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衝撃
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銀色に輝くオペラハウスのような外観のコンサートホールの前に車が停まり、運転手が開けてくれた扉から薫子は手を差し出し、上品に足を揃えて降りた。
花束を手に入口を抜け、ロビーを通り、扉の開かれたホールへと足を踏み入れる。チケットに書かれた席の番号と座席の上についているプレートの番号を確認しながら歩く。
あ、この先だ......
薫子が視線を向けた座席の横に、悠の後ろ姿が見えた。それを認めた途端、薫子の胸が高鳴り、足が自然と速まる。
薫子が悠のすぐ傍に立つと、閉じていた瞼が開かれた。
「ごめん、ちょっと寝てた」
その言葉にふふっと薫子が笑みを溢す。
悠は学年で1番の成績でありながら、よく授業中に居眠りをしていた。よくそのことで大和に怒られ、「睡眠時間が足りないから...」と悠は毎回言い訳をしていた。
薫子が通りやすいように悠が立ち上がった。
前の席と悠の立っている狭い隙間を縫うようにして通り過ぎる際に、悠が軽く薫子の腰に触れる。ビクッと震えた薫子に、今度は悠が微笑んだ。
「笑った、仕返し」
「もぉっ」
困った顔を見せながらも、心臓は壊れそうなぐらいバクバクと早鐘を鳴らし、嬉しくて頬が緩みそうになる。
「前に秀一さんのコンサートに連れてきてもらったことがあったんだけどね。その時は中等部だったから、久しぶりに秀一さんのコンサートに来られて楽しみだなって思って」
席に着くと、薫子は動揺を隠すようにして悠に話しかけた。
「そっか。俺はCDは聴いたことはあったけど、コンサートは初めてだ」
少しの間の後、
『一緒に聴けて、嬉しい』
二人同時に同じ言葉を発した。
「ふふっ、同じこと、思ってたね」
「だね」
すごく、嬉しい。
薫子は幸せに浸りつつも、秀一のコンサートに来た目的である美姫の姿を目で追った。美姫であれば座っているであろうVIP席には、彼女の姿は見えなかった。
美姫、来てないのかな......
薫子は肩を落とした。
客席が暗くなり、舞台にスポットライトが当てられた。薫子は思わず生唾を飲み込んだ。
舞台の端から秀一が登場した途端、会場には拍手と共に、黄色い声も上がった。周りを見渡すと、クラシックのコンサートにしては若い女性客が目立つ。「ピアノ界の貴公子」と呼ばれる所以なのだろう。
秀一は優美に舞台の真ん中まで歩き、艶やかな笑顔を見せてお辞儀をするとピアノの前に座った。薫子はその様子を目で追いながら、何か違和感を覚えた。
秀一さん、いつもと様子が変わらないように見えるけど、でもどこか違う気がする……うまくは言えないけど。
もしかして、美姫のことが関係してるのかな......
薫子は、憂慮せずにはいられなかった。
花束を手に入口を抜け、ロビーを通り、扉の開かれたホールへと足を踏み入れる。チケットに書かれた席の番号と座席の上についているプレートの番号を確認しながら歩く。
あ、この先だ......
薫子が視線を向けた座席の横に、悠の後ろ姿が見えた。それを認めた途端、薫子の胸が高鳴り、足が自然と速まる。
薫子が悠のすぐ傍に立つと、閉じていた瞼が開かれた。
「ごめん、ちょっと寝てた」
その言葉にふふっと薫子が笑みを溢す。
悠は学年で1番の成績でありながら、よく授業中に居眠りをしていた。よくそのことで大和に怒られ、「睡眠時間が足りないから...」と悠は毎回言い訳をしていた。
薫子が通りやすいように悠が立ち上がった。
前の席と悠の立っている狭い隙間を縫うようにして通り過ぎる際に、悠が軽く薫子の腰に触れる。ビクッと震えた薫子に、今度は悠が微笑んだ。
「笑った、仕返し」
「もぉっ」
困った顔を見せながらも、心臓は壊れそうなぐらいバクバクと早鐘を鳴らし、嬉しくて頬が緩みそうになる。
「前に秀一さんのコンサートに連れてきてもらったことがあったんだけどね。その時は中等部だったから、久しぶりに秀一さんのコンサートに来られて楽しみだなって思って」
席に着くと、薫子は動揺を隠すようにして悠に話しかけた。
「そっか。俺はCDは聴いたことはあったけど、コンサートは初めてだ」
少しの間の後、
『一緒に聴けて、嬉しい』
二人同時に同じ言葉を発した。
「ふふっ、同じこと、思ってたね」
「だね」
すごく、嬉しい。
薫子は幸せに浸りつつも、秀一のコンサートに来た目的である美姫の姿を目で追った。美姫であれば座っているであろうVIP席には、彼女の姿は見えなかった。
美姫、来てないのかな......
薫子は肩を落とした。
客席が暗くなり、舞台にスポットライトが当てられた。薫子は思わず生唾を飲み込んだ。
舞台の端から秀一が登場した途端、会場には拍手と共に、黄色い声も上がった。周りを見渡すと、クラシックのコンサートにしては若い女性客が目立つ。「ピアノ界の貴公子」と呼ばれる所以なのだろう。
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秀一さん、いつもと様子が変わらないように見えるけど、でもどこか違う気がする……うまくは言えないけど。
もしかして、美姫のことが関係してるのかな......
薫子は、憂慮せずにはいられなかった。
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