1 / 13
ダイエットの神様はドSスパルタイケメン王子でした!
1
しおりを挟む
樹々が鬱蒼と立ち並ぶ坂を200メートルほど上り、ようやく辿り着いた朱色の大きな鳥居の先には、気が遠くなるほど高い階段が更にデーンと待ち構えていた。
マジか……
首にかけてるスポーツタオルで顔いっぱいに吹き出た汗を拭い取ろうとするけど、肩から出てる部分がやたら短くてスムーズに拭けない。『健康優良児』の文字が横に伸びきったTシャツの背中は汗でぴったりと張り付き、1ミリも動く気配がない。
息を切らしながら一段一段踏み鳴らしていると全身から汗が滝のように流れ、心臓がバクバクとヤバイぐらいに踊り出し、肺が捻れるように痛い。膝がガクガクして笑い出す。
ハァ、死ぬ……85キロの巨体が持ち上がらん。デブの体力舐めんな。
ヘアゴム持ってくればよかった。バケツでザバーッと頭から水被ったんかと思うぐらい髪がびっしょびしょに濡れてて、肉々しいほっぺや、何重にも重なった首の肉にまとわりついてくる。
それを手の甲で振り払っていると、私の脇をするりと追い越し、キャッキャッと陽気に喋りながら、女子たちが軽快な足取りで階段を登っていく。
「ねぇねぇ、これでうちらもスリム女子なれるかなぁ」
「だね。デブ卒業~♪」
華奢な背中、今にも折れそうな腕、くびれのあるウエスト、肉を感じないストンとしたお尻、すらりと伸びる細い脚が4本、視界の上へと流れていくのを、恨めしい目つきで見送る。
オイコラ。デブの基準、間違ってんぞ。必要ないだろーが!
あんたらの『太った』は、私でいう体重計の誤差の範囲内だから!
なんとか階段を登り切ると、猫背になって大きく肩を揺らし、荒い息を吐いた。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
や、やっと着いたぁ。
と思ってたら、参道を歩くとまた階段……ほんとにこの神社、殺意を覚える。
ゼイゼイ言いながら途中死にそうになり、最後には妖怪のように這いつくばりながら登った。さっき私の横を通り過ぎた女子たちがとっくに参拝を終えて軽やかに階段を降りてくのが見えたが、もう意識が朦朧としてて、何か言われたような気がするけど覚えてない。
よ、ようやく拝殿に辿り着いた。長かった……
拝殿の正面の門柱には、金色の文字で『細井神社』と刻まれている。
ここは、ダイエットの神様を祀っている神社なのだ。
って、これ『細井』と『細い』掛けてるだけのオヤジギャグじゃん!!
なんてツッコミいれたくなるけど、今の私にはギャグだろーがなんだろーが、ご利益が少しでもあるなら縋りたい。
昨日合コンで私をダシにした女友達、見下してくれた秀院のイケメンと言われて浮かれポンチなアホ共を見返してやるわー!
なぁーんて、鼻息荒くしてるわけじゃない。
もうね、そんな状況小さい頃から慣れてますから。
世間では、痩せてる=可愛い、デブ=ブスという数式がどうやら成り立つようで。
小さい頃から友達に、意味深な笑いと共に『痩せたら美保ちゃん、可愛くなるのにね』って言われてきた。
くぉらー、その意味深な笑いに隠れた意味に、気付いてないとでも思っとるんかー!!
じゃあ痩せてない私は、ブスってことですか!?
痩せてるって、そんなに偉いの? 正義なの?
知るかー、んなもん!! 勝手に世間の常識押し付けてくんなー!!
マジか……
首にかけてるスポーツタオルで顔いっぱいに吹き出た汗を拭い取ろうとするけど、肩から出てる部分がやたら短くてスムーズに拭けない。『健康優良児』の文字が横に伸びきったTシャツの背中は汗でぴったりと張り付き、1ミリも動く気配がない。
息を切らしながら一段一段踏み鳴らしていると全身から汗が滝のように流れ、心臓がバクバクとヤバイぐらいに踊り出し、肺が捻れるように痛い。膝がガクガクして笑い出す。
ハァ、死ぬ……85キロの巨体が持ち上がらん。デブの体力舐めんな。
ヘアゴム持ってくればよかった。バケツでザバーッと頭から水被ったんかと思うぐらい髪がびっしょびしょに濡れてて、肉々しいほっぺや、何重にも重なった首の肉にまとわりついてくる。
それを手の甲で振り払っていると、私の脇をするりと追い越し、キャッキャッと陽気に喋りながら、女子たちが軽快な足取りで階段を登っていく。
「ねぇねぇ、これでうちらもスリム女子なれるかなぁ」
「だね。デブ卒業~♪」
華奢な背中、今にも折れそうな腕、くびれのあるウエスト、肉を感じないストンとしたお尻、すらりと伸びる細い脚が4本、視界の上へと流れていくのを、恨めしい目つきで見送る。
オイコラ。デブの基準、間違ってんぞ。必要ないだろーが!
あんたらの『太った』は、私でいう体重計の誤差の範囲内だから!
なんとか階段を登り切ると、猫背になって大きく肩を揺らし、荒い息を吐いた。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
や、やっと着いたぁ。
と思ってたら、参道を歩くとまた階段……ほんとにこの神社、殺意を覚える。
ゼイゼイ言いながら途中死にそうになり、最後には妖怪のように這いつくばりながら登った。さっき私の横を通り過ぎた女子たちがとっくに参拝を終えて軽やかに階段を降りてくのが見えたが、もう意識が朦朧としてて、何か言われたような気がするけど覚えてない。
よ、ようやく拝殿に辿り着いた。長かった……
拝殿の正面の門柱には、金色の文字で『細井神社』と刻まれている。
ここは、ダイエットの神様を祀っている神社なのだ。
って、これ『細井』と『細い』掛けてるだけのオヤジギャグじゃん!!
なんてツッコミいれたくなるけど、今の私にはギャグだろーがなんだろーが、ご利益が少しでもあるなら縋りたい。
昨日合コンで私をダシにした女友達、見下してくれた秀院のイケメンと言われて浮かれポンチなアホ共を見返してやるわー!
なぁーんて、鼻息荒くしてるわけじゃない。
もうね、そんな状況小さい頃から慣れてますから。
世間では、痩せてる=可愛い、デブ=ブスという数式がどうやら成り立つようで。
小さい頃から友達に、意味深な笑いと共に『痩せたら美保ちゃん、可愛くなるのにね』って言われてきた。
くぉらー、その意味深な笑いに隠れた意味に、気付いてないとでも思っとるんかー!!
じゃあ痩せてない私は、ブスってことですか!?
痩せてるって、そんなに偉いの? 正義なの?
知るかー、んなもん!! 勝手に世間の常識押し付けてくんなー!!
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
イケメン歯科医の日常
moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。
親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。
イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。
しかし彼には裏の顔が…
歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。
※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
フリー声劇台本〜モーリスハウスシリーズ〜
摩訶子
キャラ文芸
声劇アプリ「ボイコネ」で公開していた台本の中から、寄宿学校のとある学生寮『モーリスハウス』を舞台にした作品群をこちらにまとめます。
どなたでも自由にご使用OKですが、初めに「シナリオのご使用について」を必ずお読みくださいm(*_ _)m
【完結】 元魔王な兄と勇者な妹 (多視点オムニバス短編)
津籠睦月
ファンタジー
<あらすじ>
世界を救った元勇者を父、元賢者を母として育った少年は、魔法のコントロールがド下手な「ちょっと残念な子」と見なされながらも、最愛の妹とともに平穏な日々を送っていた。
しかしある日、魔王の片腕を名乗るコウモリが現れ、真実を告げる。
勇者たちは魔王を倒してはおらず、禁断の魔法で赤ん坊に戻しただけなのだと。そして彼こそが、その魔王なのだと…。
<小説の仕様>
ひとつのファンタジー世界を、1話ごとに、別々のキャラの視点で語る一人称オムニバスです(プロローグ(0.)のみ三人称)。
短編のため、大がかりな結末はありません。あるのは伏線回収のみ。
R15は、(直接表現や詳細な描写はありませんが)そういうシーンがあるため(←父母世代の話のみ)。
全体的に「ほのぼの(?)」ですが(ハードな展開はありません)、「誰の視点か」によりシリアス色が濃かったりコメディ色が濃かったり、雰囲気がだいぶ違います(父母世代は基本シリアス、子ども世代&猫はコメディ色強め)。
プロローグ含め全6話で完結です。
各話タイトルで誰の視点なのかを表しています。ラインナップは以下の通りです。
0.そして勇者は父になる(シリアス)
1.元魔王な兄(コメディ寄り)
2.元勇者な父(シリアス寄り)
3.元賢者な母(シリアス…?)
4.元魔王の片腕な飼い猫(コメディ寄り)
5.勇者な妹(兄への愛のみ)
作ろう! 女の子だけの町 ~未来の技術で少女に生まれ変わり、女の子達と楽園暮らし~
白井よもぎ
キャラ文芸
地元の企業に勤める会社員・安藤優也は、林の中で瀕死の未来人と遭遇した。
その未来人は絶滅の危機に瀕した未来を変える為、タイムマシンで現代にやってきたと言う。
しかし時間跳躍の事故により、彼は瀕死の重傷を負ってしまっていた。
自分の命が助からないと悟った未来人は、その場に居合わせた優也に、使命と未来の技術が全て詰まったロボットを託して息絶える。
奇しくも、人類の未来を委ねられた優也。
だが、優也は少女をこよなく愛する変態だった。
未来の技術を手に入れた優也は、その技術を用いて自らを少女へと生まれ変わらせ、不幸な環境で苦しんでいる少女達を勧誘しながら、女の子だけの楽園を作る。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
後宮の暗殺者~殺すつもりで来たのに溺愛されています~
碧野葉菜
キャラ文芸
古くからの暗殺家系、韻の者である翠玉(スイギョク)は、楊国の皇帝、暁嵐(シャオラン)暗殺の依頼を受ける。
任務遂行のため宮廷を襲撃した翠玉は、まさかの暁嵐に敗れ、捕らえられてしまう。
しかし、目覚めた翠玉を待っていたのは、死でも拷問でもなく……暁嵐からの溺愛だった――!?
「わしはお前が大層気に入った、どうせ捨てる命ならわしによこせ」
暁嵐の独断で後宮入りが決まった翠玉は、任務の相棒で旧友の凛玲(リンレイ)と再会を果たす。
暗殺失敗による依頼人の報復を阻むため、皇妃となった翠玉は依頼人探索に乗り出す。
皇帝暗殺を企てたのは誰か――?
暁嵐の熱烈な愛に翻弄されつつ、翠玉は謎を解き、真実に辿り着くことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる