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哀憐(あいれん)
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朝方早く、LINEが入ったお知らせ音で、薫子は浅い眠りから起こされた。
こんな時間に、誰が......
そう思いながらも、ベッドから重い躰をのそりと持ち上げると、一瞬頭がふらついた。それが収まるのを待ってからベッドから静かに下り、デスクの上に充電してあるスマホを手に取った。
アイコンを押すと、そこには大和からのメッセージが入っていた。
『汽車会見するテレビつけろ』
汽車、会見......?
これって、記者会見のことだよね。
普通なら、句読点を用い、誤変換することのない大和からのメッセージを読み、相当慌てていたことが窺えた。いったいなぜ大和が、なんのために記者会見をするのか疑問に思いつつも、薫子は滅多につけない部屋のテレビのリモコンを押した。
チャンネルをワイドショーのやっていそうな番組に合わせると、早速記者会見の会場らしい場所で、レポーターがマイクを手にして立っていた。
「えぇー、今朝方早く、来栖財閥令嬢である来栖美姫さんからマスコミ各社に宛ててファックスが届き、記者会見を行うことが発表されました。ですが、そこにはどういった内容の記者会見であるのか、また恋人と噂される叔父の来栖秀一氏も記者会見に現れるのかについては触れられていませんでした。会場は異様な熱気と緊迫した雰囲気に包まれております。
あ!もうすぐ記者会見が始まるようですね。では、私も行ってまいります」
そこで一旦、コマーシャルとなった。
え......記者会見って、美姫のことだったんだ。
美姫が記者会見をすると聞き、彼女が無事であることが分かり安堵したものの、すぐに別の大きな不安が押し寄せる。
一体美姫は、記者会見で何を言うつもりなの?
秀一さんと共に、叔父と姪の恋人関係を弁解するつもりなの?
コマーシャルが終わると、スタジオでの映像が流れる。アナウンサーやコメンテーター達がそれぞれ記者会見の内容について推測し、見解を示していた。
暫くして、スタッフから合図があったのか、女性のアナウンサーが頷く。それから、画面に向かって取り繕ったような真面目な顔を向けた。
「では、これから記者会見が始まるようですので、記者会見会場へと戻します」
再び画面が、記者会見会場を映す。
白い長テーブルには若い男女が既に並んで座っていた。
ひとりは、美姫。
だが、その隣に座っているのは来栖秀一ではなく、
大和、だった。
「ッッ......!!!」
あまりの驚愕に、薫子は大きく息を吸い込み、目を瞬いた。
なんで、ここに大和が座っているの?
いったい、何をするつもりなの?
薫子の鼓動が速まり、息苦しくなる。食い入るように、テレビを見つめた。
大和は落ち着き払った様子で正面に構え、話し出した。
『本日はご多忙な中、急な発表にも関わらず、会場にお集まり下さりありがとうございました。
今日皆様をお呼び立て致しましたのは......私、羽鳥大和と、来栖美姫さんとの婚約を正式に発表するためです』
それを聞き、会場全体が一斉にどよめいたが、それは会場内だけでなく、TVの向こう側にいる薫子も同様、いやそれ以上に衝撃を受けていた。
あまりの出来事に、薫子はパニック寸前だった。
薫子は、美姫と秀一が恋人であり、美姫の気持ちが秀一以外に傾くことなどないことを知っている。そしてまさに昨日、遼から週刊誌を見せられ、ふたりの関係が白日の元に晒されたことを知ったのだ。
美姫は秀一と共に雲隠れしていたはずなのに、その美姫が大和と記者会見の場に現れた。それだけでなく、婚約発表をするとは、薫子にとっては思いもよらないことだった。
こんな時間に、誰が......
そう思いながらも、ベッドから重い躰をのそりと持ち上げると、一瞬頭がふらついた。それが収まるのを待ってからベッドから静かに下り、デスクの上に充電してあるスマホを手に取った。
アイコンを押すと、そこには大和からのメッセージが入っていた。
『汽車会見するテレビつけろ』
汽車、会見......?
これって、記者会見のことだよね。
普通なら、句読点を用い、誤変換することのない大和からのメッセージを読み、相当慌てていたことが窺えた。いったいなぜ大和が、なんのために記者会見をするのか疑問に思いつつも、薫子は滅多につけない部屋のテレビのリモコンを押した。
チャンネルをワイドショーのやっていそうな番組に合わせると、早速記者会見の会場らしい場所で、レポーターがマイクを手にして立っていた。
「えぇー、今朝方早く、来栖財閥令嬢である来栖美姫さんからマスコミ各社に宛ててファックスが届き、記者会見を行うことが発表されました。ですが、そこにはどういった内容の記者会見であるのか、また恋人と噂される叔父の来栖秀一氏も記者会見に現れるのかについては触れられていませんでした。会場は異様な熱気と緊迫した雰囲気に包まれております。
あ!もうすぐ記者会見が始まるようですね。では、私も行ってまいります」
そこで一旦、コマーシャルとなった。
え......記者会見って、美姫のことだったんだ。
美姫が記者会見をすると聞き、彼女が無事であることが分かり安堵したものの、すぐに別の大きな不安が押し寄せる。
一体美姫は、記者会見で何を言うつもりなの?
秀一さんと共に、叔父と姪の恋人関係を弁解するつもりなの?
コマーシャルが終わると、スタジオでの映像が流れる。アナウンサーやコメンテーター達がそれぞれ記者会見の内容について推測し、見解を示していた。
暫くして、スタッフから合図があったのか、女性のアナウンサーが頷く。それから、画面に向かって取り繕ったような真面目な顔を向けた。
「では、これから記者会見が始まるようですので、記者会見会場へと戻します」
再び画面が、記者会見会場を映す。
白い長テーブルには若い男女が既に並んで座っていた。
ひとりは、美姫。
だが、その隣に座っているのは来栖秀一ではなく、
大和、だった。
「ッッ......!!!」
あまりの驚愕に、薫子は大きく息を吸い込み、目を瞬いた。
なんで、ここに大和が座っているの?
いったい、何をするつもりなの?
薫子の鼓動が速まり、息苦しくなる。食い入るように、テレビを見つめた。
大和は落ち着き払った様子で正面に構え、話し出した。
『本日はご多忙な中、急な発表にも関わらず、会場にお集まり下さりありがとうございました。
今日皆様をお呼び立て致しましたのは......私、羽鳥大和と、来栖美姫さんとの婚約を正式に発表するためです』
それを聞き、会場全体が一斉にどよめいたが、それは会場内だけでなく、TVの向こう側にいる薫子も同様、いやそれ以上に衝撃を受けていた。
あまりの出来事に、薫子はパニック寸前だった。
薫子は、美姫と秀一が恋人であり、美姫の気持ちが秀一以外に傾くことなどないことを知っている。そしてまさに昨日、遼から週刊誌を見せられ、ふたりの関係が白日の元に晒されたことを知ったのだ。
美姫は秀一と共に雲隠れしていたはずなのに、その美姫が大和と記者会見の場に現れた。それだけでなく、婚約発表をするとは、薫子にとっては思いもよらないことだった。
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