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主役はシンデレラ
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シンデレラは目にも眩しい純白にラメが散らされた素敵なドレスを纏っていました。髪を高く結い上げ、ドレスとお揃いの生地で作られたヘッドドレスをし、ネックレスとイヤリングをつけています。
あぁ、妖精のおばあさんが来てくださったのですね、良かった……
そう安堵する気持ちと共に、シンデレラに来て欲しくなかったという残念な気持ちが折り重なっていきます。
王子様は私とドリゼラお姉様の間を通り過ぎ、真っ直ぐにシンデレラの元へと歩いて行きます。私も、周りも何も見えていません。
王子様の目に映っているのは……シンデレラだけ。その確かな足取りには、彼女が運命の相手なのだという確信が込められているかのようです。
王子様が後ろを向いていたシンデレラの気を引くように、そっと手に触れます。振り返ったシンデレラは驚いたような仕草をして、ドレスの裾を摘んで一礼しました。
胸が……痛いですわ。こうなることは、分かっていたはずですのに……
王子様がシンデレラの手を取り、その甲に接吻を落としました。それからシンデレラをエスコートし、会場へとふたりで戻ってまいります。
あぁ、ふたりが仲睦まじく微笑み合っていますわ。
私たちは会場の隅へと行くように誘導され、慌ただしく赤い絨毯が片づけられました。
突然、ワルツの演奏が始まりました。明かりが落とされ、会場が暗くなります。
王子様とシンデレラのためだけに特別にご用意された舞台が整ったところで、ふたりが踊り始めます。
見たく、ありませんわ……ッッ。
目を逸らそうとしたところ、ダンスをしている王子様の表情が歪みました。どうやら、シンデレラが王子様の靴を踏んでしまったようです。
その後、何度もシンデレラは王子様の靴を踏んでいましたが、恐縮して謝るシンデレラに対し、「僕のリードが悪かったんだ、気にしないで」というように、笑顔を見せていました。
会場の隅でふたりを見つめていたドリゼラお姉様が、悔しそうに歯噛みしました。
「ちょっとー、あれは一体誰なの? 知ってる?
ダンスが下手くそなくせに、王子様のこと独り占めして、くやしーっっ!! 王子様はご存知なのかしら……私は、初めて見るけど」
そう言いながら、ドリゼラお姉さまは人混みを掻き分けて前へと進み出ようとしています。
ここでシンデレラの正体がバレるわけにはいきませんわ。
「し、知りませんわ。どこか遠方のお姫様じゃなくて?」
「私も知らないわねぇ」
お母様がそう仰った時、ちょうどシンデレラと王子様がこちらの近くまでいらっしゃいました。
「あ、待って!」
シンデレラの顔を見て、お母様がハッとした顔をされます。
「どこかで……見たような、気がするわ」
ま、まずいですわ……なんとかしませんと。
お母様がダンスしながら離れていくシンデレラと王子様の後を追いかけて行きます。
「お、お母様……!」
その時、赤いベルベットの幕が引かれ、視界が塞がれました。その紐を引っ張ったのは大公様でした。ふたりの邪魔をさせないようにと、そうされたのです。
そんなことも、知りませんでしたわ……
今夜の舞踏会の主役である王子様がひとりの女性に心奪われ、去られてしまった今、会場はどんよりとした重い空気に包まれています。中には、泣いていらっしゃる女性も何人かいらっしゃいました。
そうですわよね……王子様とお会いできるのを楽しみにしていましたのに、いきなり現れたどこの誰とも分からない女性に王子様を独占されて、なんのためにここに来たのだろうかと悲しくなりますわよね。
そういう私も、悲しみに打ちのめされていました。
やはり王子様はシンデレラを選ばれたのですのね。
当然、ですわよね。『シンデレラ』の主役は、シンデレラですもの……
あぁ、妖精のおばあさんが来てくださったのですね、良かった……
そう安堵する気持ちと共に、シンデレラに来て欲しくなかったという残念な気持ちが折り重なっていきます。
王子様は私とドリゼラお姉様の間を通り過ぎ、真っ直ぐにシンデレラの元へと歩いて行きます。私も、周りも何も見えていません。
王子様の目に映っているのは……シンデレラだけ。その確かな足取りには、彼女が運命の相手なのだという確信が込められているかのようです。
王子様が後ろを向いていたシンデレラの気を引くように、そっと手に触れます。振り返ったシンデレラは驚いたような仕草をして、ドレスの裾を摘んで一礼しました。
胸が……痛いですわ。こうなることは、分かっていたはずですのに……
王子様がシンデレラの手を取り、その甲に接吻を落としました。それからシンデレラをエスコートし、会場へとふたりで戻ってまいります。
あぁ、ふたりが仲睦まじく微笑み合っていますわ。
私たちは会場の隅へと行くように誘導され、慌ただしく赤い絨毯が片づけられました。
突然、ワルツの演奏が始まりました。明かりが落とされ、会場が暗くなります。
王子様とシンデレラのためだけに特別にご用意された舞台が整ったところで、ふたりが踊り始めます。
見たく、ありませんわ……ッッ。
目を逸らそうとしたところ、ダンスをしている王子様の表情が歪みました。どうやら、シンデレラが王子様の靴を踏んでしまったようです。
その後、何度もシンデレラは王子様の靴を踏んでいましたが、恐縮して謝るシンデレラに対し、「僕のリードが悪かったんだ、気にしないで」というように、笑顔を見せていました。
会場の隅でふたりを見つめていたドリゼラお姉様が、悔しそうに歯噛みしました。
「ちょっとー、あれは一体誰なの? 知ってる?
ダンスが下手くそなくせに、王子様のこと独り占めして、くやしーっっ!! 王子様はご存知なのかしら……私は、初めて見るけど」
そう言いながら、ドリゼラお姉さまは人混みを掻き分けて前へと進み出ようとしています。
ここでシンデレラの正体がバレるわけにはいきませんわ。
「し、知りませんわ。どこか遠方のお姫様じゃなくて?」
「私も知らないわねぇ」
お母様がそう仰った時、ちょうどシンデレラと王子様がこちらの近くまでいらっしゃいました。
「あ、待って!」
シンデレラの顔を見て、お母様がハッとした顔をされます。
「どこかで……見たような、気がするわ」
ま、まずいですわ……なんとかしませんと。
お母様がダンスしながら離れていくシンデレラと王子様の後を追いかけて行きます。
「お、お母様……!」
その時、赤いベルベットの幕が引かれ、視界が塞がれました。その紐を引っ張ったのは大公様でした。ふたりの邪魔をさせないようにと、そうされたのです。
そんなことも、知りませんでしたわ……
今夜の舞踏会の主役である王子様がひとりの女性に心奪われ、去られてしまった今、会場はどんよりとした重い空気に包まれています。中には、泣いていらっしゃる女性も何人かいらっしゃいました。
そうですわよね……王子様とお会いできるのを楽しみにしていましたのに、いきなり現れたどこの誰とも分からない女性に王子様を独占されて、なんのためにここに来たのだろうかと悲しくなりますわよね。
そういう私も、悲しみに打ちのめされていました。
やはり王子様はシンデレラを選ばれたのですのね。
当然、ですわよね。『シンデレラ』の主役は、シンデレラですもの……
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