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運命の朝
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薫子が考え込んでいる間、遼は美姫に話しかけていた。
「そーいや、美姫。この前せっかくクリスマスパーティーやったのにオーストラリア行ってて来られなかっただろ」
「遼ちゃん...オーストラリアじゃなくて、オーストリアだよ」
『俺、知ってんだぜ』というような得意そうな態度の遼に、美姫が思わず苦笑する。
「あ?ラがあるかないかの違いだけだろが。と、とにかく!今度なんかやる時はお前も来いよな!」
「香西くん、強引過ぎ……」
間違いを指摘されて真っ赤になる遼と、突っ込みを入れる陽子、そんなふたりに笑みを見せる美姫。
そんな光景を、薫子はまるで部外者かのようにボーッと眺めていた。
ふと視線を感じてその先を見つめ返すと、悠の視線とぶつかった。悠は薫子の視線が向けられたのを確認すると、電話をする仕草をした後、何事もなかったかのように大和と話し出した。
鞄の中からスマホを取り出すと、緑のランプが点滅している。スマホのLINEのアイコンを押すと、悠からのメッセージが表示された。
『香西には、この後俺から駆け落ちのことは話すつもりだから』
思いもよらなかった悠の言葉に、思わず薫子はスマホを落としてしまった。
「ったく、相変わらずどんくせーな」
遼が薫子のスマホを拾い上げ、渡した。幸い画面が裏向きになっていた為、遼に読まれることはなかったものの、薫子の心臓が破裂するのではないかと思う程に激しく鳴り響いていた。
「んじゃ、俺そろそろ行くわ。またパーティーでな!」
遼は美姫に、今度の集まりには参加するようにと念押しすると去って行った。その後ろ姿を見つめていると、遼の歩いていく先に悠が歩み寄るのが見えた。
悠......本当に、遼ちゃんに話すつもりなの!?
薫子は血の気が引くのを感じ、逃げたい気持ちに囚われながらも二人から目を離せずにいた。
遼は悠と大和を認めると、嬉しそうにデジカメを持った手を振る。 だが悠は無表情のまま遼に何か話しかけ、それを聞いている遼の表情から笑顔が消えた。
薫子は、そんな二人の様子を見つめているだけで肋骨にまで響くほどの動悸が激しく波打っていた。
悠と一緒にいた大和は、悠と遼に手を振ると去って行った。
悠と遼は話し合った後、悠は会場出口へと向かい、遼は誰かを探すかのように会場をうろうろと歩き回り始めた。
大丈夫、なのかな......
薫子は胸の前で両手を握り締めたまま、ふたりが別れた後ですら身動き出来ずにいた。
「そーいや、美姫。この前せっかくクリスマスパーティーやったのにオーストラリア行ってて来られなかっただろ」
「遼ちゃん...オーストラリアじゃなくて、オーストリアだよ」
『俺、知ってんだぜ』というような得意そうな態度の遼に、美姫が思わず苦笑する。
「あ?ラがあるかないかの違いだけだろが。と、とにかく!今度なんかやる時はお前も来いよな!」
「香西くん、強引過ぎ……」
間違いを指摘されて真っ赤になる遼と、突っ込みを入れる陽子、そんなふたりに笑みを見せる美姫。
そんな光景を、薫子はまるで部外者かのようにボーッと眺めていた。
ふと視線を感じてその先を見つめ返すと、悠の視線とぶつかった。悠は薫子の視線が向けられたのを確認すると、電話をする仕草をした後、何事もなかったかのように大和と話し出した。
鞄の中からスマホを取り出すと、緑のランプが点滅している。スマホのLINEのアイコンを押すと、悠からのメッセージが表示された。
『香西には、この後俺から駆け落ちのことは話すつもりだから』
思いもよらなかった悠の言葉に、思わず薫子はスマホを落としてしまった。
「ったく、相変わらずどんくせーな」
遼が薫子のスマホを拾い上げ、渡した。幸い画面が裏向きになっていた為、遼に読まれることはなかったものの、薫子の心臓が破裂するのではないかと思う程に激しく鳴り響いていた。
「んじゃ、俺そろそろ行くわ。またパーティーでな!」
遼は美姫に、今度の集まりには参加するようにと念押しすると去って行った。その後ろ姿を見つめていると、遼の歩いていく先に悠が歩み寄るのが見えた。
悠......本当に、遼ちゃんに話すつもりなの!?
薫子は血の気が引くのを感じ、逃げたい気持ちに囚われながらも二人から目を離せずにいた。
遼は悠と大和を認めると、嬉しそうにデジカメを持った手を振る。 だが悠は無表情のまま遼に何か話しかけ、それを聞いている遼の表情から笑顔が消えた。
薫子は、そんな二人の様子を見つめているだけで肋骨にまで響くほどの動悸が激しく波打っていた。
悠と一緒にいた大和は、悠と遼に手を振ると去って行った。
悠と遼は話し合った後、悠は会場出口へと向かい、遼は誰かを探すかのように会場をうろうろと歩き回り始めた。
大丈夫、なのかな......
薫子は胸の前で両手を握り締めたまま、ふたりが別れた後ですら身動き出来ずにいた。
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