<完結>【R18】愛するがゆえの罪 10 ー幸福の基準ー

奏音 美都

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罪の代償

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 それから数日後。

 羽鳥家では、怒声が飛んでいた。

「そんなこと、認められるはずないでしょ!」
「絶対に許さんぞ!!」

 美姫と大和が離婚すると切り出した途端、大蔵と京香は目の色を変えて大反対した。ふたりが離婚をすれば、大蔵の政治家活動に大きく影響が出ると考えたからだ。

 大樹はショックを受け、呆然と二人を見つめていた。

 京香は鼻息を荒くし、息巻いた。

「だいたい離婚を申し出るなら、来栖家と羽鳥家の問題なんだから、凛子さんも来るのが筋でしょう。
 凛子さんはどこにいるの!?」

 美姫は、グッと喉を詰まらせた。

 凛子にあぁ言われたにも関わらず、美姫と大和は迷惑を掛けるのを恐れ、彼女に黙ってふたりだけで羽鳥家を訪ねたのだ。

「母には……離婚の意思を伝えたところ、親子の縁を切られました。もう二度と会いたくない、と。
 ですから、母は……関係ありません」
「関係ないわけないでしょう!!
 羽鳥は名家なの!! マスコミに離婚が知られれば、親戚中を巻き込んで大迷惑がかかるの!!
 ただでさえ大地が収賄を告白して自殺し、肩身の狭い思いをしているというのに……この上、大和まで離婚でもしようものなら、うちは親戚や世間から後ろ指さされなくてはいけなくなるのよ!!」

 だい兄は、自殺なんかじゃねぇ……

 大和は京香に怒りを覚えつつも、拳を固く握り、必死に堪えた。

 掴みかからんばかりの勢いの京香を前に、美姫は深緑のペルシャ絨毯が敷かれた床に正座し、深々と土下座した。

「全ては、私のせいなんです。大和さんには、なんの落ち度もないんです。私一人の、責任です。
 本当に……ック本当に、申し訳ございません……ウッ」

 大和が跪き、美姫の肩を抱える。

「美姫、そんなことしなくていいから。
 俺だって、美姫を傷つけた。離婚は、ふたりで話し合って決めた結果だ。お前だけが悪いんじゃない」

 美姫は頭を上げ、3人を見つめた。

「いいえ、離婚は全て私の責任です。
 私は、叔父である来栖秀一のことを愛しています。彼と一緒になるために、大和さんと離婚して欲しいと頼みました。大和さんを、裏切ったんです。
 お義父様、お義母様、お義兄さん……本当に、申し訳ございません」

 美姫は再び、深々と土下座した。

 さすがの大蔵も、京香ですら、あまりの衝撃の告白に言葉を失った。

 京香が激しい怒りに全身を震わせ、足を踏み鳴らして美姫に近寄った。

「よくも、のこのこと顔が出せたものね!!
 この、裏切り者ぉぉぉ!!」

 京香が美姫の髪を掴んで引っ張り、頭ごと床に打ち付けた。ゴンと鈍い音が床に響く。

「おふくろ、やめろ!!」

 大和が京香を抑えるものの、それでも構わず美姫の髪を掴んだまま、平手打ちした。美姫は抵抗することなく、されるがままだった。更に叩こうとして振り上げた手首を掴んだ大和を睨みつけ、京香が怒鳴り声を上げる。

「あなたは悔しくないの!?
 大和だけじゃない、これは羽鳥家に対する侮辱だわ!」
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