変性

奏音 美都

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変性

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 バイト先でついた油の臭いを洗い流してお風呂から上がると、さっきまでなかった肩やおなかの部分まで赤くなっていました。

 恐くなり、ベッドに入って布団を被りました。布団の中で熱を持った肌が痒みを伴い、腕をぼりぼりと掻くと、その感触に寒気がします。

 まさか……

 信じられない気持ちでもう一度ゆっくり触れると、やはり皮膚がでこぼこしています。ガバッと布団から半身を起こし、パジャマのズボンを脱ぎ、太ももに触れると……まるで立体地図を触っているような感触が指先から伝わってきました。

 これは夢、夢に決まってる。ありえない、こんなの、ありえない……

 きつく目を閉じ、悪夢の中を彷徨い続けました。 

 起きると、びっしょり汗をかいていました。外は明るく、日が昇っています。私はこわごわ布団をめくりました。そして……これが、夢ではないことを知ったのです。

 翌日、診療所に行くと蕁麻疹だと言われました。おそらくバイト先で食べた揚げ物が酸化していたのだろう、と。初めての蕁麻疹に動揺したものの、薬をもらったことで、これで治ると気持ちが楽になりました。

 けれど、いくら経っても回復しないどころか、膨らんだ皮膚は水分を失ってワニの鱗のように硬くなっていきました。そのうちに皺が寄り、ザラザラとした感触へと変化し、発狂しそうでした。総合病院に行き、皮膚だけでなく内臓や血液の検査もしましたが、原因は分かりません。彼氏から何度も連絡がきましたが、こんな醜い姿見せられるはずなく、高校にも行かなくなりました。

 部屋に鍵をかけ、親にさえも顔を見せませんでした。

「絶対入ってこないで! 入ってきたら死んでやるから!!」

 ザラザラとした硬い皮膚はもう、私の全身を覆っていて、何かに変性しているのではないかと恐ろしくなりました。泣いて泣いて、涙が枯れて乾ききっても、暫くすると泣いていました。

 そんなある日、クリームを皮膚に塗っていると、皮膚がぽろりと剥がれ落ちました。ようやく取れた、とホッとした矢先、剥がれた皮膚の下から出てきたものを見て氷水をかけられた気分になりました。そこには、滑った鱗が出来ていたのです。

「いっ……いっ……イヤーーーーーッ!!」

 その日から硬くなった皮膚が次々と剥がれていき、代りに粘着質な液体に覆われた鱗に変化しました。

 もう死ぬしかない……絶望的な気持ちになった時、ガマ男から言われた言葉を思い出しました。

『き、君を……たっ、助けられるのは……ぼ、僕、だけ……』

 同時に、針を刺されたような痛みが私の腕に蘇ります。

 たとえこれがあいつの仕業としても、縋るしかない……悲痛な思いでゴミ箱を漁り、底からくしゃくしゃになったメモを見つけました。
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