16 / 41
アナスタシアとしての役割
しおりを挟む
私は、気持ちを切り替えて自分の舞踏会の準備をすることにしました。
部屋へと戻る途中、ドリゼラお姉様の部屋の扉が開いていました。
「シンデレラ、私の靴を磨いといて。それとこのドレス、ボタンが取れかかってるから直しといて! あと、全てのドレスのアイロン掛けもしておくのよ」
そこへ、お母様が現れました。
「シンデレラ。それが終わっていつもの仕事をする前に、いくつか仕事が」
シンデレラが大きく息を吐き出します。
「はーい、お母様」
ドリゼラお姉様から渡された山のようなドレスを持って、シンデレラが去って行きました。
「お母様ぁ、きっとみんな凄いドレスで来るわぁ!! 私のはこーんなボロなのに! 見てよ、この色! 流行遅れだわっっ!!」
ドリゼラお姉様がリボンを投げ出しました。
「こんな安物のネックレスも、恥ずかしくてつけられない! こんなものーっっ!!」
ネックレスも放り投げます。
「何を着てけばいいのかしら、困るわー」
憤慨しているドリゼラお姉様に溜息を吐き、それからお母様が私に顔を向けました。
「アナスタシア、貴女、舞踏会に着ていくドレスはもう決めたの?」
「はい、お母様。以前、お茶会でヴォンテーヌ夫人にいただいたドレスを着て行こうかと……」
そう話していると、ドリゼラお姉様がキッと睨みつけました。
「なんでアナスタシアだけドレスもらってるのよ、ずるい!!
ねぇ、お母様ぁ。新しいドレス買ってよー」
「何を言ってるのです。舞踏会は今夜なのですよ。ドレスならたくさんあるでしょう。それに、ヴォンテーヌ夫人のサロンにご招待された時に新しいドレスをオーダーメイドしたでしょう。それを着て行きなさい」
「ドレスの流行なんてあっという間に変わるのよー。新しいドレスが欲しいわぁ!!」
ドリゼラお姉様が喚いていますが、お母様が無視して歩き出します。
「アナスタシア、ドレスを着るお手伝いをしましょう」
「はい、お母様」
ヴォンテーヌ夫人から頂いた赤と深緑に豪華な金糸の刺繍が入ったドレスは既にトルソーに着せてあります。
お母様がコルセットを着るのを手伝ってくださいました。コルセットは後ろに紐があり、ウエストが細く見えるようにきつく縛らなければならないため、ひとりで着ることはできません。本当ならこれはシンデレラの役割なのですけれど……お母様に手伝っていただくなんて、初めてですわ。
アナスタシアお姉様になった当初は、コルセットを締め付けてもウエストの括れがあまり出ていませんでしたが、毎日お散歩や運動をするようになって、コルセットの締まりがよくなって、スタイルが良く見えるようになりましたわ。
「アナスタシア」
「はい、お母様」
「はっきり言って、アナスタシア、貴女もドリゼラも、器量がよくありません。私は、半ばあなた方に対して諦めの気持ちを抱いていました」
ぇ、お母様……そんな風に、思っていましたの?
「ですが、最近のアナスタシアはヴォンテーヌ夫人に気に入られ、貴族や著名な方々とも交流をもつようになっています。貴女は、このトレメイン家の希望です。この舞踏会で、素敵な殿方を見つけるのですよ。そして、傾いたトレメイン家を救って頂戴」
「は、い……お母様」
私の役割は……王侯貴族の方と結婚し、没落したトレメイン家を再び栄えさせること。
分かってはいましたけれど、お母様に面と向かって言われましたら、気持ちが落ち込みました。
それでも、お母様は……実の娘である私、アナスタシアに愛情は持っていらっしゃいますわよね……?
部屋へと戻る途中、ドリゼラお姉様の部屋の扉が開いていました。
「シンデレラ、私の靴を磨いといて。それとこのドレス、ボタンが取れかかってるから直しといて! あと、全てのドレスのアイロン掛けもしておくのよ」
そこへ、お母様が現れました。
「シンデレラ。それが終わっていつもの仕事をする前に、いくつか仕事が」
シンデレラが大きく息を吐き出します。
「はーい、お母様」
ドリゼラお姉様から渡された山のようなドレスを持って、シンデレラが去って行きました。
「お母様ぁ、きっとみんな凄いドレスで来るわぁ!! 私のはこーんなボロなのに! 見てよ、この色! 流行遅れだわっっ!!」
ドリゼラお姉様がリボンを投げ出しました。
「こんな安物のネックレスも、恥ずかしくてつけられない! こんなものーっっ!!」
ネックレスも放り投げます。
「何を着てけばいいのかしら、困るわー」
憤慨しているドリゼラお姉様に溜息を吐き、それからお母様が私に顔を向けました。
「アナスタシア、貴女、舞踏会に着ていくドレスはもう決めたの?」
「はい、お母様。以前、お茶会でヴォンテーヌ夫人にいただいたドレスを着て行こうかと……」
そう話していると、ドリゼラお姉様がキッと睨みつけました。
「なんでアナスタシアだけドレスもらってるのよ、ずるい!!
ねぇ、お母様ぁ。新しいドレス買ってよー」
「何を言ってるのです。舞踏会は今夜なのですよ。ドレスならたくさんあるでしょう。それに、ヴォンテーヌ夫人のサロンにご招待された時に新しいドレスをオーダーメイドしたでしょう。それを着て行きなさい」
「ドレスの流行なんてあっという間に変わるのよー。新しいドレスが欲しいわぁ!!」
ドリゼラお姉様が喚いていますが、お母様が無視して歩き出します。
「アナスタシア、ドレスを着るお手伝いをしましょう」
「はい、お母様」
ヴォンテーヌ夫人から頂いた赤と深緑に豪華な金糸の刺繍が入ったドレスは既にトルソーに着せてあります。
お母様がコルセットを着るのを手伝ってくださいました。コルセットは後ろに紐があり、ウエストが細く見えるようにきつく縛らなければならないため、ひとりで着ることはできません。本当ならこれはシンデレラの役割なのですけれど……お母様に手伝っていただくなんて、初めてですわ。
アナスタシアお姉様になった当初は、コルセットを締め付けてもウエストの括れがあまり出ていませんでしたが、毎日お散歩や運動をするようになって、コルセットの締まりがよくなって、スタイルが良く見えるようになりましたわ。
「アナスタシア」
「はい、お母様」
「はっきり言って、アナスタシア、貴女もドリゼラも、器量がよくありません。私は、半ばあなた方に対して諦めの気持ちを抱いていました」
ぇ、お母様……そんな風に、思っていましたの?
「ですが、最近のアナスタシアはヴォンテーヌ夫人に気に入られ、貴族や著名な方々とも交流をもつようになっています。貴女は、このトレメイン家の希望です。この舞踏会で、素敵な殿方を見つけるのですよ。そして、傾いたトレメイン家を救って頂戴」
「は、い……お母様」
私の役割は……王侯貴族の方と結婚し、没落したトレメイン家を再び栄えさせること。
分かってはいましたけれど、お母様に面と向かって言われましたら、気持ちが落ち込みました。
それでも、お母様は……実の娘である私、アナスタシアに愛情は持っていらっしゃいますわよね……?
0
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
断罪シーンを自分の夢だと思った悪役令嬢はヒロインに成り代わるべく画策する。
メカ喜楽直人
恋愛
さっきまでやってた18禁乙女ゲームの断罪シーンを夢に見てるっぽい?
「アルテシア・シンクレア公爵令嬢、私はお前との婚約を破棄する。このまま修道院に向かい、これまで自分がやってきた行いを深く考え、その罪を贖う一生を終えるがいい!」
冷たい床に顔を押し付けられた屈辱と、両肩を押さえつけられた痛み。
そして、ちらりと顔を上げれば金髪碧眼のザ王子様なキンキラ衣装を身に着けたイケメンが、聞き覚えのある名前を呼んで、婚約破棄を告げているところだった。
自分が夢の中で悪役令嬢になっていることに気が付いた私は、逆ハーに成功したらしい愛され系ヒロインに対抗して自分がヒロインポジを奪い取るべく行動を開始した。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!
ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。
気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。
悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います
蓮
恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。
(あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?)
シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。
しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。
「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」
シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。
王太子に婚約破棄されたら、王に嫁ぐことになった
七瀬ゆゆ
恋愛
王宮で開催されている今宵の夜会は、この国の王太子であるアンデルセン・ヘリカルムと公爵令嬢であるシュワリナ・ルーデンベルグの結婚式の日取りが発表されるはずだった。
「シュワリナ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!!」
「ごきげんよう、アンデルセン様。挨拶もなく、急に何のお話でしょう?」
「言葉通りの意味だ。常に傲慢な態度な貴様にはわからぬか?」
どうやら、挨拶もせずに不躾で教養がなってないようですわね。という嫌味は伝わらなかったようだ。傲慢な態度と婚約破棄の意味を理解できないことに、なんの繋がりがあるのかもわからない。
---
シュワリナが王太子に婚約破棄をされ、王様と結婚することになるまでのおはなし。
小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる