可愛い後輩ワンコが、私の彼氏になりました♪

奏音 美都

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可愛い後輩ワンコが、私の彼氏になりました♪

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2週間後……





「原田先輩、おはようございますっっ!!!」



波留は朝早くからパソコンに向かってキーボードを叩く私を後ろから抱き締めると、
髪の匂いを嗅いだ。



「ちょっ!!波…柚木くんっっ!!!

 朝から何してんのよぉっっ……//」



「だって、原田先輩の匂い嗅ぐと落ち着くんですもん♪」



(波留ワンコ…懐きすぎ……)



家でも外でも、そして会社の中でも…

甘えてくる波留ワンコのせいで、私達が付き合ってることはすぐに気付かれてしまって、
あっとゆうまにその噂は社内に広がった。
みんなの好奇、と嫉妬の目が……痛い。



パソコンの手を止めて、席を立った。



「ちょっと…休憩……」



波留も一緒に立ち上がる。



「あっ!先輩…」



(ついてくる気だ...…)



「...トイレまでついて来るとか、言わないでねっ!!」



波留が耳と尻尾を垂れる。



「大人しく待ってます……」



シュン……
お手洗いから戻る途中、給湯室に立ち寄る。



(コーヒーでも飲も……)



モカブレンドを手に取りセットしてると、ふと頭に影を感じて見上げた。



「あ…」

(えっと、沙也んとこの…田中君だ)



「お疲れっす」



田中君はボソッとひとこと言うと、棚からコーヒーを選び始めた。



(まともに喋ったことないから、なんか居づらいなぁ…

 コーヒーできたらさっさと席戻ろ……)



早くモカブレンドできないかなぁ……



食い入るようにコーヒーメーカーを見つめていると、頭から声が降ってきた。



「柚木と付き合い始めたんすね」


まさか彼から恋愛話をされるとは思ってなかったので、
飛び上がりそうになりながらもなんとか冷静に答える。



「田中君まで知ってるなんて...そうとう社内の噂、広がってんだっ、ハハッ…」



すると、田中君がクスッと笑った。



(え…)



「俺、柚木からいろいろ相談されてましたから」



(え…)



(えぇーーーーーーっっ!!!!!)



(あの時波留がケータイで喋ってた相手って、田中君だったんだ…)

同期とはいえ、まったくタイプの違う2人がそんなに仲が良かっただなんて、驚いた。



田中君はコーヒーメーカーから私のマグカップを取り出して、渡した。



「柚木、めちゃめちゃ嬉しそうでしたよ」



私はマグカップを受け取って、頷く。



「…うん」



他人から改めて聞かされると、なんか恥ずかしい……




田中君は炭焼きコーヒーをセットしながら、小さく呟いた。



「俺も...頑張るんで」



「え?」



「永井先輩、のこと……」

(永井って…沙也のこと!?)



「田中君、沙也のこと好きだったんだ……

 えっ、いつから?」



田中君がフッと笑みを見せる。



「ずっと…前からっすよ……」



(ずっと前から、って…入社式の時からってこと?
 それとも社内見学とかで来た時に一目惚れ、とか?)



疑問がわくけど、なんとなく聞きにくい雰囲気に阻まれる。



モカブレンドを口にしながら、ふと思う。



「それにしても、田中君がこんなに喋るなんて、意外だった」

「えっ?」



「だって、沙也は田中君全然愛想ないし、喋らないって愚痴ってたから…」



言ってから(しまった、言い過ぎたっ!!)って思ったけど遅かった。



田中君が俯いている。



(ショック受けちゃった?)





「俺、好きな人の前だと緊張して…… 何も言えなくなるんすよね……///」



俯いた耳が真っ赤になっている。



沙也から聞いてた田中君のイメージと全然違う。

純情な姿に思わず(可愛いんじゃん…)と心の中で呟いた。




「田中君、私、協力してあげる♪」



田中君がガバッと顔を上げた。



「えっ!!!いいんっすか?ありがとうございます…」

「いいのいいの、親友にも春が来てほしいもん♪」



(沙也と田中君の身長差カップル…萌えるぅ。

 これはぜひカップルになってもらわないとっ)



私はコーヒーを口にして、ニヤケそうになる笑みを堪えた。


給湯室から席に戻ると

波留が椅子ごと私の方へ身体を向けるとじっと見つめてきた。



(わっ、めちゃめちゃ『待ってました』オーラ出てるし...)



「どした?」

「……」



波留は拗ねるように唇を結んだ。



私は自分の席に座って椅子ごとくるりと波留の方へ向けると

「ん?」

優しく言葉を促した。



「……美緒先輩、全然戻って来ないから……

 何かあったのか心配で……」



 社内で美緒先輩って呼ばれてドキッと鼓動が跳ねる。

 これは、プライベートの時の呼び名なのに…でも波留は気付いてないみたいだ。



「それで心配で見に行ったら給湯室で先輩と田中が楽しそうに喋ってるのが見えて……」

(楽しそう?いやいや、楽しそうには喋ってなかったでしょ。

 ...もしかして沙也の恋愛に協力するって言ってた時、とかかな?

 妄想に夢中で気付かなかったけど)



波留は少し潤んだ瞳で切ない表情で見上げてきた。



ドキッ…



「気にしないようにしようって思っても、頭から離れなくて…

 俺、美緒先輩のこととなると冷静になれなくて……」



キューン



(どんだけ私をキュンキュンさせれば気が済むの、この子はっ!!!)


「もぉ、誤解だから!
 田中君の恋の応援するって話してたの」



その後、声を潜めて聞いた。



「波留、知ってるでしょ?田中君が沙也好きだってこと…」

「はい…」



波留がホッとしたように息を吐いた。

波留の可愛いヤキモチに、愛しさで胸がいっぱいになる。



波留の頬を手で包み込むと、



「美緒先輩…」



波留が潤みを帯びた瞳で私をまっすぐに見つめる……

瞬きをすると長い睫毛が誘うように揺れた。



(キス、したい……)



ツヤツヤの唇に誘われるように顔が引き寄せられる。


と、



バサーーーーッッ



2人の間に大量の書類が置かれた。



「続きは家でやってくれ……」



見上げるとそこには……呆れたように見下ろす部長がいた。




『す、みません......///』

「ここにある納品書、今日中にデータまとめて先方に送ってくれ。

 2人一緒に残業なら嬉しいだろ」



(ぜんっぜん、嬉しくないしっ……!!)



「原田先輩、一緒に頑張りましょうねっ」



波留が嬉しそうに笑いかける。



(まぁ、いっか……)




椅子をデスクに向けて座り直す。






「さっ、仕事やるよーっ!」



「はいっ!」



「先輩……」

「なぁに?」

「今日、仕事終わったら先輩ん家に遊びに行ってもいいですか?」



「…ちゃんと仕事が片付いたらね」



「先輩に早くキス出来るように、仕事がんばりますね」



「……///」



やっぱり波留ワンコに翻弄されてばかり......

だけど、そんな毎日も悪くないと思ってしまってるのだった。

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