れるマットレスの冷たさと手首と足首に感じる違和感で、エレノアは意識を醒した。
ここ、は……?
まだぼぉーっとする頭でぼんやりと周りを見渡す。
剥き出しの石壁には飾りカーテンや絵画など何もなく無機質で、置かれているのはベッドのみ。明かりをとるために必要なはずの窓すらなく、簡易なベッドの側には燭台が置かれ、蝋燭が僅かなオレンジの光で小さな部屋を灯していた。
ここが城内であるのか、フリンツ王国内であるかすら分からない。
どうして、私はこんなところに寝かせられているの?
起き上がろうとして、エレノアは呆然とした。
「な、に、これ……」
一糸纏わぬ姿でベッドに寝かされ、両手首、更に両足首も紐でベッドに固定されている。頭が混乱し、叫び出しそうになる中、それでもなんとか逃げ出さなくてはと冷静に頭を働かせ、力を込めて紐を引っ張っるものの、びくともしない。
その時、扉がギギーッと開く音がして、心臓がバクンと飛び跳ねる。
「だ、れ?」
震える声で尋ねるものの、掠れて音にならない。
自分は恐ろしい目に遭わされるのだろうか。無理やり躰を奪われるのだろうかと思うと、恐怖で喉が張り付き、焼けついた。
扉が開いて、姿を現したのは……エレノアのよく知る人物だった。
肩まで伸ばされた紫がかった美しい黒髪を揺らし、『ウルフアイズ』とも呼ばれる魅惑的な深い琥珀色の瞳が細められた。一部の隙も見せることのない真っ黒なスタンドカラーのかっちりとしたフロックコートという出立とは対照的な溢れ出る色香を漂わせ、細く長い指がエレノアの顎を捕らえる。
「お目覚めのようですね、プリンセス」
「ジェル!!」
ジェルヴェはエレノアの父である国王の側近であり、エレノアの教育係でもある。
そして……ようやく想いが通じ合った恋人、でもあった。ただ、この恋は秘められた禁断のものだったが。プリンセスと教育係の恋など、絶対に認められない。
恋人を目の前にして安堵の気持ちが広がるものの、すぐに疑問が浮かび上がった。
ジェルが私を助けに来てくれたの? それならなぜ、ジェルはこんなに普段と変わらない優美な物腰でいられるの?
「ジェ、ル……これは一体……?」
エレノアは当惑しきった表情を見せた。
「ここは時計台の頂上階にある、篭城のための部屋です。ここなら、貴女を誰の目にも触れさせずに思う存分、躾けて差し上げることが出来ますからね」
そう言ってジェルヴェは、妖艶な笑みを浮かべた。
「し、つけ?」
「私が何も知らないとでも?
……最近プリンセスは、騎士団長であるアルフレッド殿と親しいようですね」
そう言って顔を逸らすと、一瞬苦痛の表情を浮かべた。だが、すぐにエレノアの方を振り返り、余裕の笑みを浮かべる。
「プリンセスには再教育が必要かと思いまして……
貴女が誰のものか、はっきりと分からせて差し上げますよ」
エレノアの顔が蒼白になる。
「そ、んな……」
誤解、なのに……
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