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招待状を頂きましたわ
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お城の時計が鳴り響きます。新しい朝の始まりですわ。
すっかり仲良くなった小鳥さん達が、あの頃と同じように朝の支度を手伝ってくださいます。私が起き上がったベッドのシーツを引っ張り、綺麗に整えてベッドメイキングしてくださいます。壁の穴からねずみさんたちもいらしてくださったわ。トルソーに着せてある今日のドレスや下に置かれた靴にブラシをかけてくださいます。
「ふふっ、ありがとう」
ねずみさんたちが口々に私に向かって何かを言っていますが、私には「チュー、チュー」としか聞こえません。残念ですわね。
ドレスに着替えた私は窓を開けました。シンデレラの部屋は最上階の屋根裏部屋でしたので、あの窓からはちょうど王子様のお城が綺麗に見えていたのですけれど、こちらの窓からはお城は見えません。
王子様は、帰国される頃かしら……
プリンス・チャーミングのことを考えると、胸が切なく震えました。
けれど、哀愁に浸っている場合ではありません。今日も忙しい1日が始まるのですわ。
あのサロンデビューの後、私はたくさんの方からお声をかけていただきました。ヴォンテーヌ夫人だけではなく、私がお歌を披露した際にピアノを演奏くださったピアニストであり作曲家であるリスティー様、戯曲作家のゴンドーヌ様、哲学者のアリサルキア様、それに貴族院のサテーヌ公爵等の知識人の方々と交流するようになったのです。
リスティー様の演奏会にご紹介いただいたり、ゴンドーヌ様の書かれた戯曲の舞台を観に行かせていただいたり、アリサルキア様の哲学の講習会に参加させていただいたりと、充実した日々を過ごしております。
そして、貴族院のサテーヌ公爵からは声楽の専門家の家庭教師をご紹介いただき、その費用を援助していただきましたの。とても光栄ですわ。
サロンの主催者だったヴォンテーヌ夫人からは、後日サロンとは別に親しい方のみで開かれるお茶会に呼んでいただきましたの。そこで、豪華な衣装や小物までいただいてしまいましたわ。
演奏会や舞台やお茶会にはお母様も付き添うのですけれど、ドリゼラお姉様はご招待いただけなくて……この頃、ドリゼラお姉様のご機嫌がお悪いですわ。
そのストレスの吐け口はシンデレラへ向かい、シンデレラも負けじと対抗しますので……ますます泥沼化しています。
そしてドリゼラお姉様がシンデレラの悪行をお母様に告げ口し、シンデレラがお母様から罰を受けるというのが毎回のお決まりとなっていますわ。
そんな毎日を劇的に変える出来事が起こりました。
その日、私は声楽の専門家であるリシャール様について、レッスンを受けていました。
ディンゴーン
家のベルが鳴らされ、来客を知らせます。この家には訪問客は滅多に来られません。
と、いうことは……
私はハッとしました。
お城からの舞踏会への招待状ですわ!
ディンゴーン
もう一度ベルが鳴らされました。
お母様が苦々しげな表情をなさいます。
「シンデレラは何をしているのかしら」
もし、シンデレラが招待状を受け取らなければ……誰も、舞踏会へは行けなくなってしまいますわ!
「お母様、私が……!」
「あ、アナスタシア!!」
驚いたお母様の声が背中に響きますけど、返事もせずに急いで部屋を飛び出し、階下へ進み、玄関の扉を開けます。
扉の向こうには背の低い小太りの男性が立っていて、背中に背負った籠にはたくさんの封筒が入っていました。
「王宮からの使いである。こちらは、緊急の知らせだ」
「どうも、ありがとうございます」
渡された封筒を受け取り、胸がドキドキと高鳴ります。封筒を胸に抱き、あの方の顔を思い浮かべます。
王子様……ご帰国、されたのですね。
すっかり仲良くなった小鳥さん達が、あの頃と同じように朝の支度を手伝ってくださいます。私が起き上がったベッドのシーツを引っ張り、綺麗に整えてベッドメイキングしてくださいます。壁の穴からねずみさんたちもいらしてくださったわ。トルソーに着せてある今日のドレスや下に置かれた靴にブラシをかけてくださいます。
「ふふっ、ありがとう」
ねずみさんたちが口々に私に向かって何かを言っていますが、私には「チュー、チュー」としか聞こえません。残念ですわね。
ドレスに着替えた私は窓を開けました。シンデレラの部屋は最上階の屋根裏部屋でしたので、あの窓からはちょうど王子様のお城が綺麗に見えていたのですけれど、こちらの窓からはお城は見えません。
王子様は、帰国される頃かしら……
プリンス・チャーミングのことを考えると、胸が切なく震えました。
けれど、哀愁に浸っている場合ではありません。今日も忙しい1日が始まるのですわ。
あのサロンデビューの後、私はたくさんの方からお声をかけていただきました。ヴォンテーヌ夫人だけではなく、私がお歌を披露した際にピアノを演奏くださったピアニストであり作曲家であるリスティー様、戯曲作家のゴンドーヌ様、哲学者のアリサルキア様、それに貴族院のサテーヌ公爵等の知識人の方々と交流するようになったのです。
リスティー様の演奏会にご紹介いただいたり、ゴンドーヌ様の書かれた戯曲の舞台を観に行かせていただいたり、アリサルキア様の哲学の講習会に参加させていただいたりと、充実した日々を過ごしております。
そして、貴族院のサテーヌ公爵からは声楽の専門家の家庭教師をご紹介いただき、その費用を援助していただきましたの。とても光栄ですわ。
サロンの主催者だったヴォンテーヌ夫人からは、後日サロンとは別に親しい方のみで開かれるお茶会に呼んでいただきましたの。そこで、豪華な衣装や小物までいただいてしまいましたわ。
演奏会や舞台やお茶会にはお母様も付き添うのですけれど、ドリゼラお姉様はご招待いただけなくて……この頃、ドリゼラお姉様のご機嫌がお悪いですわ。
そのストレスの吐け口はシンデレラへ向かい、シンデレラも負けじと対抗しますので……ますます泥沼化しています。
そしてドリゼラお姉様がシンデレラの悪行をお母様に告げ口し、シンデレラがお母様から罰を受けるというのが毎回のお決まりとなっていますわ。
そんな毎日を劇的に変える出来事が起こりました。
その日、私は声楽の専門家であるリシャール様について、レッスンを受けていました。
ディンゴーン
家のベルが鳴らされ、来客を知らせます。この家には訪問客は滅多に来られません。
と、いうことは……
私はハッとしました。
お城からの舞踏会への招待状ですわ!
ディンゴーン
もう一度ベルが鳴らされました。
お母様が苦々しげな表情をなさいます。
「シンデレラは何をしているのかしら」
もし、シンデレラが招待状を受け取らなければ……誰も、舞踏会へは行けなくなってしまいますわ!
「お母様、私が……!」
「あ、アナスタシア!!」
驚いたお母様の声が背中に響きますけど、返事もせずに急いで部屋を飛び出し、階下へ進み、玄関の扉を開けます。
扉の向こうには背の低い小太りの男性が立っていて、背中に背負った籠にはたくさんの封筒が入っていました。
「王宮からの使いである。こちらは、緊急の知らせだ」
「どうも、ありがとうございます」
渡された封筒を受け取り、胸がドキドキと高鳴ります。封筒を胸に抱き、あの方の顔を思い浮かべます。
王子様……ご帰国、されたのですね。
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