ダイエットの神様はドSスパルタイケメン王子でした!

奏音 美都

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ダイエットの神様はドSスパルタイケメン王子でした!

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 それは、幸せな夢だった。

 チョコレートでデコレーションされたクッキーの扉、クラッカーの窓枠、マーブルチョコの石畳、ふわふわの生クリームがついた屋根……私はお菓子の家に夢中で齧り付き、お腹いっぱい食べてた。

 あぁ、なんて幸せなの。夢ならどうか、醒めないで……

 そんな私の気分をぶち壊す、目覚ましよりも早く頭の中に響く声。

『おっはよー、美保ちゃん。さぁ、僕の待つ細井神社へレッツラゴー♪』

 ぎゃおうん。朝っぱらから頭の中に呼びかけるのはやめてぇっ!
 あーん、せっかくいい夢見てたのにぃっっ。

 神様に急かされながら着替えてる時、ふと疑問に思った。

「ねぇ、神様ってもしかして私の姿も見えてたりするの?」
『ははっ、まさかぁ。今美保ちゃんがパジャマ脱ぎかけてて、たっぷり摘めそうなお腹のぜい肉晒してるとこなんて、見えてないってばぁ』

 見えてんじゃねーか、このエロ神がぁ!
 ねぇ、殴ってもいいかな。てか、頭に聞こえる声に向かって殴っても、自分を殴ることになるだけだし、どうしたらいいわけ?

『だーいじょーぶ♪ 君の残念なボディには僕、欲情しないから』

 ん? 今サラッとなんか悪口言ったよな!?
 くぅぅ、絶対にダイエット成功させて、このクソ神様を頭から追い払ってやる!!

『アハハ、美保ちゃん、その粋だよ!!』

 ジャージに着替えると、家から細井神社に向かってジョギングさせられた。

『ほーら、走って、走って!!』
「ハァッ、ハァッ……も、もぉ……む、り……ハァッ、ハァッ」

 徒歩20分の道のりを走らされる私は、赤い靴を履いた女の子の気分だった。止まりたいのに止まれず、無理やり足が動かされる。

 そう、私の脳は足に向かって止まれと命令してるのに、神様の意思によって勝手に動かされているのだ。ひぃぃぃ!!

 し、死ぬ……マジで、無理。もうダイエットとかどうでもいい……
 願い事撤回するから、普通の生活に戻してぇ!!

『今更撤回出来ないよ。神様に、二言はないからね♪』

 それ武士だし! 神様とか聞いたことないし!! 
 てか、どっちでもいいわ、もう……

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」

 最後の1段を登りきったところで、石畳の上に寝転がった。

 誰が見てよーが関係ない。もう一歩も動けないし、動く気もない。

「ハァッ、ハァッ……し、死んだ……」

 拝殿の扉が豪快にガラッと開いたけど、眉ひとつ動かさず青空を振り仰ぐ。

 と、陰に覆われた。イケメンの顔が迫ってるけど、そいつの目的が分かってる私にはもう胸キュンなんて起こらない。

 騙されるかー、このドS自称ダイエット神がぁぁ!!

 神様が、完璧な笑顔でにっこりと首を可愛らしく傾けた。

「美保ちゃん、おつかれさまぁ。じゃ、この後は腹筋、背筋、スクワット、それからダンベル運動やってこっかぁ♪」

 白目剥いて、口をポカンと開けた。

 ななななななんと、言った?
 むむむむむむむムリ……ムリっす。

 荒い息が整わず、無言で首だけ振ると……あら不思議。勝手に上半身が起こされた。

 ちょちょちょちょ……マジで無理、無理だってばーっっ!!
 てか、なんなのこの神通力。

「ねぇ、こんな力あるんならさぁ、私を痩せさせるぐらい、わけないんじゃないの?」

 すると、やや間があってから、神様が人差し指をぴょこんと立てて、エア眼鏡をくいっと持ち上げる仕草をした。

「何を言っているのですか。努力あってこそ、達成した時の喜びがあるのです!」

 いやいや、楽して痩せても十分嬉しいから!!
 てか、その力あるんでしょ? あるんだよね? 使ってよー!!

 神様が私の両手を取り、つぶらな瞳でウルウルと見つめる。

「美保ちゃんが痩せて綺麗になりたいって思った気持ちを、僕は応援したいんだよ。
 ね、一緒に頑張ろ?」

 一瞬胸キュンしたけど、ハタと気付く。


 頑張ってんの、私だけじゃねーか!! 

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