【R１８】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

After Story１ ー新しい命の誕生ー

１１

　面会終了となる８時直前に悠人が顔を見せた。

「大丈夫だったかい？　長丁場で、疲れただろう」

　それを受け、静音が悠の肩に手を置いた。

「悠ちゃん、ずっと座っていて腰が痛いんじゃない？　少し、横になったら？」
「大丈夫」

　薫子が陣痛で苦しんでいる時に、そんなこと言ってられない......

　すると突然、悠の躰がふわっと浮き上がった。

「ｯ...父さん！」

　悠人は逞しい腕で悠を抱き上げたまま、子供を叱るように眉を顰めた。

「まだこれから先は長いんだ。悠もゆっくり休んでいないと、病室に戻されることになるよ」

　ベッドにそっと横たえられ、可動式のベッドが薫子のベッドの横につけられる。

　出産に伴い、この病院では付き添いの大人が泊まれるのは１名までと決まっている。悠は介添えが必要な為、特別に悠の他にもう一人、付添人が泊まれることになった。静音の強い希望により彼女が付き添いで残ることになり、悠人はばあやを家まで送ることになった。

　ふたりが出て行った後、静音も緊張の連続で疲れていたためソファで休むことにした。

　薫子は10分間隔に襲ってくる陣痛と緊張で、眠ることも出来ずにいた。悠は目を閉じているので、眠っているかどうか分からない。悠の閉じられた瞼の下に美しく弧を描く長い睫毛に見惚れていると、唇が小さく動いた。

「不安？」

　じっと見つめていたのに気づかれていたことを知り、薫子は顔を真っ赤にした。

「うん......」

 　正直な気持ちを吐露すると、悠が大きく息を吐いた。

「俺も、不安でドキドキしてる。
　こんなに緊張するの、薫子に告白した時以来だ。あ、プロポーズの時も緊張したけど」

　悠も自分と同じ気持ちでいると知り、薫子は気持ちが軽くなった気がした。

「薫子、ごめん......何も、出来なくて」

　情けない思いで謝る悠の手の上に、薫子の手が重なった。

「こうして傍にいてくれることが、何より嬉しいし、すごく励まされてるよ。
　ありがとう」

　一緒に、乗り越えていくんだ......

　薫子は、悠の左手を握り締めた。