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「分かりました。
まずは、お二人がどれぐらい妊娠の成功率があるのか確認させてもらいます。大和さんは精液検査をご希望とのことでしたが、禁欲期間は守って頂けましたか」
予約の際に精液検査を申し込んだ際、3日から4日間の禁欲期間を持たなければいけないことを大和は聞いていた。
「はい」
美姫の前で質問されるとは思わず、歯切れ悪く答える。
内藤は、そんな大和の気持ちには御構い無しで説明した。
「では、フロアの一番奥にある採精室に行ってもらえますか。精子の検査をしますので」
「分かり、ました……」
大和は固い表情で頷いた後、美姫に安心させるように笑みを見せ、立ち上がった。美姫はそれを固い表情で見送った。
医師が美姫に向き直り、問診表を手に取る。
「過去3ヶ月間の月経ですが、最後の月経は3ヶ月前ですか……かなり空いていますね。
元々、生理不順な方ですか」
美姫は頷いた。
「一時期ピルを飲んでいた時は生理が定期的に来るようになっていたんですが、1年ぐらい前にやめてからまた生理不順になりました。生理が来る時にはかなり重く、たぶん人よりも血液の量は多めだと思います」
大和との性行為がなくなり、避妊の必要がなくなったので、1年ほど前からピルの服用をやめていた。生理不順であることは知っていたが、この問診表を書くまでは前回の生理が3ヶ月前だったとは気付かず、美姫自身も驚いていた。
「では、美姫さんには、まず血液検査を受けてもらいます。そこでエストロゲン(卵胞ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)といったホルモン値を測ります。その後、経膣超音波検査を実施します」
「ぇ……」
ど、どうしよう……今日は、話を聞くつもりだけで来たのに。
看護師が、美姫を案内する。
「では、血液採取しますね」
美姫は戸惑いながらも、腕を出した。
血液採取が終わると、別の部屋に案内された。そこには診察台が置かれていたが、両足を引っ掛ける踏み台があり、分娩台のようだと美姫は感じた。中央はカーテンで仕切られている。
看護師が声を掛けた。
「スカートを履かれているので、下着を脱ぐだけで大丈夫ですよ。脱いだ下着は籠の中に入れておいて下さい」
「はい」
パンティを脱ぎ、籠の中に入れた。目隠し用の蓋があるのがありがたい。
内診台に腰かけて待っている間、心もとなく、不安な気持ちに襲われた。
本当に、これでいいの?
父のことを思い、覚悟したはずなのにそんな思いが浮かび上がる。
秀一の言葉が脳裏に響く。
『どうして子供をもつ覚悟もないのに、不妊治療など受けるのですか』
あの時、秀一さんに言われたのに、私は結局ここに来てしまった。
もし大和との子供を妊娠したら、秀一さんはなんて言うだろう……
込み上がりそうになる思いを押し込んで唇をきつく結び、必死に耐えた。
その時、扉の向こう側から女性の悲痛な泣き声が聞こえてきた。聞いては悪いと思ったが、静まり返ったこの部屋にいると、はっきり聞こえてきてしまう。
「ウッ、ウゥッ……もぅ、やだ……また、駄目だ、なんて……ウグッ。
どう、して……どうしてなのっっ!!」
ヒステリックな中に落胆の籠った女性の声。
そして、それを宥める男性の声。
「また……次、がんばろう。
な? まだ、チャンスはある......」
「ッッもう私たち、6年も不妊治療続けてるのに……ッグ。もう歳だって、お金だって限界……ヴッ今、回が……最後の望みだって、かけてたのに……ウゥゥゥゥッ、ウッ、ヒック……」
悲痛な女性の声を聞き、美姫の胸が苦しくなった。
まずは、お二人がどれぐらい妊娠の成功率があるのか確認させてもらいます。大和さんは精液検査をご希望とのことでしたが、禁欲期間は守って頂けましたか」
予約の際に精液検査を申し込んだ際、3日から4日間の禁欲期間を持たなければいけないことを大和は聞いていた。
「はい」
美姫の前で質問されるとは思わず、歯切れ悪く答える。
内藤は、そんな大和の気持ちには御構い無しで説明した。
「では、フロアの一番奥にある採精室に行ってもらえますか。精子の検査をしますので」
「分かり、ました……」
大和は固い表情で頷いた後、美姫に安心させるように笑みを見せ、立ち上がった。美姫はそれを固い表情で見送った。
医師が美姫に向き直り、問診表を手に取る。
「過去3ヶ月間の月経ですが、最後の月経は3ヶ月前ですか……かなり空いていますね。
元々、生理不順な方ですか」
美姫は頷いた。
「一時期ピルを飲んでいた時は生理が定期的に来るようになっていたんですが、1年ぐらい前にやめてからまた生理不順になりました。生理が来る時にはかなり重く、たぶん人よりも血液の量は多めだと思います」
大和との性行為がなくなり、避妊の必要がなくなったので、1年ほど前からピルの服用をやめていた。生理不順であることは知っていたが、この問診表を書くまでは前回の生理が3ヶ月前だったとは気付かず、美姫自身も驚いていた。
「では、美姫さんには、まず血液検査を受けてもらいます。そこでエストロゲン(卵胞ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)といったホルモン値を測ります。その後、経膣超音波検査を実施します」
「ぇ……」
ど、どうしよう……今日は、話を聞くつもりだけで来たのに。
看護師が、美姫を案内する。
「では、血液採取しますね」
美姫は戸惑いながらも、腕を出した。
血液採取が終わると、別の部屋に案内された。そこには診察台が置かれていたが、両足を引っ掛ける踏み台があり、分娩台のようだと美姫は感じた。中央はカーテンで仕切られている。
看護師が声を掛けた。
「スカートを履かれているので、下着を脱ぐだけで大丈夫ですよ。脱いだ下着は籠の中に入れておいて下さい」
「はい」
パンティを脱ぎ、籠の中に入れた。目隠し用の蓋があるのがありがたい。
内診台に腰かけて待っている間、心もとなく、不安な気持ちに襲われた。
本当に、これでいいの?
父のことを思い、覚悟したはずなのにそんな思いが浮かび上がる。
秀一の言葉が脳裏に響く。
『どうして子供をもつ覚悟もないのに、不妊治療など受けるのですか』
あの時、秀一さんに言われたのに、私は結局ここに来てしまった。
もし大和との子供を妊娠したら、秀一さんはなんて言うだろう……
込み上がりそうになる思いを押し込んで唇をきつく結び、必死に耐えた。
その時、扉の向こう側から女性の悲痛な泣き声が聞こえてきた。聞いては悪いと思ったが、静まり返ったこの部屋にいると、はっきり聞こえてきてしまう。
「ウッ、ウゥッ……もぅ、やだ……また、駄目だ、なんて……ウグッ。
どう、して……どうしてなのっっ!!」
ヒステリックな中に落胆の籠った女性の声。
そして、それを宥める男性の声。
「また……次、がんばろう。
な? まだ、チャンスはある......」
「ッッもう私たち、6年も不妊治療続けてるのに……ッグ。もう歳だって、お金だって限界……ヴッ今、回が……最後の望みだって、かけてたのに……ウゥゥゥゥッ、ウッ、ヒック……」
悲痛な女性の声を聞き、美姫の胸が苦しくなった。
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