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After Story1 ー新しい命の誕生ー

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 バルーンは投薬ではなく、風船を中に入れて膨らませるものだから、陣痛促進剤よりはリスクが低いはず。それで子宮口が広がるなら、陣痛促進剤は使う必要がないんだ。

 それを受け、薫子は小さく頷いた。

「分かり、ました」
「もし、バルーンを使用しても子宮口が開かない場合、陣痛促進剤を使うことも頭に入れておいて下さい。陣痛促進剤は、子宮収縮を促して陣痛を引き起こす薬で、点滴で投与します」

 それから、使用する陣痛促進剤の種類や副作用について説明された。
 
 薫子は、おそるおそる医師に尋ねた。

「どうしても、陣痛促進剤は使用しないといけないですか」
「本人の意思により決定しますから、強制ではありません。ただ、自然分娩であってもこれらのことは起こりえますし、陣痛促進剤を使用しないと先ほどあげた感染症の危険や母体への影響などのリスクが高まります。それをよく考えた上で、決めてください」

 そう告げた後、医師は去っていった。

 医師が去った後、薫子が呟くように言った。

「悠、どう思う? どうしたら、いい?」

 薫子は、子供のために一番いい選択をしたいと思いつつも、何を選べばいいのか分からなかった。

 悠は考え込むように俯いてから、慎重に話し始めた。

「確かに、陣痛促進剤を使用することで副作用の危険性はあるけど......それを使わなければならない状況であるってことは、それが母体にとって最良の選択だから、ってことも言えるよね」
「う、ん.....」

 それでも、もし副作用が起こったとしたらと考えると、恐い。

 悠は、薫子に手を伸ばした。

「でもそれは、子宮口が開かなかった時の話だから。まだ時間はある」
「そうだね」

 静音は、黙ってふたりの会話を見守っていた。

 医師の指示に従い、看護師が子宮頚管拡張バルーンの準備を始めた。

 チューブの先にシリコン製の玉のようなものが2つついている。このシリコンに生理食塩水を注入することで風船のように膨らみ、内子宮口、外子宮口の両方から圧力を持続的にかけ、頸部を広げていくのだ。

 医師が看護師からバルーンを受け取り、膝の間から薫子に声を掛ける。

「今から入れますから、力を抜いて下さいね」
「ッ……」

 冷たい器具と、中を押し広げられる感触に思わず顔が歪む。バルーンを挿入する際に痛みはあったものの、中に入ってしまえば違和感は感じるが痛みはなかった。

「バルーンの最大留置時間は12時間になりますので、これを夜通しつけてもらって、朝に外しにきますね」

 看護師の説明を聞き、これからいったい、赤ちゃんが産まれるまでにどれぐらいの時間がかかるのだろうと薫子は不安になった。

 美姫からもらった安産の御守りをギュッと握ると、チリンと鈴が鳴った。

 悠の手が、薫子に触れて包み込む。薫子は掌を返し、悠の手を握った。

 陣痛がくると、緩んでいた薫子の手がギュッと力強く握られる。苦しそうな息が漏れるのを聞きながら、悠は自分の無力さを感じていた。

 手術をキャンセルまでしたのに、俺は薫子に何もしてあげられない......
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