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美麗な年下国王は、アイスクリームよりも甘く淫らに妻の女王に溶かされる

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 添えていたアンジェリーナの指先が、ルノーの気を引くようにチョンチョン、と触れる。

「ねぇ、ルノー……まだ、もう一つあるよ?」

 そう言われて、ルノーはもう一つの大きな箱を手に取り、ラッピングを解いた。

「ルールン?」

 そこには、ふたりを繋ぐ思い出深いホワイトテディベアのぬいぐるみが入っていた。

 ルノーがまだ孤児院にいた頃、王女だったアンジェリーナが慰問に訪れ、こっそりと孤児院の裏の森へと抜け出した際に、そこにいるルノーと出逢った。泣いているルノーを慰めようと、アンジェリーナはその時腕に抱いていたお気に入りのテディベア『ルールン』をあげた。

『ルールンが私の代わりにそばにいるから、泣かないで』

 その少女のことを、ずっとルノーは忘れず、公爵に引き取られてからも手元に置き続けた。まさかそれが、月日を経て再会するなど、思いもしなかった。

 あ、違う……

 ルールンとは違い、そのぬいぐるみには耳にリボンが飾られ、睫毛もあって女の子仕様になっていた。

 アンジェリーナが嬉しそうに説明する。

「ルールンと同じ生地で作ってもらったの。私たちはルールンのお陰で再会して、こうして一緒にいられることができるようになったけど、ルールンはひとりで寂しいんじゃないかって思って。ルールンにもいつも一緒にいてくれるガールフレンドがいてくれたらいいなぁって考えて。

 それから、公務でそれぞれ別々に出かけなくちゃいけない時は、私がルールンを持って行って、ルノーがこのぬいぐるみを持っていけば、離れていてもお互い傍にいるような気持ちになれるでしょ?」

 そのホワイトテディベアは、なんとなく雰囲気がアンジェリーナに似てる気がした。

「うん。これからは、ルールンも寂しくないね」

 そう言って微笑んでから、ルノーはちょっと不満げな表情を浮かべた。

「公務でも、アンジェと離れ離れになるのはすごく嫌だけど……」

 ソノワール公爵だった頃の領地を後継する者が決まったとはいえ、ルノーは未だ公爵としての公務が残っており、王宮とソノワール邸を行き来する生活が続いていた。

 早く片付けてアンジェリーナと過ごす時間を多く持ちたいと思いつつも、領民の不安が取り除かれ、安心して暮らせるようになるまで支えてやらねばならないと思うと、完璧に引き継いでからと考えてしまう。

 アンジェリーナがルノーの顔を覗き込み、柔らかく微笑んだ。

「うん、私も……いつもルノーと一緒にいたいって思ってしまう。
 ルノーと離れてるとね……不安になるの。あの、離れていた時のことが蘇ってきて……不安で仕方なくなるの……」

 アンジェリーナの記憶が蘇ったのか、美しい横顔に陰りが落とされる。

「アンジェ……」

 隣国のアルル王国に侵攻された際、ルノーは軍に捕らえられ、投獄されたことがあった。その間、どれだけアンジェリーナを不安にさせていたのか、改めてルノーは思い知らされた。

 ルノーがアンジェリーナを抱き締める腕にぐっと力を込める。

「もう……あんな思いは、二度とさせない……」

 アンジェリーナにルノーが顔を寄せると、お互い惹かれ合うように唇が重なる。

 アンジェ、君の傍に永遠にいると誓うよ……
 もう、決して離れたりしない。

 まだ、アンジェリーナの口の中にヴァニラの余韻が甘く残る。そのアイスクリームよりも甘いアンジェリーナの唇を愛おしむように、ルノーは深く重ねていく。

「……満たされたと思ったけど、まだアンジェが足りない。
 もっと、欲しい……」
「ルノー……」

 瞳を潤ませ、頬を紅く染めるアンジェリーナに、ルノーの熱が再び呼び醒まされる。

「だめ?」

 首を傾げて問うルノーに、アンジェリーナが頬を染めて首を振った。

「ッッだめ、じゃ……ない。私も……ルノーがもっと……欲しい、から……」

 ルノーの胸奥に幸せが広がっていく。

 あぁ……俺は、なんて幸せなんだろう。

「今夜は、手加減できないかも……」
「ルノー」

 ビクン、と肩を震わすアンジェリーナに、ルノーは強く自らの唇を押し付けた。

「ぁ……」

 アンジェリーナの艶かしい吐息が、寝室に漏れる。ルノーの情欲が燃え上がった。

 今夜は……アイスクリームよりも甘い君に、溶かされたい……

 ルノーは再びアンジェリーナをベッドへと横たえると、纏わりつくほど甘ったるい夜に溺れていった。

「アンジェ、俺に最高の誕生日を捧げて?」
「ルノー、貴方の望むままに……」

 アンジェリーナは心の中で呟いた。


 ルノー、誕生日おめでとう。
 来年も、再来年も、これから先ずっと……貴方の誕生日をお祝いさせて。

 永遠に、愛してる……

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