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美麗な年下国王は、アイスクリームよりも甘く淫らに妻の女王に溶かされる

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 子供達を城門まで見送ると、宰相であるジルベールが声をかける。

「まもなく国王陛下の誕生日を祝う祝賀パーティーのお時間となりますので、ご準備のほどよろしくお願い致します」
「あぁ、分かった」

 ジルベールはアンジェリーナが生まれる前から前国王に仕えているため、結構な年齢のはずだが、まるで歳を取らず、ずっと容姿が変わらない。長い髪を後ろでひとつに纏め、女性と見紛うばかりの中世的な顔立ち、溢れんばかりの色香が漂っている。にも関わらず、騎士隊長のアデラールでさえ負かしてしまうほどの剣術の持ち主。一方で、賢いうえに戦術にも優れており、政治的な能力にも長けている。人々は影でジルベールのことを、魔力があるのではと噂するほどだった。

 未だにアンジェリーナのことを王女時代からの呼び名である『プリンセス』と呼び、強い絆を感じさせることは不快だが、まつりごとに関しては、圧倒的な知識と才覚を持つジルベールを頼もしく思っていた。

 ふたりは、休むまもなく国王の誕生日を祝う祝賀パーティーへと向かった。

 会場には招待された国内外からのたくさんの王侯貴族たちで埋め尽くされ、熱気に包まれていた。

 公爵の時にもパーティーや社交場には仕方なく出席していたが、こういった場は苦手だった。形式通りの挨拶をするルノーに対し、アンジェリーナは来賓の国の名産や関心のある趣味や家族の話などでその場を和ませ、来賓たちと笑顔を交わしていた。

 そんなアンジェリーナに、ルノーは愛しみの籠もった視線を向けた。

 アンジェ、君が俺の傍にいてくれることで、俺は本当に助けられている。
 俺だけでなく、アンジェの周りは全て明るく照らし出されていく。まるで春に優しく降り注ぐ、太陽の光のようだ。

 ルノーはアンジェリーナにつられて、いつのまにか笑顔になっていた。

「よぉ、坊ちゃん。『氷の公爵』が今じゃ、なし崩しだな。
 相当アンジェリーナに骨抜きにされてるな」

 ルノーの最も嫌う声が、後ろから響いた。

「シモーネ、なぜここにいる?」

 後ろに立っていたのは、シャルール公国の宰相ジルベールが雇っている情報屋、シモーネだ。国内外のありとあらゆる情報に精通し、教皇組織や密売組織、裏の世界にも詳しい彼は、表ではグランデ大公の子息としての顔も持っている。

 涼しげな瞳にいつも人を馬鹿にしたような薄ら笑いを浮かべ、嘘か本当か分からない言葉でからかって愉しむシモーネは、公爵時代からルノーにとって目の上のたんこぶだった。

「俺も、坊ちゃんの誕生日を祝ってやろうとわざわざ来てやったんだろ。感謝しろよ」
「いらない。今すぐ帰れ」

 つっけんどんに答えても、シモーネはニヤニヤするだけだった。

「そんなんじゃ、愛しのアンジェリーナに嫌われちまうぞ。俺があいつの誕生日の時にあげた媚薬、使ったか?」
「そんなもの、使うはずないだろ!」

 憤慨するルノーに、シモーネが意地悪な笑みを深めた。

「せっかく俺が心配してやったのに。じゃあ、こっちでも試してみろ」

 シモーネが琥珀色の液体が入った瓶をルノーに手渡した。

「これ飲めば、一発でビンビンになって長時間持続する薬だ。お前、淡白そうだもんな」

 ルノーがキッと美しい眉を顰めてシモーネを睨んだ。すると、そこにアンジェリーナが立ち塞がると、ルノーの手から瓶を取り上げ、シモーネに突きつけた。

「本日は、私の愛する夫、ルノーの誕生日祝いをいただき、ありがとうございます。けれど、私たち夫婦はこのような助けなどなくても十分満たされていますので、どうぞこちらはお引き取りください」

 きっと心の中では恥ずかしくて仕方ないだろうに、アンジェリーナは穏やかに告げると、力強くシモーネを押し返した。

 まさかアンジェリーナがそんな行動に出るとは夢にも思っていなかったシモーネは呆気にとられ、彼女を見つめた。

 ルノーがアンジェリーナの手を取った。

「そういうことだ。今日は多めに見てやるが、以後はないと思え」

 くるりと踵を返し、ルノーはアンジェリーナと共に立ち去った。その途端、アンジェリーナが肩を縮めて俯いている。今頃になって恥ずかしさが出てきたようだ。

「アンジェ、ありがとう」

 ルノーがアンジェリーナの頬に接吻すると、ますます頬を赤らめた。
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