222 / 355
突きつけられた現実
10
しおりを挟む
美姫は......知っているの?
世間では、こんな騒ぎになっていることを。
秀一さんと二人、閉ざされた世界で---
今、何を思っているの?
最も起こって欲しくないことが、薫子の脳裏を過る。
ま、さか......心中するなんて、そんなこと......
薫子は強く頭かぶりを振った。
美姫に限って、そんなことするわけない。
絶対に、そんなわけない.....!!!
だが、薫子の全身は震えていた。
震える薫子を見て、遼の胸に後悔の波が押し寄せてくる。
ショック受けねぇわけ、ねぇよな......
一番仲の良かった親友が、こんなことになって。
知らねぇ方がよかったのかもしれない。
けど、こんなに噂になっちまってんだ。いつまでも隠しきれるわけねぇ。
それに、薫子には酷だが、これが現実なんだと。
お前にも降りかかることなのかもしれねぇってことを、分からせねぇと。
起こっちまってから知るんじゃ、遅ぇんだ。
現実を受け止め、強くなれ......薫子。
どうしたら自分が幸せになれるのか、もっと考えてみろ。
---その結果俺を選んだのなら、俺は喜んでお前を受け入れてやる。
だが、薫子にとって、美姫の現実はあまりにも辛すぎた。遼が思っていたよりも、薫子と美姫の絆は深いのだ。無理もない。遼は、薫子と美姫の幼稚舎から小等部時代しか知らない。
中等部、高等部という多感な思春期をお互いの悩みを打ち明け、励まし、乗り越えてきた固いふたりの友情など、遼には想像もつかない。ましてやお互い秘めた恋に苦しみ、辛い思いをしてきた仲だ。
それに、薫子には親しい女友達は美姫しかおらず、ずっと依存してきた。薫子にとって美姫は、肉親よりも近い存在である。そんな美姫が苦境に立たされ、平気でいられる筈がない。
遼は、ずっと押し黙っている薫子に声をかけた。
「大...丈夫か」
その言葉も薫子の耳には届いていないようで、前を見つめたまま蒼白な表情で呆然としている。
「薫子!」
大声をあげた遼に、薫子が肩をビクンと鳴らす。
「ぇ......」
「......お前。大丈夫、か?」
「......う、ん......あり、がと」
薫子はそう言うと、助手席の扉を開けた。
あぁー、やっぱ話すんじゃなかった......
遼が深い後悔に襲われながら、自らも車を降りようと扉に手を掛ける。
「遼、ちゃん。
今日は......ここで、大丈夫だから」
「お、おぉ......」
思いもよらなかった薫子の言葉に遼が驚いている間に、薫子は車を降りた。遼を振り返ることなく早足で玄関へと向かい、扉を開けてもらうとさっさと中に入ってしまった。
あ、いつ......大丈夫、かよ。
遼は閉められた扉を見つめ、再び溜息を吐いた。
世間では、こんな騒ぎになっていることを。
秀一さんと二人、閉ざされた世界で---
今、何を思っているの?
最も起こって欲しくないことが、薫子の脳裏を過る。
ま、さか......心中するなんて、そんなこと......
薫子は強く頭かぶりを振った。
美姫に限って、そんなことするわけない。
絶対に、そんなわけない.....!!!
だが、薫子の全身は震えていた。
震える薫子を見て、遼の胸に後悔の波が押し寄せてくる。
ショック受けねぇわけ、ねぇよな......
一番仲の良かった親友が、こんなことになって。
知らねぇ方がよかったのかもしれない。
けど、こんなに噂になっちまってんだ。いつまでも隠しきれるわけねぇ。
それに、薫子には酷だが、これが現実なんだと。
お前にも降りかかることなのかもしれねぇってことを、分からせねぇと。
起こっちまってから知るんじゃ、遅ぇんだ。
現実を受け止め、強くなれ......薫子。
どうしたら自分が幸せになれるのか、もっと考えてみろ。
---その結果俺を選んだのなら、俺は喜んでお前を受け入れてやる。
だが、薫子にとって、美姫の現実はあまりにも辛すぎた。遼が思っていたよりも、薫子と美姫の絆は深いのだ。無理もない。遼は、薫子と美姫の幼稚舎から小等部時代しか知らない。
中等部、高等部という多感な思春期をお互いの悩みを打ち明け、励まし、乗り越えてきた固いふたりの友情など、遼には想像もつかない。ましてやお互い秘めた恋に苦しみ、辛い思いをしてきた仲だ。
それに、薫子には親しい女友達は美姫しかおらず、ずっと依存してきた。薫子にとって美姫は、肉親よりも近い存在である。そんな美姫が苦境に立たされ、平気でいられる筈がない。
遼は、ずっと押し黙っている薫子に声をかけた。
「大...丈夫か」
その言葉も薫子の耳には届いていないようで、前を見つめたまま蒼白な表情で呆然としている。
「薫子!」
大声をあげた遼に、薫子が肩をビクンと鳴らす。
「ぇ......」
「......お前。大丈夫、か?」
「......う、ん......あり、がと」
薫子はそう言うと、助手席の扉を開けた。
あぁー、やっぱ話すんじゃなかった......
遼が深い後悔に襲われながら、自らも車を降りようと扉に手を掛ける。
「遼、ちゃん。
今日は......ここで、大丈夫だから」
「お、おぉ......」
思いもよらなかった薫子の言葉に遼が驚いている間に、薫子は車を降りた。遼を振り返ることなく早足で玄関へと向かい、扉を開けてもらうとさっさと中に入ってしまった。
あ、いつ......大丈夫、かよ。
遼は閉められた扉を見つめ、再び溜息を吐いた。
0
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。
どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。
婚約破棄ならぬ許嫁解消。
外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。
※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。
R18はマーク付きのみ。
性欲のない義父は、愛娘にだけ欲情する
如月あこ
恋愛
「新しい家族が増えるの」と母は言った。
八歳の有希は、母が再婚するものだと思い込んだ――けれど。
内縁の夫として一緒に暮らすことになった片瀬慎一郎は、母を二人目の「偽装結婚」の相手に選んだだけだった。
慎一郎を怒らせないように、母や兄弟は慎一郎にほとんど関わらない。有希だけが唯一、慎一郎の炊事や洗濯などの世話を妬き続けた。
そしてそれから十年以上が過ぎて、兄弟たちは就職を機に家を出て行ってしまった。
物語は、有希が二十歳の誕生日を迎えた日から始まる――。
有希は『いつ頃から、恋をしていたのだろう』と淡い恋心を胸に秘める。慎一郎は『有希は大人の女性になった。彼女はいずれ嫁いで、自分の傍からいなくなってしまうのだ』と知る。
二十五歳の歳の差、養父娘ラブストーリー。
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R-18】年下国王の異常な執愛~義母は義息子に啼かされる~【挿絵付】
臣桜
恋愛
『ガーランドの翠玉』、『妖精の紡いだ銀糸』……数々の美辞麗句が当てはまる17歳のリディアは、国王ブライアンに見初められ側室となった。しかし間もなくブライアンは崩御し、息子であるオーガストが成人して即位する事になった。17歳にして10歳の息子を持ったリディアは、戸惑いつつも宰相の力を借りオーガストを育てる。やがて11年後、21歳になり成人したオーガストは国王となるなり、28歳のリディアを妻に求めて……!?
※毎日更新予定です
※血の繋がりは一切ありませんが、義息子×義母という特殊な関係ですので地雷っぽい方はお気をつけください
※ムーンライトノベルズ様にも同時連載しています
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる