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第一章 世界は明日、終わりを告げる
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校長先生が再びマイクを手に取る。
「これから皆さんは保護者の方に連絡をし、学校まで迎えに来てもらって下さい。迎えが来た生徒から保護者と一緒に下校します。連絡手段を持っていない生徒は、代わりに教師が保護者に連絡しますので舞台袖に集まって下さい。
連絡が取れた生徒は速やかに担任教師に報告するように。保護者の方がすぐに迎えに来られない生徒は、ここで待機して下さい。決して一人では帰らないで下さい」
高校生にもなって親に迎えに来てもらうとかありえない。普通ならそんな反感が出てもおかしくないけど、校長先生の固い声と厳格な雰囲気がそれを押さえ付けた。
殆どの生徒はスマホやガラケーを手にしていて、舞台袖へと移動したのは僅か数人の生徒だけだった。
「お母さん、迎えに来てくれるって。雅っちは、大学から来てくれるって言ってた。大学でも凄い騒ぎになってるって」
通話を終えたくまっちが顔を上げる。雅っち先輩は私たちが1年の時に3年だった先輩で、卒業式にくまっちから告白して付き合い始めた。
大学でも、と聞いて、やっぱりこれは本当に現実に起こったことで、もう世界中に知れ渡ってるんだと思った。現実だと分かっているのに、これからも私はこうやって何度もその事実を突き付けられる度に『やっぱり本当なんだ』と思ってしまうのだろう。
「そっか。雅っち先輩、家に来てくれるんだ。良かったね」
心の暗雲を押し払い、笑顔でそう答えた私を、くまっちが心配そうに見つめた。
「ミッキーは、電話しないの?」
「うん。私は大丈夫」
張り付いた笑顔を浮かべ、頷いた。
電話なんてしなくても、お母さんが迎えに来られないのは分かってる。それは、私に愛情がないからだとか、そういう問題ではないことも。
報道番組のディレクターを務めているお母さんには、私を迎えに来る余裕なんて、一瞬たりともない。お母さんは私よりももっと過酷な24時間を過ごすことになるだろうから。娘か仕事かの選択を迫ることなんて、私には出来ない。
くまっちが電話してる時に、お母さんにはLINEで『安全の為、学校でみんなで待機することになった』って入れておいた。そっとスマホを起動してLINEを確認すると、やっぱり未読のままだった。
ほのちゃんは章吾と交互にスマホを渡しながら親に連絡した後、小さく息を吐いた。
「章くんのママが、章くんと私を迎えに来てくれるって」
「わっ、さっすが両親公認!!」
自分だって彼氏が家に来るのに、くまっちが大げさに声を上げた。
「そんなんじゃなくて。うち、二人とも共働きで会社も遠いし、すぐには迎えに来られないだろうからって言ってくれたの」
ほのちゃんは、僅かに震えていた。
「私たち、これからどうなっちゃうんだろう。ブラックホールだなんて、そんなこと、ほんとにあるのかな、信じられない」
皆がシンとする。信じられない、信じたくないという思いから口に出せなかった言葉をほのちゃんが口にしてしまったことで、恐ろしい現実に足首を掴まれ、底なし沼に引き摺られていく。
返事が出来ずに唇を震わせる私とくまっちに、ほのちゃんがシマッタというように俯いた。
「ご、め」
「穂花、心配すんな。俺がずっといてやるから」
普段自分から滅多にほのちゃんに話しかけることのない章吾が眉に力を入れ、彼女の手を強く握り締めた。章吾の強い思いに応えるように、ほのちゃんがコクリと小さく頷く。そこには、目に見えないけれど確かな信頼と安心があった。
いつも穏やかでのんびりしてて、みんなの癒し的な存在のほのちゃんと、無口でぶっきらぼうな章吾。ほのちゃんから章吾と付き合ってるって聞いたときは意外な気がしてたけど、今はこの2人が凄くお似合いのカップルだって感じてる。言葉を交わさずとも、2人の間にはいつも特別な空気が流れていた。
そんな2人を見つめているところに、翔が突然私の両肩を掴み、顔を寄せた。
「美輝!! 俺ん家に来い!!」
「これから皆さんは保護者の方に連絡をし、学校まで迎えに来てもらって下さい。迎えが来た生徒から保護者と一緒に下校します。連絡手段を持っていない生徒は、代わりに教師が保護者に連絡しますので舞台袖に集まって下さい。
連絡が取れた生徒は速やかに担任教師に報告するように。保護者の方がすぐに迎えに来られない生徒は、ここで待機して下さい。決して一人では帰らないで下さい」
高校生にもなって親に迎えに来てもらうとかありえない。普通ならそんな反感が出てもおかしくないけど、校長先生の固い声と厳格な雰囲気がそれを押さえ付けた。
殆どの生徒はスマホやガラケーを手にしていて、舞台袖へと移動したのは僅か数人の生徒だけだった。
「お母さん、迎えに来てくれるって。雅っちは、大学から来てくれるって言ってた。大学でも凄い騒ぎになってるって」
通話を終えたくまっちが顔を上げる。雅っち先輩は私たちが1年の時に3年だった先輩で、卒業式にくまっちから告白して付き合い始めた。
大学でも、と聞いて、やっぱりこれは本当に現実に起こったことで、もう世界中に知れ渡ってるんだと思った。現実だと分かっているのに、これからも私はこうやって何度もその事実を突き付けられる度に『やっぱり本当なんだ』と思ってしまうのだろう。
「そっか。雅っち先輩、家に来てくれるんだ。良かったね」
心の暗雲を押し払い、笑顔でそう答えた私を、くまっちが心配そうに見つめた。
「ミッキーは、電話しないの?」
「うん。私は大丈夫」
張り付いた笑顔を浮かべ、頷いた。
電話なんてしなくても、お母さんが迎えに来られないのは分かってる。それは、私に愛情がないからだとか、そういう問題ではないことも。
報道番組のディレクターを務めているお母さんには、私を迎えに来る余裕なんて、一瞬たりともない。お母さんは私よりももっと過酷な24時間を過ごすことになるだろうから。娘か仕事かの選択を迫ることなんて、私には出来ない。
くまっちが電話してる時に、お母さんにはLINEで『安全の為、学校でみんなで待機することになった』って入れておいた。そっとスマホを起動してLINEを確認すると、やっぱり未読のままだった。
ほのちゃんは章吾と交互にスマホを渡しながら親に連絡した後、小さく息を吐いた。
「章くんのママが、章くんと私を迎えに来てくれるって」
「わっ、さっすが両親公認!!」
自分だって彼氏が家に来るのに、くまっちが大げさに声を上げた。
「そんなんじゃなくて。うち、二人とも共働きで会社も遠いし、すぐには迎えに来られないだろうからって言ってくれたの」
ほのちゃんは、僅かに震えていた。
「私たち、これからどうなっちゃうんだろう。ブラックホールだなんて、そんなこと、ほんとにあるのかな、信じられない」
皆がシンとする。信じられない、信じたくないという思いから口に出せなかった言葉をほのちゃんが口にしてしまったことで、恐ろしい現実に足首を掴まれ、底なし沼に引き摺られていく。
返事が出来ずに唇を震わせる私とくまっちに、ほのちゃんがシマッタというように俯いた。
「ご、め」
「穂花、心配すんな。俺がずっといてやるから」
普段自分から滅多にほのちゃんに話しかけることのない章吾が眉に力を入れ、彼女の手を強く握り締めた。章吾の強い思いに応えるように、ほのちゃんがコクリと小さく頷く。そこには、目に見えないけれど確かな信頼と安心があった。
いつも穏やかでのんびりしてて、みんなの癒し的な存在のほのちゃんと、無口でぶっきらぼうな章吾。ほのちゃんから章吾と付き合ってるって聞いたときは意外な気がしてたけど、今はこの2人が凄くお似合いのカップルだって感じてる。言葉を交わさずとも、2人の間にはいつも特別な空気が流れていた。
そんな2人を見つめているところに、翔が突然私の両肩を掴み、顔を寄せた。
「美輝!! 俺ん家に来い!!」
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