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潜入
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薄暗い店内は人々の異様な熱気に包まれ、そこにいる人達の汗や体臭、薄汚れた壁から滲み出す黴臭い臭い、鼻をツンとさせる強いアルコールの臭いが酒場を満たしていて、一歩足を踏み入れただけで頭がクラクラした。
こんなところでいつもリアムは、情報屋としてのやり取りをしてるんだ……
自分の知らなかったリアムの一面を覗き見たような気持ちになって、嬉しさよりも寂しさを感じてしまう。
きっと、僕は……まだまだリアムについて知らないことだらけだ。僕が知っているリアムは、城の中で僅かに見えるほんの一部に過ぎない。
だからこそジュリアンはもっとリアムのことが知りたくて、ひとめでも会いたくてここに足を踏み入れた。
リアムはどこだろう……
ジュリアンは、歩き回ったり、立って大声を上げながら喋る人々の頭越しに、その奥に見えるカウンターに目を凝らした。
「ぁ」
いた……
そこには、ずっと会いたいと願っていた愛しい人の姿があった。
リアムの姿を認めた瞬間からジュリアンの胸がドキドキと高なり、今すぐにでも駆けていきたい気持ちに囚われる。
リアムは慣れた手付きでビール樽からジョッキにビールを注ぎながら、カウンターの向かいの客と話しているようだった。
リアム、楽しそうだな……僕とずっと会っていなくても、あんなに楽しそうな顔してる。
僕はリアムと会えない間寂しくて、ずっと会いたいって思いながら過ごしてたのに………
自分がリアムにとって一体どういう存在なのか、分からなくなってくる。
ただの、気まぐれ、なの?
リアムの気持ちが分からないよ……
ジュリアンはグッと拳を握った。
だったら……確かめる、までだ。
せっかく城を抜け出す危険を冒してまでエリックに連れてきてもらったんだ。リアムに会わずに帰るなんて、出来ない。
そう決意して、リアムの元へと歩き出そうとした時……リアムの立つ目の前のカウンターに寄りかかるように、一人の女がリアムに話しかけているのが見えた。
な、に……
その女は胸の大きく開いた露出の高い、真っ赤なタイトドレスを着ていた。
売春婦、なのかも……
遠くからでも匂い立つような色気が、その女からは溢れ出ていた。カウンター越しにリアムに真っ赤なマニキュアをつけた指を伸ばし、厭らしく頬に触れる。
リアムは元々ゲイではない。それどころか、今まで多くの女と関係をもっていたと、噂で聞いたことがある。だからこそ、ジュリアンは男である自分と恋人になったリアムに、いつかまた女の人が好きになるかもしれないという不安を抱いていた。
や、めて……そんな、人に、触らせないで……
心の奥で、ジュリアンは訴えかけた。
リアムはニヤリと口角を上げると、その女の手を柔らかく掴み、カウンターの上に置いた。
その後、何か話しかけていたが、こんな喧騒の中、遠くに立っているジュリアンには何を言っているのか全く分からない。
何を、話してるの……?
女は今度はリアムの首筋に手を添え、引き寄せると、耳元で何か囁く。すると、リアムが女から顔を話すと笑って頷いた。
もうっ……見たく、ない……!!
完全にリアムの元へと向かう気力が削がれ、ジュリアンはその場に立ち尽くしてしまう。
こんなところでいつもリアムは、情報屋としてのやり取りをしてるんだ……
自分の知らなかったリアムの一面を覗き見たような気持ちになって、嬉しさよりも寂しさを感じてしまう。
きっと、僕は……まだまだリアムについて知らないことだらけだ。僕が知っているリアムは、城の中で僅かに見えるほんの一部に過ぎない。
だからこそジュリアンはもっとリアムのことが知りたくて、ひとめでも会いたくてここに足を踏み入れた。
リアムはどこだろう……
ジュリアンは、歩き回ったり、立って大声を上げながら喋る人々の頭越しに、その奥に見えるカウンターに目を凝らした。
「ぁ」
いた……
そこには、ずっと会いたいと願っていた愛しい人の姿があった。
リアムの姿を認めた瞬間からジュリアンの胸がドキドキと高なり、今すぐにでも駆けていきたい気持ちに囚われる。
リアムは慣れた手付きでビール樽からジョッキにビールを注ぎながら、カウンターの向かいの客と話しているようだった。
リアム、楽しそうだな……僕とずっと会っていなくても、あんなに楽しそうな顔してる。
僕はリアムと会えない間寂しくて、ずっと会いたいって思いながら過ごしてたのに………
自分がリアムにとって一体どういう存在なのか、分からなくなってくる。
ただの、気まぐれ、なの?
リアムの気持ちが分からないよ……
ジュリアンはグッと拳を握った。
だったら……確かめる、までだ。
せっかく城を抜け出す危険を冒してまでエリックに連れてきてもらったんだ。リアムに会わずに帰るなんて、出来ない。
そう決意して、リアムの元へと歩き出そうとした時……リアムの立つ目の前のカウンターに寄りかかるように、一人の女がリアムに話しかけているのが見えた。
な、に……
その女は胸の大きく開いた露出の高い、真っ赤なタイトドレスを着ていた。
売春婦、なのかも……
遠くからでも匂い立つような色気が、その女からは溢れ出ていた。カウンター越しにリアムに真っ赤なマニキュアをつけた指を伸ばし、厭らしく頬に触れる。
リアムは元々ゲイではない。それどころか、今まで多くの女と関係をもっていたと、噂で聞いたことがある。だからこそ、ジュリアンは男である自分と恋人になったリアムに、いつかまた女の人が好きになるかもしれないという不安を抱いていた。
や、めて……そんな、人に、触らせないで……
心の奥で、ジュリアンは訴えかけた。
リアムはニヤリと口角を上げると、その女の手を柔らかく掴み、カウンターの上に置いた。
その後、何か話しかけていたが、こんな喧騒の中、遠くに立っているジュリアンには何を言っているのか全く分からない。
何を、話してるの……?
女は今度はリアムの首筋に手を添え、引き寄せると、耳元で何か囁く。すると、リアムが女から顔を話すと笑って頷いた。
もうっ……見たく、ない……!!
完全にリアムの元へと向かう気力が削がれ、ジュリアンはその場に立ち尽くしてしまう。
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