【R１８】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

鉢合わせ

７

「お前ってさ......女みてぇな面つらしてるよな。肌とか白くてツルツルしてそうだし、目とかデケェし、睫毛なげぇし......てか、そこらの女よりも綺麗だよな」

　お、んなって......

　薫子も大和も遼のその言葉に気が抜けるよりも、唖然となり絶句したが、悠だけは相変わらずの無表情だった。

「アメリカだったら間違い無く、その手の男どもに目ぇつけられんぞ。ラッキーだったな、日本で。
　ってか、俺もある意味ゲイには人気あんだけどな。向こうで、何度か誘われたことあんだよ。俺、大学入ってすぐ寮に住んでたんだけどさぁ、その寮がすげぇの...」

　遼はそれから自分がゲイに誘われた時の話でひとり盛り上がっていた。話が思わぬ方向に向かっていくのを、薫子は呆然と見つめる。

　大和は目の前の悠の眉がピクリと動いたのを見て、彼が不快に思っていることを察しつつも、心の中で大きく息を吐いた。

　何話すのかと思ってヒヤヒヤしたけど、修羅場にならなくて良かったぜ...まぁ、確かに悠は綺麗な顔してるけど、女みたいとか言われて、明らかに悠の機嫌が悪くなってんのがウケる。
　ったく、遼はそういうとこちっとも変わんねぇな。

　パーティーの際の遼のあの態度との違いに辟易しつつ、変わらない遼の言動に安心感も覚えた。だが、薫子と悠の今後を思うと、遼の存在がどう二人の関係に影響を与えるのか心配せずにはいられない。　

　遼は一通りアメリカでの思い出話を披露した後、思い出したように言った。

「いや、でも日本人の女って綺麗な男が好きなんだよな。こっちの雑誌とか見てても、芸能人とかモデルって女っぽいやつばっか。そういや、この前のパーティーでお前の周り、女がすっげぇたかってたな！俺がちっちぇ頃に見てた朝ドラの女優、なんだっけ？名前忘れたけど、あいつとか超気に入られてたっぽいじゃん。

　あ！つーか、薫子も見てただろーが！」

　え...遼ちゃん......私が悠を見つめてたの、気づいてたんだ！？

　遼がアメリカでの話をし始めてからすっかり安心していた気持ちが、急に緊張感で収縮していく。

　遼に気づかれていたことに対してもだが、悠にまでパーティーでこっそり彼を見つめていたのを知られてしまったことにも薫子は大いに動揺し、心の中で狼狽した。

　ど、どうしよう...なんて言い訳すればいいの......！？

　大和が助け舟を出す。

「遼は知らないだろうけど、悠が中等部で入学してから俺たち友達なんだよ。友達がパーティーにいれば、そりゃ気になるだろ？
　親父さん同士が仲悪いから声をかけることは出来ないけど......」
「なぁーんだ、そういうことか」

　大和の言葉に遼が納得したように椅子に凭れた。

　その言葉にホッとしていると、

「お前なー、ダチならダチって早く言えよ」

　遼が薫子の頭を軽く叩はたいた。それを見ていた悠の肩が震え、テーブルについていた拳が固く握られる。

　悠...お願い、何も言わないで......

　悠の静かな怒りを感じて、薫子は心の中で祈った。