【R１８】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

婚約破棄

２

　薫子は一瞬睫毛を伏せた後、大きな瞳で遼を見つめた。

「うん......悠には、私の気持ちを全身全霊込めて ぶつけるつもり。たとえ受け入れられなかったとしても......諦めずに、何度でも気持ちを伝えていきたいって思ってる」
「ｯ......!!」

　今までとは考えられないぐらいの前向きで力強い薫子の言葉に、遼は度肝を抜かれ、返す言葉を失くした。

　こいつ......ついこの前会った時には、あんなに弱々しくてウジウジしてたくせに。
　短い間に、一体何があったんだ！？

「お待たせ致しました」

　店員の声でそんな空気が破られ、目の前に出されたコーヒーを見つめ、ようやく「あぁ...」と、遼が声を上げた。

　薫子が遼を窺うように、見上げた。

「それで、これから......大丈夫かな？」
「あ？　あ、あぁ......大、丈夫だ」

　それは、薫子が呼び出しをした際に、遼とふたりで会った後、家族にも挨拶をしたいと言っていたことを指していた。

　薫子はこれから、遼の家族にも婚約破棄の報告をするつもりだった。

　遼は大事な話があるからと、両親と妹の佳那に家で待ってもらっていた。それがまさか婚約破棄の話だとは夢にも思っていないだろうことを思うと、まるで鉛を飲み込んだかのように心が沈んでいくのを遼は感じた。