【R１８】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

吉報

３

　成人式の日以来鬱ぎ込むようになり、婚約者である遼とも会おうとしない薫子の不審な態度は、娘に関心を持たない龍太郎にすら気付かれてしまった。龍太郎はその理由を調べさせ、薫子が風間悠人の息子である悠と恋人関係にあり、成人式の日に駆け落ちまでしようとしていたことが露呈したのだった。

　龍太郎が薫子の部屋へやって来た時に意外にも冷静でいられたのは、駆け落ちが失敗した挙句、悠が事故で意識不明の重体であることを知っていたからだ。

「まさかお前が、わしの目を盗んで風間の息子とは付き合っていたとはな。風間の息子が事故に遭ったのは天罰だ。
　お前は、櫻井家の人間だ。勝手なことは許さん！　これに懲りたら、二度とわしを裏切ろうと思うな。

　もし風間の息子が回復しても、お前たちの仲など絶対に認めんからな！」

　龍太郎はそう言い放ち、薫子の部屋を出て行った。

　てん、ばつ……

　父の言葉を酷いと思いながらも、もし本当にそうだったらどうしようという気持ちも薫子の胸の中にあった。

　対立する風間家の息子だと知りながらも恋に落ち、駆け落ちしようとした天罰で悠が事故に遭ったのだとしたら……

　そう思うと、薫子の身が竦んだ。

　私たちが一緒にいることで、お父様が言うように悠に天罰が下るというのなら、私たちはもう会わないほうがいいのかもしれない。駆け落ちが失敗に終わり、お父様に私たちの仲を知られてしまった今、悠と恋人同士でいられる自信がない。

　離れたく、ないのに。ずっと一緒にいたいのに。
　どうやって、悠との関係を続けていけるのか、分からない。

「やっぱり……会えない」
「薫子！」

　大和が苛立ちを隠しきれず、悲痛な声を上げる。けれど、今度は薫子は布団を頭から被ると、しっかりと両手で握り締めた。

「ご、めん……大和。帰って……」
「なんでだよ、なんで……
　薫子！　悠の意識が戻ったんだぞ！　薫子……お前に会いたいから、悠は必死に戦ったんだぞ！　なんでだよ！！」
「……帰っ、て……お、願い……」

　頑なな薫子の態度に、大和は深い溜息を吐いた。

「また、来る……」

　そう言って、大和は薫子の部屋を後にした。

　大和が去った後、薫子はシーツに頭を押し付けて泣いた。

　悠。悠……会いたい。
　すごく、会い……たい……

　貴方の愛しい顔が見たい。低く穏やかな声が聴きたい。冷たい頬に触れたい。指を絡ませたい。

『すごく会いたかった。愛してる』

　って、伝えたい。

　伝え、たい……のに。

「ｳｯ……ｳｯ……ｳｸﾞｯ……」