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逢い引き
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けれど、こんな状況で逃げ出すことも出来ず、薫子は必死に弁明した。
「あ、実は……あの人……初めて会った訳じゃなくて、幼稚舎から小等部まで同じだったの……」
「ふぅん、そうなんだ……」
悠の眉毛が僅かにピクッと跳ねた。
あっ、悠の機嫌が悪くなってる……
いつも冷静で穏やか、大和に言わせれば無関心で無気力。けれど、薫子に対しては優しくてとびきり甘い悠の意外な一面に、ドキドキと胸が高鳴る。
これって……やきもち、なのかな……
悠が、私の為に感情を昂ぶらせていることを嬉しく感じてしまって……ごめんね、悠……
でも、嬉しい……
「だからって……あれ程馴れ馴れしくは、ならない……」
悠の白くて冷たい指先が薫子の頬をスッと撫でる。その冷たさと感触にビクッと肌を震わせた。
もう一方の手が伸びて、薫子の頬を両手で包み込んだ。悠の手から伝わる温度は低いはずなのに、薫子の躰はそれに反して熱を上げていく。
悠の稜線の美しい鼻筋が近づいてきたかと思うと、おでこ同士がくっついた。
おでこも、冷たい……
目前に迫る悠の漆黒の瞳の奥に灯った熱のようなものを感じた刹那……
「ンフ……」
思わず漏れる色香を伴った声。まるで自分の声ではないような、『女』を感じさせる声に薫子は戸惑った。
や、やだ…こんな、声……はしたない……悠に、嫌われちゃう。
そんな思いとは裏腹に、薫子の下腹部の中心、その奥から淫らな欲がねっとりと沸き上がってくるのを感じる。
お願いっ…こんな私、気付か、ないでっっ……!!
悠の瞳を見つめていられず、薫子はギュッと強く瞳を閉じた。
「目を閉じないで、俺を見て……」
おでこが離れた感触に薫子は瞳を開いた。
「ぁ……」
悠の漆黒の瞳に真っ直ぐ射抜かれ、瞬きすることも許されないまま、薫子の唇が奪われる。冷たくて、少し乾いた悠の唇が薫子の唇の熱に溶かされるように温かくなるのを感じる。いつもは優しく触れる唇が、今日はお互いの熱を混ぜ合わせる程の強さで押し付けられる。
長い、長い……唇を合わせるだけの口づけ。それは、悠への愛しさを募らせ、幸せを与えてくれる時間。
悠の唇が離れ、寂しさを感じる間もなく、今度は小鳥が餌を啄むように、悠の唇が角度を変えながら何度も何度も、薫子の唇を食むように短い口づけを与えられる。
「ハッ…ハァッ……」
悠……どうし、ちゃったの……?
高校生で付き合ってから今まで、唇を軽く重ねるような口づけしかしたことがなかったのに……
息遣いが乱される。胸の鼓動が悠に聞こえてしまうのではないかと思うぐらい激しく上下しているのが分かる。
こんな口づけ、だめ……
「もっと……」
悠の甘い囁きに膝から崩れ落ちそうになるのをぐっと堪えると、唇の輪郭を尖った舌先でなぞられる。
「…っくぅ……っっ」
薫子は拳を固く握り、全身を襲う震えを必死で抑えた。
「ごめん……悪戯が過ぎた……」
いつのまにか目尻に溢れていた涙を、悠の指先が優しく拭い取った。
そうじゃ、ないの……
悠を見上げてふるふると首を横に振った。
いつもよりも激しい口づけにビックリしたけど、嫌じゃ…なかった。そう、悠に伝えたいのに…声に、ならない……
「あ、実は……あの人……初めて会った訳じゃなくて、幼稚舎から小等部まで同じだったの……」
「ふぅん、そうなんだ……」
悠の眉毛が僅かにピクッと跳ねた。
あっ、悠の機嫌が悪くなってる……
いつも冷静で穏やか、大和に言わせれば無関心で無気力。けれど、薫子に対しては優しくてとびきり甘い悠の意外な一面に、ドキドキと胸が高鳴る。
これって……やきもち、なのかな……
悠が、私の為に感情を昂ぶらせていることを嬉しく感じてしまって……ごめんね、悠……
でも、嬉しい……
「だからって……あれ程馴れ馴れしくは、ならない……」
悠の白くて冷たい指先が薫子の頬をスッと撫でる。その冷たさと感触にビクッと肌を震わせた。
もう一方の手が伸びて、薫子の頬を両手で包み込んだ。悠の手から伝わる温度は低いはずなのに、薫子の躰はそれに反して熱を上げていく。
悠の稜線の美しい鼻筋が近づいてきたかと思うと、おでこ同士がくっついた。
おでこも、冷たい……
目前に迫る悠の漆黒の瞳の奥に灯った熱のようなものを感じた刹那……
「ンフ……」
思わず漏れる色香を伴った声。まるで自分の声ではないような、『女』を感じさせる声に薫子は戸惑った。
や、やだ…こんな、声……はしたない……悠に、嫌われちゃう。
そんな思いとは裏腹に、薫子の下腹部の中心、その奥から淫らな欲がねっとりと沸き上がってくるのを感じる。
お願いっ…こんな私、気付か、ないでっっ……!!
悠の瞳を見つめていられず、薫子はギュッと強く瞳を閉じた。
「目を閉じないで、俺を見て……」
おでこが離れた感触に薫子は瞳を開いた。
「ぁ……」
悠の漆黒の瞳に真っ直ぐ射抜かれ、瞬きすることも許されないまま、薫子の唇が奪われる。冷たくて、少し乾いた悠の唇が薫子の唇の熱に溶かされるように温かくなるのを感じる。いつもは優しく触れる唇が、今日はお互いの熱を混ぜ合わせる程の強さで押し付けられる。
長い、長い……唇を合わせるだけの口づけ。それは、悠への愛しさを募らせ、幸せを与えてくれる時間。
悠の唇が離れ、寂しさを感じる間もなく、今度は小鳥が餌を啄むように、悠の唇が角度を変えながら何度も何度も、薫子の唇を食むように短い口づけを与えられる。
「ハッ…ハァッ……」
悠……どうし、ちゃったの……?
高校生で付き合ってから今まで、唇を軽く重ねるような口づけしかしたことがなかったのに……
息遣いが乱される。胸の鼓動が悠に聞こえてしまうのではないかと思うぐらい激しく上下しているのが分かる。
こんな口づけ、だめ……
「もっと……」
悠の甘い囁きに膝から崩れ落ちそうになるのをぐっと堪えると、唇の輪郭を尖った舌先でなぞられる。
「…っくぅ……っっ」
薫子は拳を固く握り、全身を襲う震えを必死で抑えた。
「ごめん……悪戯が過ぎた……」
いつのまにか目尻に溢れていた涙を、悠の指先が優しく拭い取った。
そうじゃ、ないの……
悠を見上げてふるふると首を横に振った。
いつもよりも激しい口づけにビックリしたけど、嫌じゃ…なかった。そう、悠に伝えたいのに…声に、ならない……
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