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お姉様の婚約者を好きになってしまいました……どうしたら、彼を奪えますか?

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 リリアは、私たちの愛情を受けてすくすくと育っていきました。オリバー様とソフィアお姉様の娘だと思えないほど、リリアは天真爛漫で溌剌としていて、少し口が悪く……レディーとしての教育が必要なようです。

 駆け回るリリアに年老いたお父様やお母様はほとほと手を焼き、メイドですら根を上げてしまいます。私は学校が終わるとオリバー様の元を訪ね、リリアの遊び相手をしていましたが、そこに度々アダム様も加わりました。

 きっとリリアの口が悪いのは、アダム様の影響ですわね……

 あっというまに7年の月日が経ち、年頃となった私の元には日々、婚約の申し込みが舞い込んできますが、断り続けています。

 だって、私の心を動かすのは、オリバー様しかいらっしゃらないんですもの。

 夜、リリアを寝かしつけてからオリバー様の執務室を訪ねました。

「オリバー様、リリアが眠りましたわ」
「あぁ、ありがとう」

 仕事の手を休めることなく背を向けたまま返事をなさるオリバー様に、こちらを向いていただきたくて、話を続けます。

「リリアったら、またベッドでジャンプしていましたのよ。ようやく落ち着かせて本を読み始めましたら、次々に本を持ってきて眠ろうとしませんし……大変でしたわ」
「エミリー、すまないね……いつも」

 ようやく、オリバー様が私に振り向いて下さいました。

「オリバー様……」
「なんだい、エミリー」
「私、16になりましたのよ。ソフィアお姉様とオリバー様が婚約を結んだのと同じ年です」

 オリバー様の肩が僅かに震え、硬く微笑みました。

「あぁ、もうそんなに月日が経つんだね……君は日々、ソフィアに面影がそっくりになっていくよ。美しく、成長したね」

 オリバー様の瞳が私を通じてソフィアお姉様を見つめているのだと思うと、胸が引き裂かれんばかりに痛みます。

 それでも、私は……

「私、を……オリバー様の婚約者にしてくださいませんか? ソフィアお姉様の代わりでもいいですから……私を、どうか愛してくださいませ!!」
「エミリー……」

 オリバー様は困ったように眉を寄せました。オリバー様の目尻には皺が刻まれ、まだお若いですのに髪には白いものが混じっています。

「エミリー。僕はおじさんだよ」
「おじさん、だなんて!」
「そうだ。僕とエミリーの年よりも、エミリーとリリアの年の方が近いのが、何よりの証拠だ」

 確かに、オリバー様とは12歳差、リリアとは7歳差、ですけれど……

「ッッ年齢など、関係ありませんわ!!」
「それに、子持ちでもある」
「今だってリリアのお世話は、私がしているじゃありませんか!」
「だから……申し訳ないと思っているんだ。エミリーには、学生らしく楽しい生活を送ってほしい。
 そして……君に相応しい男と結婚してもらいたいんだ。僕は君の兄として、心からエミリー、君の幸せを願っている」
「そんなの……私、少しも望んでいませんわ!!
 私が愛しているのは、オリバー様ですのに!!」

 泣きながら、オリバー様の部屋を飛び出しました。

 体は成長しても、私の心は成長していません。オリバー様をひとめ見た時の、ときめきを抱えたままなのです。

 家に戻った私の様子を見て、お父様とお母様がリビングへと誘いました。

「エミリー……まだ、オリバーのことを諦められないのかい?」
「貴女の気持ちは分かるけれど、エミリー……お父様とお母様は貴女に幸せになってほしいの」

 お父様とお母様が心から私を心配なさっている気持ちが伝わり、胸が痛みます。

「何を言っていらっしゃいますの? 私、大好きなお方と一緒に過ごせて幸せですのよ」
「エミリー……」


 翌朝、登校するとアダム様に呼び出されました。

「エミリー、お前まだ兄様のことが好きなのかよ! もう諦めろよ!
 あんなおっさん好きでいても、いいことなんてないぞ!」

 どうして、みんなして私のオリバー様への恋心を止めようとするのでしょう。止めたくて、止められるものではないですのに……

 突然、アダム様に抱き締められました。

「俺に、しろよ……」
「ぇ」

 アダム、様?

「俺が、お前のこと幸せにしてやるから……
 エミリー、俺はお前のことが……ずっと、好きだったんだ」
「アダム、様……」

 私は、そっとアダム様の手を解きました。

「たとえ、オリバー様が一生振り向いてくださらなくても……私には、オリバー様しかいらっしゃらないんです」
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