お姉様の婚約者を好きになってしまいました……どうしたら、彼を奪えますか?

奏音 美都

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お姉様の婚約者を好きになってしまいました……どうしたら、彼を奪えますか?

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 私は、毎回オリバー様が我が家にいらした時は顔を出し、オリバー様に話しかけ、お出かけする際にはご一緒しました。

 ソフィアお姉様もオリバー様も、そんな私に嫌な顔ひとつ見せず、いつも笑顔で迎え、受け入れてくださいます。

 自分が邪魔者だということは、十分分かっています。

 けれど……オリバー様とお会いしたその瞬間に、私は彼を運命の人だと感じてしまったのです。自分に嘘はつけません。

 それから2年経ったある日、お父様とお母様に呼ばれました。私だけを呼んでお話するなんて、今までなかったことです。

「エミリー、ソフィアがオリバーと結婚することが決まったんだ」
「ソフィアお姉様がオリバー様とご結婚!?」

 婚約を結ばれているのですから、その先に婚姻があるのは当然のこと……ですが、私はその現実からずっと目を逸らしていました。

「それで、ご結婚は……いつ、ですの?」
「ふたりが卒業したら、すぐに式をあげるつもりだ」
「そんな……」

 卒業式は、あと1週間後に迫っています。

「エミリーに話したらショックを受けるかもしれんと思って、今まで隠していたのだが……隠し切れるのものではないと思ってな」
「エミリー、オリバー様にはね……あなたより2つ年上の弟君がいらっしゃるの。ですから、もしあなたが望むのであれば、弟君と婚約を結ぶことも……」
「弟君なんて! オリバー様ではありませんわ!!」

 私は泣きながら部屋に駆けて行きました。

 ソフィアお姉様のことは大好きです。お姉様に幸せになっていただきたい……
 ですが、その相手がオリバー様なのだと思うと、胸が痛くて仕方ないのです。

「ウッ、ウッ……ウワァァァァン!! ウェェェン、ウウッ、ウゥッ……ッグ」

 すると、扉がノックされ、ソフィアお姉様の声が聞こえました。

「エミリー、いいかしら?」
「ッグ……ソフィア、お姉様……」

 静かに扉が開き、お姉様が入ってきました。

「私の可愛いエミリー。あなたを泣かせてしまって、ごめんなさい。
 けれど、私も……オリバー様だけはお譲りすることはできませんの」
「ウッ、ウッ、ウッ……」
「貴女は私にとって大切な妹。どうか、結婚式に出席してほしいの……お願いですわ」

 結婚式当日。私はフラワーガールとして、白いドレスを着て立っていました。

 大好きなお姉様の願いを拒絶することなど、できませんもの。それに……オリバー様の晴れ姿も見なければいけませんし。

 私ともうひとり、オリバー様の弟君のアダム様がリングボーイとして一緒に歩きます。

「お前……可愛いな。俺の婚約者にしてやってもいいぞ」
「フンッ、結構よ!」

 そんなやりとりをしていると、クスクスとソフィアお姉様が笑いながら歩いていらっしゃいました。

「お姉様、綺麗……」

 純白のウェディングドレス に身を包んだソフィアお姉様は、まるで童話の世界のプリンセスのように美しく輝いていらっしゃいました。

「さぁおふたり、今日はどうぞよろしくお願いいたしますわね」

 お姉様のお言葉に頷きます。お父様がソフィアお姉様を見て感激の涙を流し、それから腕を組みました。

 パイプオルガンの音が扉越しに響き、厳かに教会の扉が開きます。

 真っ赤な絨毯が敷かれた長いヴァージンロードをソフィアお姉様とお父様が歩く前を、花を散らしながら歩き、道を清めていきます。

 その先には……純白のタキシードに身を包んだオリバー様が凛と立っていらっしゃいました。それから、私を見て微笑まれます。その笑顔に、キュンと胸が締め付けられました。

 私、やっぱりオリバー様が好き……

 オリバー様の元まで着くと、頭を撫でられました。

「素敵なドレスだね。エミリー、今日はフラワーガールありがとう」
「オリバー様!!」
「なんだい?」
「私と、駆け落ちしてくださいませ!!」

 私の大きな声が教会中に響き、会場が笑いに包まれました。異議を唱えるものは誰もおらず、皆温かい目で私を見つめ、微笑ましそうな表情を浮かべています。

 違う! 私は……本気、ですのに……

 悔しくて涙が溢れてきます。

 すると、オリバー様が私の目尻をそっと指で拭いました。

「エミリー、君を……とても大切に思っているよ、妹としてね」

 これほどはっきりと言われたのは、初めてでした。

「ッグ……」
「エミリー、おいで」

 お父様が私を抱き抱え、膝に乗せられて席に着きます。

 それでも、まだ諦められないなんて……なんて私は諦めの悪い女なのでしょう。
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