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シンデレラの受難

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 シンデレラは下へと下りますと、ようやく朝食の準備に取り掛かりました。

「あー、やかんはどこ? パンは? 紅茶の茶葉はどこなのよー!!」

 ガラガラガッシャーン!!

 キッチンを覗くと、見事に鍋をかぶったシンデレラが割れたお皿と共に床に転んでいらっしゃいました。

 あぁ、見ていられませんわ……

「シンデレラ、やかんはこちらですわ」
「し、知ってるわよ!」

 フンッと鼻を鳴らし、シンデレラが私が手渡したやかんを取り上げます。

 まぁ、私ってばこんな表情もできたのですのね……

 シンデレラを見つめながらそう考えていますと、火の付け方が分からないようですわ。竈門に薪を入れて、火をつけないといけませんのに。

「シンデレラ、今日は紅茶はわたくしが入れますから、どうか見て覚えてくださいませ」
「分かったわ、見てればいいのね」

 シンデレラは足を投げ出して椅子に座りましたが、私はあることに気付きましたの。

 その前に、井戸に水を汲みにいかなくてはいけませんでしたわ。

「シンデレラ、井戸から水を汲んできていただけるかしら」
「えっ、嫌よ。私、そんな力ないもの。アナスタシアがやってよ」

 そう言いながら、シンデレラがパンをちぎり、食べ始めました。

 そこへ、再びお母様の登場です。

「朝食はまだかしら?」

 お母様を見たシンデレラの目玉が飛び出て、パンを素早く後ろ手に隠しました。

「は、はいっ、お母様! 今すぐ用意します!!」

 今度は、お母様が私に視線を向けます。

「アナスタシア、こんなところで何をしているのです。これからレッスンの時間ですよ」

 レッスン! そうでしたのね。あぁ、楽しみですわ。

「はい、お母様。すぐにまいります」

 お母様についてキッチンを出る去り際、冷たいお母様の視線がシンデレラを突き刺します。

「シンデレラ、朝食を今すぐレッスン室に運んで頂戴」

 シンデレラのお手伝いができなくて申し訳ないですけど、これが新たな生活なのですわね。
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