30 / 41
シンデレラがガラスの靴を履きましたわ
しおりを挟む
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……ック」
痛い……痛い、けれど……私がやらなければ。
早く、シンデレラの元へ……
痛みを抑えて階段を上っていきます。息が上がり、頭がクラクラします。
「ぁと……もう、少し……ハァッ」
時間が、ありませんわ。
ようやく階段を上り切りましたが、扉の向こうからは何も聞こえてきません。
扉に寄りかかり、シンデレラに声を掛けます。
「シン、デレラ……」
「……ぇ。アナ、スタシア? アナスタシアなの!?」
大声を上げたシンデレラに「シーッ」と、声を潜めるように言います。
「今、鍵を……」
扉の隙間から鍵を差し入れると、シンデレラが受け取りました。
ガチャガチャッと音が響き、扉が開きます。
「ありがとー! シンデ……アナスタシア!!
あんたは私の恩人よ!!」
シンデレラが私に飛びつきます。
「さぁ、急いで。大公様が帰られる前に」
「分かったわ!」
シンデレラがガニ股で階段を大急ぎで下りていきました。
これで、いい。
これでいいのですわ……
これで、シンデレラと王子様はいつまでも幸せに……暮らしていけるのですわ。
ふと、開いた屋根裏部屋を見回しますと……そこには、ガラスの靴が置かれていました。
まぁ、大変! これがなければシンデレラが舞踏会の時のあの娘だと証明するものがありませんわ!!
その時、シンデレラの声が響いてきました。
「大公様、お待ちを!! お待ちを!!
私、私にもガラスの靴を履かせて!!」
あぁ、急がなければなりませんわ……
私はガラスの靴を手に取り、再びジンジンと痛む足を堪えながら階段を下りていきました。
階段を下りていくと……
あぁ、なんてことでしょう。
椅子に掛けるシンデレラの元へとガラスの靴を運ぼうとする従者の足元へお母様が杖を出して引っ掛け、従者は躓いてガラスの靴が飛び、床に落ちて粉々に割れてしまいました。
大公様が床へダイブし、粉々になったガラスの靴を掻き集めます。
「そ、そんな……あぁ、なんてことだぁ……割れてしまったぁ!! あぁ、大変なことになった……陛下は、なんと言われるか」
悲愴な様子で嘆かれる大公様に、お母様がニヤリと微笑みました。
その隙をつき、私はシンデレラに忍び寄ると、ドレスのポケットからそっとガラスの靴を取り出し、シンデレラに渡しました。
シンデレラが「ぁ」と小さく叫ぶと頷き、エプロンのポケットにガラスの靴を入れます。
大公様が膝立ちになり、ご自分の首に手を掛けながら叫びます。
「国王陛下は、きっとこの首を撥ねられる~っっ!!」
シンデレラがにっこりと笑います。
「大丈夫です、大公様」
「もう、だめだぁ。一巻の終わりだぁ」
大公様は床に崩れ落ち、涙を流します。
そんな大公様に、シンデレラがしたり顔でガラスの靴をポケットから取り出すと、彼に差し出しました。
「私……もう片方、持ってるんです!」
差し出されたガラスの靴を手に、大公様が感激の表情を浮かべられました。それとは逆に、お母様は驚きと憤怒の表情でガラスの靴を見つめます。
大公様がシンデレラの足にガラスの靴を履かせました。
当然、ガラスの靴はシンデレラの足に吸い付くようにぴったりと合いました。
「う、嘘っっ!! こんなの、絶対嘘よ!!
ねぇ、お母様ぁ。なんとかしてよー!!」
悔しがるドリゼラお姉様がお母様に訴えますが、お母様はあまりのショックに言葉も出ないようです。
大公様が満足そうに微笑みます。
「この娘こそが、国王陛下、ならび王太子殿下が求めていた娘だ!」
「なん、て……ことでしょう」
お母様が立ち眩みを覚え、手を額に当て、よろよろと後退りしました。
「はい。私こそがあの時、舞踏会で王子様と踊った娘ですわ」
シンデレラは嵌ったガラスの靴を誇らしげに見せびらかしました。
「そうか、名はなんと申す?」
「シンデレラと申します」
「よし。ではシンデレラ、国王陛下の命により、そなたをこれから王宮へと連れてまいる。よいな」
「もちろんですわ」
シンデレラはにっこりと微笑んだ。
「何か、持っていきたい物があれば、今すぐ持ってくるように」
「いいえ。何もありませんわぁ。必要なものは、王子様にすべて買っていただきますものぉ」
大公様にそう答えると、シンデレラは嬉しそうに満面の笑みを浮かべました。
「では、行くぞ」
「ではお母様、お姉様方、ご機嫌よう♪」
シンデレラはニヤッと笑うとくるりと背を向けました。
大公様のエスコートにより、シンデレラは馬車に乗せられ、去って行きました。窓から馬車を見送ります。
これで……いいんですわよ、ね。
さようなら、シンデレラ。
さようなら……プリンス・チャーミング。
どうか、お幸せに……
痛い……痛い、けれど……私がやらなければ。
早く、シンデレラの元へ……
痛みを抑えて階段を上っていきます。息が上がり、頭がクラクラします。
「ぁと……もう、少し……ハァッ」
時間が、ありませんわ。
ようやく階段を上り切りましたが、扉の向こうからは何も聞こえてきません。
扉に寄りかかり、シンデレラに声を掛けます。
「シン、デレラ……」
「……ぇ。アナ、スタシア? アナスタシアなの!?」
大声を上げたシンデレラに「シーッ」と、声を潜めるように言います。
「今、鍵を……」
扉の隙間から鍵を差し入れると、シンデレラが受け取りました。
ガチャガチャッと音が響き、扉が開きます。
「ありがとー! シンデ……アナスタシア!!
あんたは私の恩人よ!!」
シンデレラが私に飛びつきます。
「さぁ、急いで。大公様が帰られる前に」
「分かったわ!」
シンデレラがガニ股で階段を大急ぎで下りていきました。
これで、いい。
これでいいのですわ……
これで、シンデレラと王子様はいつまでも幸せに……暮らしていけるのですわ。
ふと、開いた屋根裏部屋を見回しますと……そこには、ガラスの靴が置かれていました。
まぁ、大変! これがなければシンデレラが舞踏会の時のあの娘だと証明するものがありませんわ!!
その時、シンデレラの声が響いてきました。
「大公様、お待ちを!! お待ちを!!
私、私にもガラスの靴を履かせて!!」
あぁ、急がなければなりませんわ……
私はガラスの靴を手に取り、再びジンジンと痛む足を堪えながら階段を下りていきました。
階段を下りていくと……
あぁ、なんてことでしょう。
椅子に掛けるシンデレラの元へとガラスの靴を運ぼうとする従者の足元へお母様が杖を出して引っ掛け、従者は躓いてガラスの靴が飛び、床に落ちて粉々に割れてしまいました。
大公様が床へダイブし、粉々になったガラスの靴を掻き集めます。
「そ、そんな……あぁ、なんてことだぁ……割れてしまったぁ!! あぁ、大変なことになった……陛下は、なんと言われるか」
悲愴な様子で嘆かれる大公様に、お母様がニヤリと微笑みました。
その隙をつき、私はシンデレラに忍び寄ると、ドレスのポケットからそっとガラスの靴を取り出し、シンデレラに渡しました。
シンデレラが「ぁ」と小さく叫ぶと頷き、エプロンのポケットにガラスの靴を入れます。
大公様が膝立ちになり、ご自分の首に手を掛けながら叫びます。
「国王陛下は、きっとこの首を撥ねられる~っっ!!」
シンデレラがにっこりと笑います。
「大丈夫です、大公様」
「もう、だめだぁ。一巻の終わりだぁ」
大公様は床に崩れ落ち、涙を流します。
そんな大公様に、シンデレラがしたり顔でガラスの靴をポケットから取り出すと、彼に差し出しました。
「私……もう片方、持ってるんです!」
差し出されたガラスの靴を手に、大公様が感激の表情を浮かべられました。それとは逆に、お母様は驚きと憤怒の表情でガラスの靴を見つめます。
大公様がシンデレラの足にガラスの靴を履かせました。
当然、ガラスの靴はシンデレラの足に吸い付くようにぴったりと合いました。
「う、嘘っっ!! こんなの、絶対嘘よ!!
ねぇ、お母様ぁ。なんとかしてよー!!」
悔しがるドリゼラお姉様がお母様に訴えますが、お母様はあまりのショックに言葉も出ないようです。
大公様が満足そうに微笑みます。
「この娘こそが、国王陛下、ならび王太子殿下が求めていた娘だ!」
「なん、て……ことでしょう」
お母様が立ち眩みを覚え、手を額に当て、よろよろと後退りしました。
「はい。私こそがあの時、舞踏会で王子様と踊った娘ですわ」
シンデレラは嵌ったガラスの靴を誇らしげに見せびらかしました。
「そうか、名はなんと申す?」
「シンデレラと申します」
「よし。ではシンデレラ、国王陛下の命により、そなたをこれから王宮へと連れてまいる。よいな」
「もちろんですわ」
シンデレラはにっこりと微笑んだ。
「何か、持っていきたい物があれば、今すぐ持ってくるように」
「いいえ。何もありませんわぁ。必要なものは、王子様にすべて買っていただきますものぉ」
大公様にそう答えると、シンデレラは嬉しそうに満面の笑みを浮かべました。
「では、行くぞ」
「ではお母様、お姉様方、ご機嫌よう♪」
シンデレラはニヤッと笑うとくるりと背を向けました。
大公様のエスコートにより、シンデレラは馬車に乗せられ、去って行きました。窓から馬車を見送ります。
これで……いいんですわよ、ね。
さようなら、シンデレラ。
さようなら……プリンス・チャーミング。
どうか、お幸せに……
0
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる