【R１８】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

鉢合わせ

１１

「ここのデザートの種類、ハンパねぇ。ほんっと、ここ、大学のカフェテリアとは思えねぇな」

　トレーに所狭しと様々な種類のデザートの皿を載せて遼が戻ってきた。給仕係に運んでもらうのが性に合わない遼は、自分でトレーを持っている。

　テーブルにトレーを置くと、遼は片っ端からデザートに手をつけ始めた。

　遼ちゃん...すっかりいつもの感じに戻ってる。

　先ほどまで一悶着あったと思えないほど普通の態度に薫子は内心驚きつつも、あとを引かない彼の性格に感謝もした。

　遼が戻ってくると同時に大和が席を立つ。

「じゃ、俺らはそろそろ行くわ。おい、悠。行くぞ」
「あぁ......」

　悠が立ち上がると、まだ座っている薫子に声をかけた。

「薫子も、急いだ方がいい。もうすぐ３限が始まる」

　そう言われて腕時計に視線を落とすと、３限が始まるまであと５分だった。講義の行われるC棟はここから遠く、かなり急がないと間に合わない。

「いけない！」

　薫子は慌てて立ち上がった。

「え、えっ...おい、待てよ。なぁ、次の講義ってなんだ？」

　焦ったように大和に聞く遼に、呆れたように大和が溜息をついた。

「国際経済学入門。必修だぞ。ちゃんと自分の受ける科目ぐらい把握しとけよ。
　じゃ、後でな」

　そう言って去ろうとする大和の袖を、遼が掴んで引き止めた。

「ま、待て...俺も一緒に行く。てか、どこで講義あんのか知らねぇし、連れてけ」
「だぁーーーっ、何やってんだよ。てか、早く食えよ」

　そんなやり取りをオロオロしながら見ていた薫子に、悠が視線を投げかけた。

「ここは大丈夫だから、行った方がいい」

　悠に頷くと、薫子は不安に思いつつも、急いで講義のあるビルへと向かうために立ち去った。