89 / 124
罪の代償
3
しおりを挟む
それから数日後。
羽鳥家では、怒声が飛んでいた。
「そんなこと、認められるはずないでしょ!」
「絶対に許さんぞ!!」
美姫と大和が離婚すると切り出した途端、大蔵と京香は目の色を変えて大反対した。ふたりが離婚をすれば、大蔵の政治家活動に大きく影響が出ると考えたからだ。
大樹はショックを受け、呆然と二人を見つめていた。
京香は鼻息を荒くし、息巻いた。
「だいたい離婚を申し出るなら、来栖家と羽鳥家の問題なんだから、凛子さんも来るのが筋でしょう。
凛子さんはどこにいるの!?」
美姫は、グッと喉を詰まらせた。
凛子にあぁ言われたにも関わらず、美姫と大和は迷惑を掛けるのを恐れ、彼女に黙ってふたりだけで羽鳥家を訪ねたのだ。
「母には……離婚の意思を伝えたところ、親子の縁を切られました。もう二度と会いたくない、と。
ですから、母は……関係ありません」
「関係ないわけないでしょう!!
羽鳥は名家なの!! マスコミに離婚が知られれば、親戚中を巻き込んで大迷惑がかかるの!!
ただでさえ大地が収賄を告白して自殺し、肩身の狭い思いをしているというのに……この上、大和まで離婚でもしようものなら、うちは親戚や世間から後ろ指さされなくてはいけなくなるのよ!!」
だい兄は、自殺なんかじゃねぇ……
大和は京香に怒りを覚えつつも、拳を固く握り、必死に堪えた。
掴みかからんばかりの勢いの京香を前に、美姫は深緑のペルシャ絨毯が敷かれた床に正座し、深々と土下座した。
「全ては、私のせいなんです。大和さんには、なんの落ち度もないんです。私一人の、責任です。
本当に……ック本当に、申し訳ございません……ウッ」
大和が跪き、美姫の肩を抱える。
「美姫、そんなことしなくていいから。
俺だって、美姫を傷つけた。離婚は、ふたりで話し合って決めた結果だ。お前だけが悪いんじゃない」
美姫は頭を上げ、3人を見つめた。
「いいえ、離婚は全て私の責任です。
私は、叔父である来栖秀一のことを愛しています。彼と一緒になるために、大和さんと離婚して欲しいと頼みました。大和さんを、裏切ったんです。
お義父様、お義母様、お義兄さん……本当に、申し訳ございません」
美姫は再び、深々と土下座した。
さすがの大蔵も、京香ですら、あまりの衝撃の告白に言葉を失った。
京香が激しい怒りに全身を震わせ、足を踏み鳴らして美姫に近寄った。
「よくも、のこのこと顔が出せたものね!!
この、裏切り者ぉぉぉ!!」
京香が美姫の髪を掴んで引っ張り、頭ごと床に打ち付けた。ゴンと鈍い音が床に響く。
「おふくろ、やめろ!!」
大和が京香を抑えるものの、それでも構わず美姫の髪を掴んだまま、平手打ちした。美姫は抵抗することなく、されるがままだった。更に叩こうとして振り上げた手首を掴んだ大和を睨みつけ、京香が怒鳴り声を上げる。
「あなたは悔しくないの!?
大和だけじゃない、これは羽鳥家に対する侮辱だわ!」
羽鳥家では、怒声が飛んでいた。
「そんなこと、認められるはずないでしょ!」
「絶対に許さんぞ!!」
美姫と大和が離婚すると切り出した途端、大蔵と京香は目の色を変えて大反対した。ふたりが離婚をすれば、大蔵の政治家活動に大きく影響が出ると考えたからだ。
大樹はショックを受け、呆然と二人を見つめていた。
京香は鼻息を荒くし、息巻いた。
「だいたい離婚を申し出るなら、来栖家と羽鳥家の問題なんだから、凛子さんも来るのが筋でしょう。
凛子さんはどこにいるの!?」
美姫は、グッと喉を詰まらせた。
凛子にあぁ言われたにも関わらず、美姫と大和は迷惑を掛けるのを恐れ、彼女に黙ってふたりだけで羽鳥家を訪ねたのだ。
「母には……離婚の意思を伝えたところ、親子の縁を切られました。もう二度と会いたくない、と。
ですから、母は……関係ありません」
「関係ないわけないでしょう!!
羽鳥は名家なの!! マスコミに離婚が知られれば、親戚中を巻き込んで大迷惑がかかるの!!
ただでさえ大地が収賄を告白して自殺し、肩身の狭い思いをしているというのに……この上、大和まで離婚でもしようものなら、うちは親戚や世間から後ろ指さされなくてはいけなくなるのよ!!」
だい兄は、自殺なんかじゃねぇ……
大和は京香に怒りを覚えつつも、拳を固く握り、必死に堪えた。
掴みかからんばかりの勢いの京香を前に、美姫は深緑のペルシャ絨毯が敷かれた床に正座し、深々と土下座した。
「全ては、私のせいなんです。大和さんには、なんの落ち度もないんです。私一人の、責任です。
本当に……ック本当に、申し訳ございません……ウッ」
大和が跪き、美姫の肩を抱える。
「美姫、そんなことしなくていいから。
俺だって、美姫を傷つけた。離婚は、ふたりで話し合って決めた結果だ。お前だけが悪いんじゃない」
美姫は頭を上げ、3人を見つめた。
「いいえ、離婚は全て私の責任です。
私は、叔父である来栖秀一のことを愛しています。彼と一緒になるために、大和さんと離婚して欲しいと頼みました。大和さんを、裏切ったんです。
お義父様、お義母様、お義兄さん……本当に、申し訳ございません」
美姫は再び、深々と土下座した。
さすがの大蔵も、京香ですら、あまりの衝撃の告白に言葉を失った。
京香が激しい怒りに全身を震わせ、足を踏み鳴らして美姫に近寄った。
「よくも、のこのこと顔が出せたものね!!
この、裏切り者ぉぉぉ!!」
京香が美姫の髪を掴んで引っ張り、頭ごと床に打ち付けた。ゴンと鈍い音が床に響く。
「おふくろ、やめろ!!」
大和が京香を抑えるものの、それでも構わず美姫の髪を掴んだまま、平手打ちした。美姫は抵抗することなく、されるがままだった。更に叩こうとして振り上げた手首を掴んだ大和を睨みつけ、京香が怒鳴り声を上げる。
「あなたは悔しくないの!?
大和だけじゃない、これは羽鳥家に対する侮辱だわ!」
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる