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変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
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授業が終わり、帰り支度をしていますと、スチュワートがハルコに話しかけているのが聞こえましたの。
「ハルコ、今日僕の部屋に来ないか? 外国から取り寄せた美味しいお菓子があるんだ」
「えぇっ、嬉しい! じゃあ、後で行くね」
なんですって!? ありえませんわ!!
「ハルコ! レディーがおひとりで殿方の部屋を訪ねるだなんて、破廉恥ですわ。いったい、何を考えていらっしゃいますの!?」
ハルコは分からないという表情を浮かべました。
「えっ、スチュワートはただの友達だよ。ねっ?」
あぁ、この子……阿呆の子ですわ。
すると、スチュワートが苦笑いしました。
「えーっと、僕は、君に結構アプローチしてたつもりだったんだけどな……」
「えっ、スチュワート、何か言った?」
スチュワートの声量は先ほどまでとなんら変わっておりませんのに、なぜ急に耳が遠くなったのか、理解に苦しみますわ。彼女の耳にオリーブオイルを垂らしてガーゼで耳栓をし、翌日耳掃除をして差し上げた方がよろしいのかしら。
スチュワートはガックリと項垂れながらも、健気に微笑まれました。
「なんでも、ないよ……」
その後もハルコはスチュワートだけでなく、ロナルドのクリケットの試合の応援に行ったり、生徒会役員でもないのにセルベスのお手伝いを積極的にしたりと、それぞれの殿方に対して気のあるそぶりを続けまくりましたの。
そうして気がつけば、保険医のアーロン先生や1学年下のアイドル的存在のベンジャミン、10年ぶりに再会したという幼馴染みのカーティスと、ハルコに好意を抱く殿方はあっというまに拡大していきましたわ。こんなことって、ありますの!?
スチュワートがハルコに伝えます。
「ハルコみたいな女性は初めてなんだ。僕にとって、君は特別だ」
ロナルドがハルコに告白します。
「お前のことがほっとけねーんだ!」
セルベスがハルコに頬を染めます。
「勉強以外のことが頭を支配するなんて、今までなかった」
アーロン先生がハルコに迫ります。
「教師が生徒に対して特別な感情をもっちゃいけないって分かってるのに、君を目の前にすると暴走しそうだよ」
ベンジャミンがハルコに抱きつきます。
「ねぇ、年下とはいえ、僕だって男だって分かってます? 自覚、してくださいね?」
カーティスがハルコに照れ臭そうに笑いかけます。
「やっぱハルコといると、一番落ち着くわ。お前の隣にずっといさせてくれ……」
そんな殿方の会話を聞き、私の焦れ焦れした気持ちが大爆発し、ハルコに詰め寄りましたの。
「いったいハルコは、どの殿方が好きなんですの?」
ハルコが惚けた表情で見つめ返します。
「えっ、なんのこと?」
「ですから、スチュワート、ロナルド、セルベス、アーロン先生、ベンジャミン、カーティスのことですわ! お分かりでしょう? 皆様、ハルコのことが好きでアピールしてますのよ。気のあるそぶりばかり見せずに、はっきりしたらどうなんですの?」
すると、ハルコが笑い出しました。
「アハハ、みんなが私を好き!? そんなこと、あるわけないじゃない! 私なんて可愛くないし、なんの取り柄もないし。ジョセフィーンみたいに綺麗だったらよかったのに、って思うよ」
鈍感なのか、天然なのか、それとも計算高いのか……過ぎた謙遜は人をイラつかせると、ハルコは知らないようですわね。
えぇ、私がハルコよりも美しく、レディーとしての知識や教養もあって、ダンスが得意なことはわかっていますわ。ハルコは頭はいいけれど、それ以外は全て平均以下で、私服がダサいことも十分分かっていますわ。
分からないのは、どうしてハルコがこれほどまでに殿方の、しかも器量の優れた殿方ばかりの気を、これほどまでに引けるのかということですわ。
この世界に、違和感しかありませんわ!!
「ハルコ、貴女ってどれだけあざといんですの!! そうやって、殿方の気持ちを弄んで楽しいんですの!?」
そこへ、スチュワート、ロナルド、セルベス、アーロン先生、ベンジャミン、カーティスがハルコの元へと駆け寄り、申し合わせたかのように一斉に叫びました。
『ハルコを虐めるな!!』
「ジョセフィーン、君がそんな意地の悪い女性だったなんてがっかりだよ」
「お前、悪女だな」
「君はもっと分別のある女性だと思っていたのだが」
「ジョセフィーン、女性の嫉妬は醜いよ」
「あーぁ、先輩にはがっかりです」
「ハルコは俺が守る。もう、近づくな!」
ちょ、なんですの……!?
すっかり私は、彼らに悪の令嬢というレッテルを貼られてしまいました。
……私は知らなかったのです。私がいるのが乙女ゲームという世界で、主人公のハルコを取り巻く男性キャラとの恋愛シミュレーションゲームにおいて、私が悪役令嬢というキャラだということを。
「ハルコ、今日僕の部屋に来ないか? 外国から取り寄せた美味しいお菓子があるんだ」
「えぇっ、嬉しい! じゃあ、後で行くね」
なんですって!? ありえませんわ!!
「ハルコ! レディーがおひとりで殿方の部屋を訪ねるだなんて、破廉恥ですわ。いったい、何を考えていらっしゃいますの!?」
ハルコは分からないという表情を浮かべました。
「えっ、スチュワートはただの友達だよ。ねっ?」
あぁ、この子……阿呆の子ですわ。
すると、スチュワートが苦笑いしました。
「えーっと、僕は、君に結構アプローチしてたつもりだったんだけどな……」
「えっ、スチュワート、何か言った?」
スチュワートの声量は先ほどまでとなんら変わっておりませんのに、なぜ急に耳が遠くなったのか、理解に苦しみますわ。彼女の耳にオリーブオイルを垂らしてガーゼで耳栓をし、翌日耳掃除をして差し上げた方がよろしいのかしら。
スチュワートはガックリと項垂れながらも、健気に微笑まれました。
「なんでも、ないよ……」
その後もハルコはスチュワートだけでなく、ロナルドのクリケットの試合の応援に行ったり、生徒会役員でもないのにセルベスのお手伝いを積極的にしたりと、それぞれの殿方に対して気のあるそぶりを続けまくりましたの。
そうして気がつけば、保険医のアーロン先生や1学年下のアイドル的存在のベンジャミン、10年ぶりに再会したという幼馴染みのカーティスと、ハルコに好意を抱く殿方はあっというまに拡大していきましたわ。こんなことって、ありますの!?
スチュワートがハルコに伝えます。
「ハルコみたいな女性は初めてなんだ。僕にとって、君は特別だ」
ロナルドがハルコに告白します。
「お前のことがほっとけねーんだ!」
セルベスがハルコに頬を染めます。
「勉強以外のことが頭を支配するなんて、今までなかった」
アーロン先生がハルコに迫ります。
「教師が生徒に対して特別な感情をもっちゃいけないって分かってるのに、君を目の前にすると暴走しそうだよ」
ベンジャミンがハルコに抱きつきます。
「ねぇ、年下とはいえ、僕だって男だって分かってます? 自覚、してくださいね?」
カーティスがハルコに照れ臭そうに笑いかけます。
「やっぱハルコといると、一番落ち着くわ。お前の隣にずっといさせてくれ……」
そんな殿方の会話を聞き、私の焦れ焦れした気持ちが大爆発し、ハルコに詰め寄りましたの。
「いったいハルコは、どの殿方が好きなんですの?」
ハルコが惚けた表情で見つめ返します。
「えっ、なんのこと?」
「ですから、スチュワート、ロナルド、セルベス、アーロン先生、ベンジャミン、カーティスのことですわ! お分かりでしょう? 皆様、ハルコのことが好きでアピールしてますのよ。気のあるそぶりばかり見せずに、はっきりしたらどうなんですの?」
すると、ハルコが笑い出しました。
「アハハ、みんなが私を好き!? そんなこと、あるわけないじゃない! 私なんて可愛くないし、なんの取り柄もないし。ジョセフィーンみたいに綺麗だったらよかったのに、って思うよ」
鈍感なのか、天然なのか、それとも計算高いのか……過ぎた謙遜は人をイラつかせると、ハルコは知らないようですわね。
えぇ、私がハルコよりも美しく、レディーとしての知識や教養もあって、ダンスが得意なことはわかっていますわ。ハルコは頭はいいけれど、それ以外は全て平均以下で、私服がダサいことも十分分かっていますわ。
分からないのは、どうしてハルコがこれほどまでに殿方の、しかも器量の優れた殿方ばかりの気を、これほどまでに引けるのかということですわ。
この世界に、違和感しかありませんわ!!
「ハルコ、貴女ってどれだけあざといんですの!! そうやって、殿方の気持ちを弄んで楽しいんですの!?」
そこへ、スチュワート、ロナルド、セルベス、アーロン先生、ベンジャミン、カーティスがハルコの元へと駆け寄り、申し合わせたかのように一斉に叫びました。
『ハルコを虐めるな!!』
「ジョセフィーン、君がそんな意地の悪い女性だったなんてがっかりだよ」
「お前、悪女だな」
「君はもっと分別のある女性だと思っていたのだが」
「ジョセフィーン、女性の嫉妬は醜いよ」
「あーぁ、先輩にはがっかりです」
「ハルコは俺が守る。もう、近づくな!」
ちょ、なんですの……!?
すっかり私は、彼らに悪の令嬢というレッテルを貼られてしまいました。
……私は知らなかったのです。私がいるのが乙女ゲームという世界で、主人公のハルコを取り巻く男性キャラとの恋愛シミュレーションゲームにおいて、私が悪役令嬢というキャラだということを。
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