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変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
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本日、上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、転入生が入ってきましたの。
先生がご紹介してくださいます。
「皆さん、今日からこの学院に転入されましたハルコです。さぁ、どうぞお入りになって」
ハルコ、ですって?
私は、眉を潜めました。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、とても変わった……いえ、エキゾチックなお名前ですわね。
扉が開き、ハルコが入ってきましたわ。
なんてことでしょう。肩より短いピンクの髪だなど! ブロンド、プラチナブロンド、ブルネット、レッド、ブラウン、ブラックと、髪色は人それぞれですけれど、ピンクだなんて、まともな人間の髪色とは思えませんわ。
しかも、長く美しい髪こそがレディーですのに、こんな短い髪だなんて、少年みたいですわ。庶民の間では、これが流行っているのでしょうか。
ま、まぁいいですわ。髪は人それぞれですものね。もしかしたら、何かのご病気で髪の色が奇妙な色に変化してしまったのかもしれませんし、そのせいで庶民たちに虐められて髪を切られてしまったのかもしれませんから、触れないでおきますわ。
先生が説明いたします。
「ハルコは庶民でありながらも優秀であることから特別枠の特待生として、入ってきたのですよ」
確かにこのロイヤル学院には、庶民のための特別枠が設けられています。けれど、それは名ばかりの制度でした。今まで適用されたことはなく、この学院創設以来の初の特待生を迎え入れることになるのです。
しかも、通常であれば特待生であれば皆と同じく9月に入学するはずですのに、こんな時期外れに転入してくるなど、裏から手が回されているとしか思えませんわ。
いかにも素朴で純情そう、悪く言えば田舎もの丸出しの顔立ちのハルコが、ぴょこんとお辞儀をいたしました。
「ハルコです。皆さん、どうぞよろしく」
ん、なんですの?
ハルコの言い方が気に障ります。
「では、ハルコはスチュワートの隣に座ってくださいね」
「はい」
ハルコはスチュワートの席まで行くと、にっこりと微笑みました。
「スチュワート、よろしくね」
ここは、同じレディーとして放っておけなくてよ。
「ハルコ、『よろしくね』じゃなくってよ。スチュワートはハリアット公爵の爵士であるご息男様ですのよ。普通でしたら、貴女など御目通りすら叶わない存在なのです。庶民だからと言って、そんなお下品なお言葉遣いがこのロイヤル学院で許されると思って?」
「あ、ごめんなさい」
「申し訳ございません、でしょう?」
すると、スチュワートが間に入りました。
「まぁまぁ、ジョセフィーン。ハルコはまだ転入したばかりなのだから、仕方がないよ。ハルコ、どうか気にしないで」
「スチュワート、ありがとう」
「それに、君みたいなタイプの人間、初めてだから面白いよ」
その日から、スチュワートはハルコに親切に学校や授業のことを教えてあげ、優しく接するようになりました。
あの親密な様子……ふたりは、恋仲になるのかしら。
そう考えながら歩いていると、
「危ない!!」
ロナルドの叫び声が聞こえました。すると、近くでバサッと音がして、ハルコが木から落ちてきました。粗暴な態度で問題を起こしているロナルドがハルコを受け止めます。
「お前、なにやってんだ!!」
「ご、ごめんなさい……木の上から降りられなくなった猫を助けようとしたんだけど」
猫!? 猫ですって!?
「ハルコ、猫が木の上から降りられなくなったのでしたら、まずは誰か人を呼びにいくべきでしょう。レディーたるもの、木登りなどみっともありませんわ……」
説教をしていると、ロナルドがハルコを見つめます。
「お前……バカな奴だな。でもそういうの、嫌いじゃないぜ」
それから、ロナルドが私を睨みつけてきましたの。
「ジョセフィーン、お前、優しさの欠片もないな」
私は、ただレディーとしての振る舞いを説いただけですのに!!
その日から、ロナルドは何かとハルコにちょっかいを出すようになりました。
学期末試験の日程が発表されました。転入してきたハルコは当然ながら、試験範囲の前半の授業を受けておりません。
「先生! あの、私……転入してきたばかりで試験範囲の勉強が分からないので……どなたか、助けていただけるとありがたいのですが」
そう言いながら、チラッと学年一の秀才であるセルベスを見ました。ハルコの誘導により、先生が頷かれます。
「ではセルベス、ハルコの勉強をみてやってくれませんか」
セルベスは指名され、不快な表情を見せます。メガネをかけ直すと、先生に言い放ちました。
「申し訳ありませんが、頭の悪い女のために時間を割くような余裕はありません」
「セルベス、この学院の方針はご存知ですよね。助け合いの精神を何よりも大切にしています」
「……分かりました」
セルベスは渋々承諾し、ふたりは共に勉強することになったのですわ。
「ぁ、の……セルベス、ごめんなさい。迷惑をかけちゃって」
「まったくだ。これ以上迷惑かけないように、しっかり勉強してくれたまえ」
そして、学期末試験が終わり、結果発表の日。なんと、ハルコはセルベスに続いて学年2位となったのです。
セルベスは成績順位が貼られた紙を前に、絶句しておりました。
「なっ……信じられない。物覚えがいいとは思っていたが、ハルコがこれほどまでに優秀だったとは」
常に人を見下したような彼の表情が柔らかくなり、ハルコに笑顔を見せました。
「よくやったな、ハルコ」
「そんな! セルベスがいなかったら、私……絶対に単位落としてたと思う。セルベスのおかげだよ」
あぁ、もう我慢できませんわ。
「ハルコ、あなた本当はご自分で頭がいいことをわかっていながら、セルベスの気を引くためにそうしたんじゃなくて?」
「ひ、酷い……わ、私はただ、セルベスが一生懸命教えてくれたから、それに応えて頑張らないとって思っただけなのに」
悲しげな表情で私を見つめるハルコの肩を、セルベスが抱き寄せます。
「ジョセフィーン、ハルコがどれだけ努力したのかも知らずにそんなことを言うんじゃない!」
「だ、だって考えてみてくださいませ。ハルコは特待生ですのよ。普通に試験を受けたところで、学年2位にはなれなくても、単位を落とすことなどないと分かっていた筈ですのに、セルベスにわざわざ勉強を教えていただこうだなんて、あざとすぎますわ」
「ジョセフィーン、これ以上ハルコを侮辱すると、許さんぞ!」
なんてことでしょう。セルベスも、どうやらハルコに落ちたようですわね。
先生がご紹介してくださいます。
「皆さん、今日からこの学院に転入されましたハルコです。さぁ、どうぞお入りになって」
ハルコ、ですって?
私は、眉を潜めました。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、とても変わった……いえ、エキゾチックなお名前ですわね。
扉が開き、ハルコが入ってきましたわ。
なんてことでしょう。肩より短いピンクの髪だなど! ブロンド、プラチナブロンド、ブルネット、レッド、ブラウン、ブラックと、髪色は人それぞれですけれど、ピンクだなんて、まともな人間の髪色とは思えませんわ。
しかも、長く美しい髪こそがレディーですのに、こんな短い髪だなんて、少年みたいですわ。庶民の間では、これが流行っているのでしょうか。
ま、まぁいいですわ。髪は人それぞれですものね。もしかしたら、何かのご病気で髪の色が奇妙な色に変化してしまったのかもしれませんし、そのせいで庶民たちに虐められて髪を切られてしまったのかもしれませんから、触れないでおきますわ。
先生が説明いたします。
「ハルコは庶民でありながらも優秀であることから特別枠の特待生として、入ってきたのですよ」
確かにこのロイヤル学院には、庶民のための特別枠が設けられています。けれど、それは名ばかりの制度でした。今まで適用されたことはなく、この学院創設以来の初の特待生を迎え入れることになるのです。
しかも、通常であれば特待生であれば皆と同じく9月に入学するはずですのに、こんな時期外れに転入してくるなど、裏から手が回されているとしか思えませんわ。
いかにも素朴で純情そう、悪く言えば田舎もの丸出しの顔立ちのハルコが、ぴょこんとお辞儀をいたしました。
「ハルコです。皆さん、どうぞよろしく」
ん、なんですの?
ハルコの言い方が気に障ります。
「では、ハルコはスチュワートの隣に座ってくださいね」
「はい」
ハルコはスチュワートの席まで行くと、にっこりと微笑みました。
「スチュワート、よろしくね」
ここは、同じレディーとして放っておけなくてよ。
「ハルコ、『よろしくね』じゃなくってよ。スチュワートはハリアット公爵の爵士であるご息男様ですのよ。普通でしたら、貴女など御目通りすら叶わない存在なのです。庶民だからと言って、そんなお下品なお言葉遣いがこのロイヤル学院で許されると思って?」
「あ、ごめんなさい」
「申し訳ございません、でしょう?」
すると、スチュワートが間に入りました。
「まぁまぁ、ジョセフィーン。ハルコはまだ転入したばかりなのだから、仕方がないよ。ハルコ、どうか気にしないで」
「スチュワート、ありがとう」
「それに、君みたいなタイプの人間、初めてだから面白いよ」
その日から、スチュワートはハルコに親切に学校や授業のことを教えてあげ、優しく接するようになりました。
あの親密な様子……ふたりは、恋仲になるのかしら。
そう考えながら歩いていると、
「危ない!!」
ロナルドの叫び声が聞こえました。すると、近くでバサッと音がして、ハルコが木から落ちてきました。粗暴な態度で問題を起こしているロナルドがハルコを受け止めます。
「お前、なにやってんだ!!」
「ご、ごめんなさい……木の上から降りられなくなった猫を助けようとしたんだけど」
猫!? 猫ですって!?
「ハルコ、猫が木の上から降りられなくなったのでしたら、まずは誰か人を呼びにいくべきでしょう。レディーたるもの、木登りなどみっともありませんわ……」
説教をしていると、ロナルドがハルコを見つめます。
「お前……バカな奴だな。でもそういうの、嫌いじゃないぜ」
それから、ロナルドが私を睨みつけてきましたの。
「ジョセフィーン、お前、優しさの欠片もないな」
私は、ただレディーとしての振る舞いを説いただけですのに!!
その日から、ロナルドは何かとハルコにちょっかいを出すようになりました。
学期末試験の日程が発表されました。転入してきたハルコは当然ながら、試験範囲の前半の授業を受けておりません。
「先生! あの、私……転入してきたばかりで試験範囲の勉強が分からないので……どなたか、助けていただけるとありがたいのですが」
そう言いながら、チラッと学年一の秀才であるセルベスを見ました。ハルコの誘導により、先生が頷かれます。
「ではセルベス、ハルコの勉強をみてやってくれませんか」
セルベスは指名され、不快な表情を見せます。メガネをかけ直すと、先生に言い放ちました。
「申し訳ありませんが、頭の悪い女のために時間を割くような余裕はありません」
「セルベス、この学院の方針はご存知ですよね。助け合いの精神を何よりも大切にしています」
「……分かりました」
セルベスは渋々承諾し、ふたりは共に勉強することになったのですわ。
「ぁ、の……セルベス、ごめんなさい。迷惑をかけちゃって」
「まったくだ。これ以上迷惑かけないように、しっかり勉強してくれたまえ」
そして、学期末試験が終わり、結果発表の日。なんと、ハルコはセルベスに続いて学年2位となったのです。
セルベスは成績順位が貼られた紙を前に、絶句しておりました。
「なっ……信じられない。物覚えがいいとは思っていたが、ハルコがこれほどまでに優秀だったとは」
常に人を見下したような彼の表情が柔らかくなり、ハルコに笑顔を見せました。
「よくやったな、ハルコ」
「そんな! セルベスがいなかったら、私……絶対に単位落としてたと思う。セルベスのおかげだよ」
あぁ、もう我慢できませんわ。
「ハルコ、あなた本当はご自分で頭がいいことをわかっていながら、セルベスの気を引くためにそうしたんじゃなくて?」
「ひ、酷い……わ、私はただ、セルベスが一生懸命教えてくれたから、それに応えて頑張らないとって思っただけなのに」
悲しげな表情で私を見つめるハルコの肩を、セルベスが抱き寄せます。
「ジョセフィーン、ハルコがどれだけ努力したのかも知らずにそんなことを言うんじゃない!」
「だ、だって考えてみてくださいませ。ハルコは特待生ですのよ。普通に試験を受けたところで、学年2位にはなれなくても、単位を落とすことなどないと分かっていた筈ですのに、セルベスにわざわざ勉強を教えていただこうだなんて、あざとすぎますわ」
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